斑鳩

開発元:Treasure
プラットフォーム:ドリームキャスト/ゲームキューブ/XBOX360
ジャンル:縦スクロールシューティングゲーム

我、生きずして死すこと無し。理想の器、満つらざるとも屈せず。これ、後悔とともに死すこと無し…

一般論としてゲームとは「あるルールに基づいて相手と競い合う遊び」と定義されます。
物語だムービーだといったあたりはあくまでも装飾、年に何百作発売される多々の家庭用テレビゲームは、個々の作品が提示する「遊びのルール」が面白いかが、10年20年遊ばれ続ける作品の傾向なようにおもわれます。
例えばうみねこのなく頃にはストーリー主体のテキストアドベンチャーですが、「物語を考察し解釈する」というユーザの試みそのものを楽しめる構造として作られた内容により、選択肢不在にもかかわらず「ゲーム」として成立した作品となりました。
そういった方角から考えると、白だ黒だと切り替えるという遊びはいかにもゲーム然としていて、ルールに拘り作られたこの斑鳩というゲームがますます愛おしくおもえてくるというものです。

「斑鳩」とは、AC、DC、GC、XBOX360でリリースされた縦スクロールSTGです。自機をあやつって敵をほふり弾をさけつつ先にすすんでいくという、オーソドックスな内容となっています。
本作の特徴に属性というものがあります。
自機や敵の弾にはそれぞれ白と黒の属性があり、自機の属性は任意に変更可能。自機が白の時に黒の弾を被弾すると1機失いますが白の弾については無敵という法則に基づいてゲームは進んでいきます。
弾といわずレーザーやスパークなど、非物理系統の攻撃派すべて自機と同じ属性であればダメージを一切うけません。
むしろ自分と同属性の攻撃を吸収し続けると「力の解放」というエネルギーがストックされホーミングレーザーが放てるようになります。
さらに、敵と逆属性のショットを打ち込めばダメージ2倍となりますので、力の解放をためつつ逆属性の相手に対してショットと重ねて一気に放出するとかなり気持ちがよいシーンになります。
ですので、属性変化さえ間違わなければ「弾避け」の必要がほとんど無いシューティングゲーム、それが斑鳩なのです(2面中盤、3面冒頭などに地形避けがありますのでご注意を)。
ならば簡単なゲームなのかといえばそんなことはなく、自機にはボムが搭載されていない、ショットは前方しかカバーしないのでいわゆるごりおしがすごくやりにくい、全く自分の実力だけでプレイがどんどん変化していきます。
敵の物量も結構多く弾速も早めですので決して油断できず(敵に体当たりされると1機失います)、敵の出現パターンやステージの構造、敵の属性を把握することが攻略上重要となってきます。
ですが幸いなことに、これは完全なパターンシューティングです。ステージ転回は2面までは何度プレイしても敵の出現パターン、弾の種類、進行速度は固定、3面以後も中ボスを撃破するタイミングで多少転回速度がかわるくらいで敵の配置、攻撃パターンはほぼすべて固定ですので、すべての局面には正解が存在し、こうすれば死なない、そういう動きは何十回か遊び続けていると自然に身に付きます。STG苦手な人でも(筆者含め)、それを何度も何度も何度も重ねていって、すこしづつ先に進んでいっていってるとそのうち確実にクリアできます。

さて、本作は面白いのかという問いについて、とてもお答えが難しい状況です。
筆者は本作が好きでたまらなく故におもしろくてあそんでいるところがあり、まず客観的指標としてはなはだあやしい感想のみ脳内に有しているという状態はあまり本作の魅力をお伝えするのにむいていない気がどことなくいたします。
上のとおりルールがけっこうややこしく、取っつきやすさはあまりない、むしろなれるまで時間がかかる。慣れたとしてその次にはあらたな難局が立ちはだかり、新たなパターンを構築する作業を1つ1つ積み上げていかなければ行けない。そして時々やってしまうケアレスミスによる精神へのダメージとも戦わねばなりません。ショットはほそっこくてボムもない、力の解放は使うタイミングを考え抜く必要があり、それ自体をパターンに組み込まねばならない場面も決して少なくありません(2面中盤のブロック地帯、3面ボスのくるくるなど)、
考えてみればえらい難易度です。
なのですが、筆者はこのゲームが愛おしくてたまらないのです。心のゲームの1本でございます。
なぜかというと、何度も何度もプレイしていくうちに、ふとしたきっかけで「こうすればいいじゃないか」というパターンを思いつくのが実に気持ちがよいからです。そしてその通りに実践するとチェーンコンボがいつもより長くつながって1クレジット増えた、さらにすこし長い間生き残れていままで行ったことのない先のエリアに行けた。そこで撃墜されてしまったが、ハイスコア登録画面がでた(このゲームは、撃墜された時点でのスコアが記録よりも高い場合、その場で保存することができますので自分の成長をリアルタイムに把握できるのです。)。
だから筆者はこれをずっとあそびつづけているのです。つまり、うれしいのです。
いつもより長く生き残れてうれしい、自己スコアを更新できてうれしい、先のエリアに進めてうれしい、チェーンをつなげられる場所をみつけられてうれしい、ボスをタイムアップまでに撃墜できてうれしい。そしてなによりエンディングに行けてうれしい。
でもこのうれしさを味わうにはその何倍もの苦痛と努力を経験せねばならず、だからこそ誰もが感じられるうれしさではない、そこが切ない部分でもあります。
他にもこのソフトにはすてきなところ、いっぱいあるんですよ。音楽と演出のシンクロは鳥肌もののかっこよさですし、その音楽自体も全体を貫く一つのメロディがあって何度も何度もそのアレンジがかかり、それじたいがすごく美しい荘厳な旋律なものですから、音楽に意識を集中しながらプレイすると感動しっぱなしです。
空気感すらともなった映像は、大迫力の高速スクロール、時々すてきすぎるタイミングで挿入されるシーグレスなデモシーンに加えて、光の処理がとても美しく、画面全体があたかもガラスケースの中に入っているようなそんな美麗さがあり、カメラアングルも斜め上からの撮影ですから奥に奥にすすんでいっている感じがとてもでていて、最高峰の演出だと思います。
かといって、自機や敵機や弾がみにくくなることはなく、SFCゲームのそれと同等くらいの高い視認性を保ったままゲームは進行していきますので画面の中で何が起こっているのかをとても把握しやすい、リアルなところはとことんリアルに、それでいて見やすくわかりやすくと、ユーザーインターフェイスの鏡みたいなゲーム画面だと思います。
さらに、このゲームにはとても厳然としたストーリーがあり、それがまたとてもいいんですよ。ゲーム展開のネタバレにもなりかねないので詳細は話しませんが、ぜひ一通りこのゲームを遊んだら「斑鳩 ストーリー」あたりのキーワードでググってみてください。本作への納得と愛着が、きっと深まることと思います。

こうして上に、小さいですが様々な喜ばしいポイントを書いて連ねられたことは、本作がゲームとしてのルールを明確に持った、本当に遊びとしての、あるいは道としてのゲームを体現する存在であるからではなかろうか、時々そんなことを考えるのです。
ですので、この上の紹介や公式サイトをご一読いただき、もしご自分の趣味思想に合いそうだと思われましたらぜひ本作に一度触れてみていただけますと嬉しいです。
昨今のゲームは確かにおもしろいです。が、ちょっと趣を変えて「うれしくなるゲーム」というのを1本いかがでしょうか。
本作は縦スクロールSTGですので、1プレイどれだけねばっても30分で1週できます。その意味から言えば他ジャンルよりも遙かにお手軽と言うこともできます。
最初は環境ソフトみたいな感じで触れてみるのもよいかもです。先へ進むだけで楽しいので近未来SF世界のフライトツアー、6時間ほどプレイすれば無限クレジットが出現しますので、いつかは必ず誰でもEDに到達できるようになっています。
その6時間の間に「先へ進む楽しみ」を存分に受容していただいて、ああゲームって面白いなと思っていただけたらすごく嬉しいです。
本作の良さ。それは道中を楽しいと思う人も苦痛だと思う人も、一定の成果をこのゲーム内で得られれば、等しく「達成感」を味わえるということです。そしてそれこそゲームの面白さの根源そのものであり、そこを触れたプレイヤーは心地よく感じている場合が決して少なくないと思います。
そしてこの「斑鳩」ではそのカタルシスをあきるまで存分に味わいつくすことができるのです。
「どうぶつの森」や「脳トレ」とは全くちがう意味において、筆者は最近、ゲームに飽きてきた、もしくはやっていないというそんな方にこそこのゲームをおすすめしたい、そしてこのゲームという娯楽の持つ恍惚を結晶化して切り出したようなこのソフトにぜひ一度触れていただきたい、そう思います。
  それでは、今日はこのあたりで。。。


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