お祭り〜G〜


道なりに続く灯りに踊る影、さざめく人々。
実のところオレは人混みというのはそれほどキライじゃない。
祭りとなれば尚更に。
浮き立った空気は男も女も大人も子供も善人も悪人もよそ者も、全て受け入れ包み込む。
ここではオレという異質も喧噪に溶け、只の祭りを楽しむ男に変わる。
まあもっともそれは昔の話で、今は勿論リナが居る所為だけどな。
どこからか聞こえてくる鐘と笛の音を聞きながら、人混みに合わせて流れていく。
勿論リナの手はしっかりと握ったまま。
リナのやつ照れ屋だからなー
オレはいつでもこうやってリナに触れていたいけど、リナは人目があると絶対させてくれないんだ。
人前で肩を抱くどころか、手も握らしてくれやしない。
でも今はこの通り。
少ーし赤い顔をしたリナが大人しくオレに手を引かれて歩いている。
結局、手を繋ぐ理由が有ればいい訳だ。
おまけに人から庇うフリして肩に手を回したりして。
その度に照れて俯くのがまたかわいーんだ。
オレは幸せをしみじみと噛みしめていた。
やっぱり祭りは良いよな。うん。
こうしてリナと歩けるし、たまにはこんな可愛い格好をしたリナも見れるし。
周りにはリナと同じ様に『ゆかた』を着た女の子達。
色とりどりの帯がヒラヒラを揺れる。
でも、やっぱり一番可愛いのはリナだよな。
その証拠に野郎どもは振り返ってばっかりだし。
ふふふ・・・
「・・リイ・・」
今日は特別気分がいいから許してやるぜ。
但し、見せるだけだけどな♪
「ガ・・イ・・・・てば・・・」
オレ達の目の前を人目を憚らずいちゃつくカップルが横切っていった。
肩を抱き合い、顔を寄せ合って笑いあっている。
いいよなー
リナもアレぐらいさせてくれたらなー
ダメ元でやってみるか?
オレは腕を組んで考え込んだ。
この人混みの中だったら、もしかしてリナだって・・・


「ガウリイのバカッ!!!」

突然聞こえたリナの声。
振り返ればリナの背中が見えた。
「リナ?!」
オレはリナの手を掴もうとするが、人が多くて、手が届かない。
直線距離なら負けやしないが、如何せん人が多すぎる。
この人込みではオレは身動きが取れず、小柄なリナは人混みの間を泳ぐように抜けていく。
焦るオレを後目に、リナの背中はどんどん小さくなる。
前言撤回、人混みなんてキライだ。
強引に人混みをかき分けてリナが向かったと思われる方へ進んでいく。
途中何度か抗議の声が聞こえたが構うもんか。
「リナ!」
やっと人波が切れたかと思えば、もうそこは街外れに近い場所だった。
大通りではあれほど人で溢れかえっていたというのに、1つ道を外れるだけで人足は途絶え、静かな夜が帰ってくる。
オレはそこで途方に暮れていた。
一体リナは何処に行っちまったんだ・・・
薄闇に続く道と灯かりが灯る道を交互に見る。
・・・
・・・
・・・
・・・仕方がない一旦宿に帰るか。
オレは大通りへと戻る道へと足を踏み出し掛けて・・・
ガウリイ・・・・
「リナ?」
確かに呼ばれたと感じた。
オレは迷わずそちらへと足を踏み出した。





続く



← 戻る  進む →