ほのかに灯るライティングに少女の姿が浮かびあがる。 火照った頬を夜風にさらしリナは一人ベンチに座っていた。 華奢な躰を包むバラ色のドレス。 深く刳られた襟元からは透けるほどの白い肩と鎖骨が覗く。 幾重にも重ねられ広がったスカートが折れそうなほど細いウエストを強調する。 その身を飾る宝石よりも輝く瞳は今は伏せられ見えない。 誘うように引かれた口紅はローズカラー。 咲き綻ぶ大輪の薔薇――― |
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Under the rose |
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虫の音が止まり、かさりと草を踏む音。 弾かれたように顔を上げたリナをガウリイは無言で見下ろした。 ガウリイの様子に何か感じ取ったリナが小さな声で名前を呼ぶ。 「ガウリイ?」 「気が済んだか?」 低く押し殺した囁き。 ガウリイがゆっくりと右手を伸ばした。 それは思わず身体を強ばらせたリナの頬を掠めて、ベンチの背に置かれる。 結果、リナはガウリイとお互いの吐息が掛かるほどの至近距離で見つめ合うことになった。 その場に沈黙が流れる。 やがて虫の音が戻ってきた頃、リナが口を開いた。 「何言ってるのよ」 「オレを煽って――― 嫉妬でもさせたかったんだろ? でも残念だな。あれぐらいじゃ嫉妬しないさ。 お前はオレのモノだからな」 今度は左手――― 「誰が、いつ、あんたのものになったのよ!」 「お前が。 オレに会ったときから・・・さ」 当然のごとく返され、リナは一瞬言葉に詰まった。 冥く翳る蒼い瞳がリナを覗き込む――― 「か、勝手なことゆーな!!」 リナの両脇にはガウリイの腕がつけられ、逃げることも出来ない。 ならばと、取り出したスリッパで攻撃を仕掛けたが、それもあっさりとかわされた。 「この!当たりなさいよ!」 スリッパを振り回し逆上するリナの両手をガウリイは難なく片手で捕まえた。 そしてもう片手でリナの髪を留めているピンを引き抜く。 白い肩に落ちる栗色の髪。 「この髪も、この身体も、この唇も―――」 リナの髪を一房掴みあげると軽く口づける。 そのままその手を下ろし、ドレスの開いた襟元から覗く鎖骨を指がなで上げた。 ふるりと身を震わせるリナの顎に手をかけ、親指でゆっくりと唇をなぞる。 「オレのモノだ」 精一杯の虚勢で震えを隠し、リナはガウリイを睨み付けた。 「あたしは誰のモノでもないわよ」 口早に唱えられていた呪文が不意に止まる。 「まさか・・・」 「どうした、呪文を唱えないのか? ま、結果は一緒だ」 「やっ!」 背けた顔を大きな手が元へ戻す。 「んん・・・」 リナの唇からくぐもった声が漏れる。 その唇を割り、暖かな物が忍び込んだ。 逃げるのを許さず、思うがままに蹂躙していく。 それはリナの身体から力が抜け、ガウリイに寄りかかるまで続けられた。 「どうした、リナ?」 ただ荒い息をつくリナの耳に笑を含んだ声が聞こえた。 「・・や・・い・・ くやしいぃぃ・・・」 ジタバタと暴れるリナの身体をガウリイはやんわりと抱きしめた。 「お前が仕掛けてきたんだろーが」 「だって・・・・」 「さっさと認めちまえよ」 「・・・・・・」 「リナ」 もう一度顎をすくい上げる。 今度は抵抗は無かった。 ただタキシードを掴んだ手が関節が白くなるほど握りしめられる。 「は・ぁ・・」 リナの口から甘い吐息がこぼれ落ちる。 「お前はオレのモノだろう?―――」 無言で小さく。 それでもリナは頷いた。 「じゃあ―――」 そんなリナを覗き込み、ガウリイがその整った顔に笑みを浮かべた。 それはリナにとっては悪魔の笑顔に等しかった。 「いいよな?」 「や・・・」 ちくりとした痛みが走る。 見れば肩に咲く赤い花。 「やめてよ・・・」 荒い息を整えて少女が青年に抗議する。 「これじゃ首の開いた服が着れ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ねえガウリイ?」 どこか引きつった笑みを浮かべて少女が青年を見上げた。 「―――やっぱり嫉妬してたんじゃないの?」 「さあな」 少女の上に乗ったまま、青年はお日様のようにニコリと微笑んだ。 「く、く、くやしいぃぃぃぃ・・・う・ん・・あ・・」 |
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2000/11 「under the rose」は「秘密に」です。 「rose」でまだ使いたいタイトルがあるのでその内・・・(笑) ← 戻る ← トップ |