わたるとみつるにょたいネタに続いて、全然続かないネタ話!
確かに僕たちは散々なことをした後、疲れきったアタマでこんなことを考えたかもしれない。
コイツって今、手に入れてもまた逃げてしまう、そんな自由な生き物なんだろうな。
なんて。
願いは叶わないからこそ願いであって、叶うとどうなるかなんてあまり考えないモノで…。
「叶った願い」こむらとみやはら編。
胸が重い。何かがベッタリとのしかかってる。アタマかな?
おかしいな、宮原はこんな風にくっついて寝ること無いのに。
「…みやはら、重い」
ちくり。
「みやはら、痛い」
にゃあ。
目を開けるのが恐くて、瞼を硬く閉じたまま克美はそっと胸の上にあるものを探る。
丸まった小さな物体、いや、それのサイズとしては平均よりも大きめかもしれない。
短めのさらツヤストレート、しなやかな筋肉の形…。
にゃああああ。
「みやはら!?」
今度こそがばりと起き上がって、イキオイで転がったそいつをめんたま見開いて、確認。
背がサバトラ、腹側の色が白、瞳の色は緑。
立派なネコである。
「まさか、ホントに宮原!? …じゃないよなぁ?アイツ、帰ったのかなぁ?」
にゅ。
「お前、宮原見てねぇ?てか、どっから入ってきたの?」
克美が手を伸ばすと、警戒して数歩下がるネコ。静かな動きなのに、次の瞬間には飛び出してしまいそうな躍動感を秘めている。
「こりゃ、捕まえんのはムリだな」
にゃぁう。
「じゃあ、遊ぼっか。確かこの辺に亘と遊んだときの…あった、軟球にーヒモくっつけてー」
ころころー。
にゃっ!
ころころー。
・・・・・・・・・・・・しゅばっ にゃっ!
・・・・・・・・・・・・
にょぉぉぉうぅ。
「何?転がせって?・・・・ネコ釣りー!」
・・・・・・・・・・・・しゅばっ にゅ!!
「へへっ。ネコ馴らすのって面白いよなぁ。アイツもネコっぽいもんなぁ」
にゃあ。
「お前の名前、ユウタロウな」
克美が人差し指を出せば、吸い込まれるように顔を擦りつけてきた。
耳の後ろを掻いてやると、ゴロゴロを咽を鳴らして目を細める。
「かわいいんだよなぁ、ネコ」
にゃあー。
「ユータロー?」
にゅぅー。
指で、手のひらで、さらさらの毛並みを撫でながら、腕をそっと反対側から胸を抱くようにまわすと、ネコは細目を開けてこちらをチラリと見た。
バレてるな、と思いつつも抱きしめようと力を込めると、するりと逃げられてしまった。
にゃあん。
一声鳴いて、細く開いていたサッシの隙間からベランダの外へ抜け出した。
ここから入ってきたのか。アイツもここから帰ってったのかな。
ネコでもいいから、アイツを抱いていたいな。
そんなこと考えながら、克美は休日の2度寝に突入した。
祐太郎が寒さに目を覚ますと、自室の窓が細く開いていた。素肌に毛布だけはもうそろそろ寒い時期。
珍しく浅い眠りと、変な夢に、思い出し笑いをしてしまう。
小村の手は気持ちよかったな、なんて。
なー。あー。
窓の外、屋根の上、ネコが呼んでいる。
硬い毛並みのクロネコ。しっぽと足の先だけ白い。
アイツの願いが叶ったのなら、自分の願いも叶うはず。
祐太郎が窓を開けると、クロネコが自分をめがけて飛びついてきた。
「かつみ」
あー。
「ごめん。ネコのお前になら、名前を呼んでやれるのに」
しがみつこうともがくネコが胸に薄い引っ掻き傷を作る。
きれいな三角の耳にもう一度「かつみ」と呼ぶと、おとなしくなった。
ぎゅっと抱きしめると、小村と同じ温もりを、ネコが与えてくれた。
「ありがと、かつみ」
オチてませんが終わりです。
(きっと続きません)