Fight!−r 〜後編〜


―――そして当日―――


「リナ」
「何?ガウリイ」
「今日はバレンタインのお返しの日だろ。
お礼をしたいから一日オレに付き合ってくれないか?」
「?別に良いけど・・・」
「良かった」
ニコリと笑うガウリイにリナが仄かに頬を染める。
「じゅ、十倍返しなんだからね。
忘れたなんて言ったらスリッパで殴るわよ」
「大丈夫。憶えてるって」
くっくっくっくっく・・・
掴みはオッケーッ。
心の中でガッツポーズを取ってガウリイはリナと一緒に町へと出た。
本来なら『デートに付き合ってくれ』と言いたいところをぐっと堪えた。
そんなことを言えば照れたリナに吹っ飛ばされるのがオチだ。
それだけは避けないといけない。
代わりにさりげなくリナの腕を掴んでいたりする。
「ちょちょっとガウリイ。どこ行くのよ」
「まーまー、今日一日付き合ってくれるんだろ?
せっかくだから普通の格好をしようぜ。
服も買ってやるから。
せっかくの日に仕事とか依頼されたら困るだろ?」
「う、うん・・・」
何で困るのか分からないまま、すっかりガウリイの勢いに押されたリナは反論も出来ずこくこくと頷いた。






デートシーン

       ―――省略―――



って言うのもあんまりなので概略だけ。
魔導士の服から普通の服へ変えたリナはご機嫌で――そりゃ全部奢りだ――1度も呪文が飛ぶことも無く、 ガウリイがさりげないエスコートしながら町を巡り歩く。
それは剣こそ持ってはいるもののアーマーの類を外したガウリイと共に端から見れば『デート』と呼ばれてもおかしくないほどで、ガウリイは弛んだ頬を抑え最後の詰めに入ろうとしていた。



日が落ちた町に今日だけ特別だという灯かりが灯る。
予約をしてあったレストランで食事を終えた二人はその灯りを見るために公園の一角に居た。
まだ肌寒い冬の終わりとも春の始めとも分からない気温に肩が触れるぐらい寄り添う。
ベンチに座り足をぶらつかせていたリナはチラチラとガウリイを見ていたが、ずっと気になっていたことを尋ねた。
「でもガウリイ大丈夫なの?」
「何がだ?」
「・・・だって10倍なんてとっくに過ぎてるじゃない」
その頬が赤く染まっているのは何も食事のときに飲んだワインの所為だけでは無いだろう。
ガウリイがさっき買った小さな花束の中に顔を埋める様にして囁く。
「ああ、バイトしたから大丈夫だ」
いつもと違う格好をしたリナは可愛らしく、ガウリイはそれだけで苦労して稼いだ甲斐はあったと思った。
賞金を手っ取り早く稼ぐためにルークを囮にしたりゼルガディスを敵のど真ん中に放り込んだり多少の無理をしたが、その苦労は報われた。
ガウリイはじーんと感動してもう一度リナをみた。
いつもとは違う白いコート。
ショルダーガードを外せば予想以上に華奢な身体が現れる。
髪は下ろしたままだがいつものバンダナは無く小さな髪飾りで髪を止めている。
赤い頬、潤んだ瞳、つややかなピンクの唇。
いつもと違う格好の所為か心なしか表情も違って見える。
赤い瞳が少し上目で何か探るようにガウリイを見ていた。
「リナ・・・」
周りでは多くのアベック達が自分たちだけの世界に入り込んでいる。
「リナ、オレはっ・・・」
ぐいっ。
とリナを抱きしめるはずだった手は見事に宙を切った。
「え?」
リナはまるでガウリイの動きを読んでいたかのようにすっと一歩身を引いてガウリイの腕をかわすと、 うっすらとピンクをまとったその唇が呪文を刻んだ。
「爆裂陣(メガ・ブランド)」

「のああああああ↓」

べちゃり。
「よっし」
リナは足下にぼたりと落ちてきたガウリイをみて満足げに頷いた。
あまつさえつま先でその体をつついて確認していたりする。
「なっなっ・・・何が「よし」だ〜〜〜〜」
ぷすぷすと煙を上げながら香ばしく焦げたガウリイがバネ仕掛けのように飛び起きた。
だがそれを見るリナに悪びれた様子はない。
寧ろ激昂するガウリイに首を傾げた。
「え?何って父ちゃんが相手が払った元を取られることがあるから注意しろって。
気前良く奢って油断させといて、最後に全部取り返されるって。
あたしから取り返すなんて1億年早いのよっ」
「ぐっ・・・」
ガウリイは呻いた。
リナは分かっていないだろうが一部間違いではない。
間違いでは無いのだが・・・




「ちっくしょうーーーっおやぢめ〜〜〜
おぼえとけよーーーっ」





告白さえも許されなかったガウリイが力尽きてバタリと後ろ向きに倒れた。




―――どうやら闘いはまだまだまだまだ続くようである―――













余談。
もう2つの闘い。

その1
「み、ミリーナ・・・」
「ああ、ルーク。仕事が入りました。
早く行きましょう」
「え?・・・」






その2
「あの、な、アメリア・・・」
「はい。何ですか。ゼルガディスさん?」
「いや、その、な」
「はい」
にこにこにこにこ
「その・・・なんだ・・・」
「はい?」
「えっとな・・・」
「何ですか?」
「う・・・その・・・」
「はい」
「イヤそのだなぁ・・・」
「何ですか?」
「・・・アメリア!」
「ハイ?」
「あ・・・その・・・」
「ゼルガディスさん?」




言うは易し行うは難し。





2003/3
rはリターンでもりべんぢでも好きなもので(笑)

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