■11-ROMANCE■
胸の上で、みちるが微かに身動きをした。 起きるのかと見ていたが、深い眠りに支配されているようで安心する。 まつげの長い美しい顔にかかる、やわらかに波打つ艶やかな髪をはらってやった。 安心しきった顔で警戒もなく眠るみちるを見ていると、また鼓動がうるさく鳴り出してしまう。 「やれやれ。今夜は、お預けをくらったのかな。僕としたことが………」 最後はセリフにならず、あくびに消された。 今日だけでいろんなことがありすぎて、モータースポーツで鍛えたタフなはるかでも、さすがに疲れが出たのだろう。 これからのことは、目が覚めたらふたりで決めればいいか。 こんな心臓のまま起きてたら、それこそ身体に悪いし。 そう結論付け、最後にもう一度、大きなあくび。 眠る前に念のため、みちるの包帯が巻かれた箇所に異常はないか確認してみる。 そして、傷跡が残らないことを心の底から祈った。 「おやすみ、みちるちゃん」 少しだけためらったが誘惑には勝てず、海そのものの髪に、やさしく思いを込めて口付けた。 と、みちるの寝顔がさっきよりも魅惑的に、まるで誘ってるように感じられて。 薄れていく意識の中で、はるかはもう一度降参した。 |