「たまには日本にも顔を出しなさいね」 間を置いて「ふたりとも」と告げられた。 女神からそう言われたら、行かざるを得ない。 わたしも紫龍も、聖闘士としての務めは果たしているし、聖域の定例報告会には参加している。 ジャミールでの生活に口を挟まれたことはないので、意外な誘いとは思うものの。 女神の顔を立てるという意味合いで、数年ぶりにトーキョーへ行くことになった。 ---テレポーティションで。 到着日時はあらかじめ伝えていたのに、喜びよりも、あきれた顔で迎えられしまう。 能力に頼るわけではないが、ほかの移動手段よりも一番早いのだから、仕方がない。 と、いうのは言い訳で。 義理だけ果たして、挨拶もそこそこ帰ろうという魂胆が透けてしまったのだろうか。 それとも、城戸邸のリビングに出でて、驚いたメイドが年代物らしき皿を割ったからか? 玄関から呼び鈴とやらを鳴らせば良かったのだろうか。軽く失敗。 さらには開口一番、 「あなたたち、そんな格好で出歩いてごらんなさい、コスプレと思われるわよ」 コスプレ? それはなんだ? この格好は変なのか? 互いの姿を見交わして、考えた。 どこか、おかしいのだろうか?さっぱり分からない。 ふたりして首を傾げていると、紫龍が弾かれたように、ひらめきを口にした。 「あ!ひょっとして、季節感がないですか、俺たち?」 ああ、そういえば、ニホンは四季がある国だ。なるほど。えらいな、紫龍は。 個人的に合点がいったつもりが。 哀れみのようでいて、冷たい、女神の厳しい視線に気づく。 目は口ほどにものを言うのなら、「手のつけようがない」とでも言いたげだ。 ---どうやら間違っていたようだ。 長く重い沈黙を支配した女神だったが、おもむろに電話をかけ、なにやら指示を出し始め。 そしてわたしたちは、現代社会の勉強のためにと、なぜかトーキョーの街を行くことになったのだった。 ---トーキョーよ。正直、不安でいっぱいだ。 |