(大1・中3くらいで突発みやあや話)





今日はさよなら






 駅のホーム、次に来る電車がタイムリミット。

「今度はいつ会えるのかなぁ」

 一ヶ月先?もっと先?
 大きな手のひらをきゅっと握る。応えるみたいに、絡む指が深くなる。

「電話する。メールもするよ」

 優しい声。一生懸命励ましてくれる。
 ごめんなさい、顔が見られない。
 だって、泣きそうなんだもん。

「うん。私もする」

 無機質な電子音が響き渡る。
 手が離れる。ふたりの間に入り込む冷たい空気が恐くて、見上げると、心配そうなあなた。
 ふわり、腕の中に抱かれて、詰まった距離におぼれそうになる。
 眩しいライトが行き過ぎて、プラットホームに緑色の電車が滑り込んでくる。
 すっと息を吸って、あなたの匂いを憶える。
 突風が行き過ぎて、突き刺さるブレーキの音、そっと、腕をまわして耳を塞いでくれた。

「行かなくちゃ」
「そうだね」

 離れるぬくもりを、手のひらに求めると、指が絡む。
 そう、いつのまにか、あなたの指から聞こえる声があることに気付いたの。
 私と同じくらい、淋しいって、思ってるよね?
 一番後ろの車両、人の少ないドアの内と外、別れて、繋いだ手が離れてゆく。
 大丈夫、私は大丈夫。だって、あなたに会えたもの。

「アヤちゃん、またね」
「はい」

 頑張って、笑わなくちゃ。
 あなたに、憶えててもらう私が、泣きべそなんて。

 透明な窓が、ゆっくりとふたりを分けた。




おわり。










遠距離恋愛ですかね?単に忙しいんですかね?
デートの帰りです。

2007.02.19


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