音楽のように






「小村、またCD貸して」
「いいけど…さ、なんでまた」

 宮原は部屋の隅においてある棚を覗き込んで、前に貸したヤツを並べなおして、また新しいのを物色してる。

「随分貸しただろ。あとは小学校ン時に聞いてたような、古いのばっかりだぜ?」
「うん…ふーん、知ってる知ってる、流行ってたドラマの主題歌があるじゃん」
「あー、見てた?女優さんの衣装が大胆でさぁ!」
「母さんにチャンネル変えられないようにリモコン隠して見てた」
「えろかったよな?」
「好きでしたよ?」

 口元に思い出し笑いを作って、2・3枚のCDを手にすると、もう一度「貸して」ってそれを見せる。

「なあ、なんで?レンタル屋でもいっぱい借りてただろ?」
「俺、音楽聴いてる方が集中するんだ」
「それは知ってる。でも、今までは自分で選んだ音楽ばかり聴いてたじゃないか」

 今になって、オレだけじゃなくて三谷からも借りてるって聞いた。
 宮原の音楽の趣味とオレたちのとは全然違う。オレたちは名前も知らない人の歌を聞いてるのに。
 なんで、わざわざ、趣味違いの音楽を聴きたがるんだ。
 ただ、その理由が知りたかっただけなのに、
 何故だろう?オレの言葉の何かが、宮原の心を引っ掻いた。顔を伏せて、視線を隠す。

「小村の、好きな音楽を聞いてみたかったからだよ」
「うっそ。そゆこと言うと、照れるだろ!」

 本当に照れてくる。宮原の、自分を誤魔化すための嘘かもしれない。嘘でも嬉しいけど。
 照れを隠し切れなくて、ふざけて宮原を覗き込む。
 すると、宮原は照れてもいなくて、そのくせ柔らかい微笑をオレにそっと向けた。

「嘘じゃないから」

 きれいだった。
 けれど、酷く胸が痛くなるような笑みだった。


 抱き寄せればしっかりとした重みがあって、唇を触れさせれば湿度を伴った温もりがあった。
 吐息と一緒に指が絡む。肌を合わせれば熱が溶ける。
 底無しの泥沼みたいな快楽に落ちるのも、果てて弛緩するまでも、一瞬も逃がしたくなかった、叩きつけるように、傷つけて、愛したかった。

 宮原の纏う何かに気付いて、本能的に恐れたのだ。
 オレはその何かを振り払いたかった。
 宮原は波に流されながらも、音楽のようにオレを感じているようだった。






おわり










オフ本(ちょろ本)を読んでくださった方は、私が何をやろうとしてるのかわかってるかなー。
・・・
本当に容赦なしだな!>自分

2007.02.17


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