Volcano tremor
「本当ならランスロットにも一緒に来てもらいたかったのだが。彼がいるというだけで盗賊など寄ってこないからな」
「冗談じゃない。あの人がいたらあちこちで決闘決闘って呼びとめられて、それこそ先に進めやしないさ」
パーシヴァルとガラハッド、二人の言い分はそれぞれに納得できて、ソニックはつい声を上げて笑ってしまう。
3人は荷馬車の上にいた。馬に乗らずに運ばれることは騎士にとって不名誉なので、荷台にいるのは自分だけでいいとソニックは主張したのだけれど。結局御者は順番交替で、今手綱を握っているのはガラハッドだ。
「荷馬車の上って結構揺れるんだな。することがなけりゃ昼寝でも、って思ってたんだが」
「たわけっ!どこから敵が来るかもわからん状況なんだぞ。警戒を怠るな」
「へいへい」
「…ホントに剣が喋るんだな」
「普段はどちらが主人だかわからんだろう?」
「無論、この聖剣カリバーンが主人だ」
「言ってろよ、ナマクラ」
ザ・コルドロンに黄泉の騎士が溢れるようになって、命からがら麓町のモルテン・マインまで逃げてきた民がいる。
だが、どちらも鉱山町なので、自給自足できるような大きな畑があるわけでなく。モルテン・マインで避難民へ食糧を分けてしまうと、全員が一気に飢えてしまうことになってしまう。
それで、キャメロットの備蓄を割いて穀物を運んでいるわけだが。
「左の崖の上…8人、いるな。ガラハッド、前に気配は?」
「ない。見通しが悪い渓谷だから、馬車のスピードは上げられないぜ」
「わかった。道が狭い今のうちに決着をつけさせよう」
パーシヴァルが馬車を止めさせ、レイピアを手に荒れた道に降りると、崖上に向かってよく通る声で言う。
「施しが欲しいのならば分けてやる。それとも戦いを選ぶか。降りて来い。私が相手をしよう」
崖上に怒りのさざ波が立って、比較的緩い斜面を盗賊たちが駆け降りてくる。
ソニックとガラハッドも剣に手を掛けて、油断なく辺りを窺う。
「騎士だか何だか知らないが、大人しくお宝置いてった方が身の為だぜ、女ァ!」
「女が騎士なんて、おエライ円卓の騎士サマに取り入る為に決まってんだ・・・・ぐあぁっ!」
ガラハッドが頭を抱えた一瞬後には、すでに戦いは終わってしまった。
ソニックがため息をつき、足もとの積み荷の山からひと抱えの穀物とサービスで傷薬も付けて、倒れた盗賊たちに放ってやった。
「円卓の騎士パーシヴァル殿は気が短いぞ。今度からはもっと言葉に注意するんだな」
馬が鞭打たれて、ガラガラと荷馬車が動き出す。それに飛び乗りながら、パーシヴァルがソニックに文句を言う。
「気が短いのはお互い様でしょう!?」
御者台のガラハッドが爆笑した。
そう。
この荷運び道中で、もう5回も盗賊に囲まれていて、全て相手の口上の途中で決着がついてしまっていた。
ソニックは剣の構えで「ひよっこ騎士」と言われてキレて。
ガラハッドは「こわっぱ騎士」と言われてキレて。
昼寝はできそうにないが、なかなか楽しい荷運び道中だった。
つづく
2009.07.21
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