オフで出した本の話の補足です。
これ読んだら、私が何を書いたのか予想つくと思います。
で。
かつみやはこれで終わりです。

いつも書いてる軸の話では。

でもきっとやりたくなったらまたやると思うんですが、まあとりあえず最終話のオマケです。












いつもより広い






 学校が春休みになってから、朝はダラダラとしてることが多かった。けど、今朝は美鶴の電話で叩き起こされた。

『宮原がいなくなった』

 という。
 以前にも、一度、宮原は僕らの前から消えたことがあるが、今回はまるで予兆が無かったじゃないか。
 とにかくカッちゃんの家に行ってみよう、ということになり、僕は急いで家の玄関を出た。
 遠くからわわん、とスピーカーが響く音が聞こえる。小学校の校庭から。終業式をやってるんだ。
 ふと見上げた空は薄い青。あの夏の日の空とは違う。
 校庭で、1学期の終業式をやってたあの日…美鶴が消えた、あの日。
 同じように消えた宮原。



 美鶴は近所の三叉路で待ってた。携帯を弄ってイライラしてる。

「あいつ、携帯まで解約してる」

 電話もメールも繋がらない。またしても鮮やかな逃げっぷりだ。
 家も留守だ。宮原の弟妹はまだ小学生だから今頃学校の校庭に並んでるんだろう。親は?
 美鶴を自転車の後ろに乗せて、宮原の義父がやってるガソリンスタンドへ行ってみた。営業、している。小父さんも小母さんもいる。
 挨拶もそこそこに、宮原の行き先を問おうとする僕らに、小母さんはちょっと困ったみたいに腕時計を見た。

「1時の飛行機なの」

 今は? 9時半? ここから空港までどれくらいかかる? 国際線の搭乗手続きってどうなってんの?
 美鶴は怒っていた。
 宮原が遠くへ逃げようとしていることを。
 逃げ出さなければならないと思うほど、気詰まりだった宮原のことを理解できなかった自分のことを。

「美鶴は宮原追いかけて」

 小母さんは間に合わないかもしれないという表情を作ったけれど、僕らにはそんな風には思えない。
 きっと捕まえられる。今しか決断できないこと。
 自転車を美鶴に貸すと、駅の方へ全速で走っていった。



 商店街を横切って、居酒屋小村の前まで来る。今はまだ午前中だから、小父さんも小母さんも寝てるはずの時間だ。店の仕込みは夕方からだから。
 どうしよう。カッちゃん、部屋にいるんだろうか。
 2階のベランダにはいつも通り洗濯物が春の風に煽られてバサバサ音を立ててる。
 その影に、カッちゃんがぼんやりしてるのが、見えた。

「何してンの?」

 呼びかけると、カッちゃんは、いつもよりちょっと元気無さそうに笑って、よっと手を上げた。

「ミタニぃ、あのさ。ずっと昔、オレこっから鳥を飛ばしたことがあるよな?」

 驚いた。修正…消された記憶だと思ってた。カッちゃんは憶えてないハズだ。

「鳥が飛んでく空ってさぁ…」

 そこから先は続かなかった。
 カッちゃんは、ちょっと淋しそうだったけど、それよりずっと満足したみたいに、空を見上げてた。




おわり。










ということで、
「水色」直後、「travelogue・4話」直前話でした。
travelogueの2話が唐突に終わって、3話は時空を超えて(笑)、4話がまた唐突だったんで、間の話を書かなくちゃってずっと思ってて、
そんで「水色」だったんだけど、やっぱりまだ足りないのです。
すみません。(滝汗

2007.03.24


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