シュート
ダン、ダダン、キ、キュキュ、
ボールが弾む。シューズが床を蹴る。
特活の時間は、今体育で(一部が激しく)燃えているバスケで遊ぼうということになった。
クラスの男子と女子がそれぞれ半分に分かれて、交替しながらコートで暴れる。
女子も結構怖い。
「まあ男子に比べればやっぱり可愛らしいモンだけど」
カッちゃんはふん、と胸を張ってる。
得点王なのだ。アシストも上手い。
亘のチームはカッちゃんをリーダーにして、球技大会の優勝を狙ってたりする。
体育館の2面のコートのうち、1面はうちのクラスが使っていて、残りは隣のクラスが使ってる。
ちらっと後ろを見ると、今は男子が試合中。
白帽チームの中に美鶴がいる。すらっと長い手足が目を引いて、勢いよく繰り出されるチェストパスがゲームのスピードを上げていく。
「ミタニ!出番」
「よっし!まかせろカッちゃん!」
こっちはこっちで試合再開。
コムラキャップの指示はパスカットとドリブルのミスを無くすこと、それとシュートを迷うな!だ。
赤帽をビシッと被りなおして、手を集めて、「ファイ!」「オー!」声を上げるとカッちゃん以下全員ゲラゲラ笑いながらポジションへ散っていく。
ジャンプボールはカッちゃんだ。上げられるボールの軌跡とカッちゃんの手のひらの向きを見定めて、亘は落ちてくるボールを素早くキャッチ。
敵のついてこないところまでドリブルで進んで、後ろ向きにパスを投げた。丁度カッちゃんがいる!
「ナイスパス!」
ボールを受けたカッちゃんがまた素早くチームメイトにパスを投げる。ドリブルで繋いで、またカッちゃんにボールが戻るとチラっと亘に視線が来る。
ゴール横に空いたスペース!亘がそこへ滑り込むとボールがバウンドして流れてくる。
受け取って飛ぶ。手首をひねるとボールはリングの中央に、ガランと落ちて行く。
「ナイッシュー!」
「イエイ!」
拳を突き上げながら、素早くバックへ下がる。
エンドラインから投げ込まれるボールを追いかけて、攻める!
笛が鳴った。10分終了ー。
得点は赤帽チームが15点差で勝っていた。
カッちゃんの3ポイントシュートが3回キマッてる。英雄だ。
試合は女子と交替する…
授業の残り時間はあと15分。
「小村、もう一回真剣勝負やる?」
そう聞いたうちのクラス委員が、隣のクラスへ出張。
全員がざわざわと落ち着かない。楽しみすぎて。
「やろうか。模擬戦」
すくっと立ち上がった隣のクラス委員、宮原。表情は温和なくせに、すごい勢いでボールを取りにくる。
選ばれているチームメイトには美鶴もいる。手ごわそうだ。
こちらもチームが決まっていく。推薦にしたら、あちこちからミタニ行け!と声が上がる。
「僕でいいの?」
「おまえ、すっげ上手いじゃん!」
先に立ち上がってるカッちゃんに誉められると、照れるのと同時に自信が湧いてくる。
終業のチャイムまであと10分。
「オテヤワラカに」「練習だしね」
センターサークルで赤帽・カッちゃんと白帽・宮原が、笑顔で火花を散らす。
ボールが投げられる。中空でふたつの手のひらがボールを挟んでバァン!とはじけた。
落ちたボールを拾ったのは白、中央付近でパスが流れるのを赤帽・亘がカットして奪う。
姿勢を低くしてドリブルで抜けようとすると、突然ふわりと大きな壁が現れ、一瞬の怯みにボールが奪われた。壁は鮮やかに、風に変わる。亘の横を抜けてゆく長めの髪、美鶴だ!
「くそっ!」
追いかけて、追いついた。接近する白帽の間に割り込んで、美鶴の手の中のボールを叩く。フェイント、それで奪えるなんて思ってない。パスを投げようとする前に強引に飛び出して、ファウルを誘う。笛が鳴る。トラベリング!
「邪魔だよ三谷!」
「邪魔で上等!」
サイドから亘がスローイン、赤帽が上手くパスを繋いで、カッちゃんがランニングシュートをキメた。
大きな歓声が上がる。特に女子の声は嬉しい。
両チームが一気にヒートアップしていく。
シュートがいつもの半分もきまらない。
ボールはコートの端から端まで跳ね回り、殺到する足音と伸びて絡み合う腕は一瞬もとどまらない。
こんなゲームではあきらめた方が負け!
カッちゃんがちらっと時計を見た。「残り1分!」
得点差は全然わからない。宮原が3ポイントシュートを外したけれど、リバウンドは美鶴が拾ってゴールに叩き込んだ。
美鶴のジャンプは滞空時間が長くてとてもきれいで、集まった視線全部が見惚れたんじゃないだろうか。
亘も手で汗を拭って、流れるボールを追いかける。カッちゃんのロングパスを貰ってドリブルでゴール前まで詰める。宮原のガードがきつい。
さっきの試合で貰ったバウンドパスをカッちゃんに流すと、カッちゃんはこれまた絶妙なドリブルとパス回しで白帽を翻弄する。けれど、残り時間はもう無い。決死のディフェンスで3ポイントシュートを封じられてしまう。
亘は思い切ってカッちゃんの側まで一気に走った。カッちゃんの目がちらっと輝く。
「ミタニ!」
とびきり低いパス。受け取って短いドリブルで二人のディフェンスを振り切り、ゴールへ振り返る。
亘の前に、軽い、大きな鳥が舞い降りるように、美鶴が立ちふさがっていた。
「やらせるか!」
すごい闘気だ。
こんなときなのに、垣間見えた美鶴の一面に、亘は嬉しくなった。
「でも、負けないからね」
低く呟いたのが、美鶴に聞こえただろうか。
バックステップで2歩、そのままシュートを打つと亘の身体は反動で倒れてゆく。
大きく見開かれた美鶴の眼が遠ざかる。
放たれたボールが、止めようとする手をすり抜けてゆく。
「はいれぇ!」
リングの上をオレンジ色がくるりとまわってネットへ落ちた。
チャイムが鳴った。
試合終了。
女子の歓声が体育館に響き渡る。
おしまい。
バスケがやりたかった!それだけ!ごめん…
中途半端だけど、勝敗書きたくないし。
この直後、亘の後頭部は体育館床に激突するワケです。
でも美鶴に勝って嬉しいから痛くない。(笑)
バスケ全然わかりませーん。もっと簡潔に試合を書いてみたかった…。
2006.08.08
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