■10-ETERNITY■
この世に生を受けて。 14年もの間知らなかった相手なのに。 息が触れる距離で、全神経がみちるの存在を感じる今ではもう、ふたり出会うまでの人生こそが色のないものに思えてしまう。 昨日のことすら、色褪せてる。 みちるの包帯の巻かれた左腕に触れた。 細い。 その華奢な腕はヴァイオリンを弾くためだけにあるべきだったのに。 いまは傷ついて、痛々しい。 何をためらっていたんだろう、と思った。 レーサーになる夢を捨ててまで戦士の道を選ぶ意味など、価値などないと。 前世の記憶にも使命にも、束縛されたくないなどと考えていた自分があさましかった。 自分の未練が、誰よりも大切な人を孤独に戦わせ、そして傷つけることにつながったのだ。 夢の中に現れたネプチューンのセリフを思い出す。『世界を破滅から救えるのは、わたしと、あなた…』 正直なところ『世界を破滅から救う』なんて出来るとは思わない。 それは正義をふりかざすものの、おごりだと思う。 けれど、戦神『ウラヌス』として覚醒してしまえば。 誰かを犠牲にすることすら躊躇わず、なにがあっても使命を全うせんとするだろう。 『天王はるか』の気持ちとは別に行動することになってしまう。 いまのうちに、自由に。『天王はるか』としての誓いを胸に刻み付けておこうと思った。 みちるの指に自分の指をからめる。 『世界』なんて救えなくていい。 ただひとり大切な、君を救えるなら、それでいい。 使命という十字架を背負う戦士。 例え、その先に暗い死が待っていようとも。 戦うことを決して恐れたりはしない。 恐いのは、君を失うこと。 それだけだ。 みちるの左手をそのまま引き寄せ、薬指にくちづける。 誓い。これが僕の誓いだから。 |