底床ベースのすすめ

水草水槽における底床とは最も重要な部分であり濾過と並んで水槽の心臓部となる部分です。
"ネイチャーアクアリウム"が登場する以前では、ごく一部のマニアが試行錯誤の上、独自に考えていたようですが、最近ではその重要さが再認識され水草水槽における基本となりつつあります。
 
それまでは単一底砂を敷き詰めプロホース等を用いてこまめに掃除したり、底面濾過やラインヒーターなどを設置したりする方法が底床の長期維持を可能にする一般的な方法でしたが、それだけで全てがうまく行くものではなくそれなりに欠点もありました。
しかもソイルの登場によりそれらの方法では対処できなくなったり、新たなる問題が浮上してきたと言うのが現状のようです。
 
今までのように大磯砂を使用したり川砂を使用してレイアウトをする場合や、最近の流行であるセラミック系の底砂を使用する場合にもその底砂のベースとなる部分を作ってやることで、より水草の育成難易度が低くなったり、長期維持できたりします。
特にソイル系の底砂を使用する場合にはその最大の利点である、理想とする水質を簡単に再現できることや水草の生長に最も適した素材であること、特に根張りの良いエキノドルスやクリプトなどの水草には特に有効であることが実証されています。
根張りの良い水草はおもにその張り巡らせた根から栄養分を吸収し生長していきます。
葉面からの栄養分吸収をさかんに行い生長していく種の有茎草とはまた違った特性と言えます。
これらの水草を長期に渡って育成してゆく場合にはソイル系の底砂最大の欠点である長期維持に適さない部分を某らの方法で補ってやることが必要になってきます。
そうすることによって1年から1年半が限界であるとされているソイルの寿命を少しでも長く使用し続けられるように出来れば、より長く楽しむことが出来たり定期的に必要な出費と労力を少なくできるものと思えます。
また、底床ベースは長期維持するためだけが目的ではなく、より水草の育成がしやすくなるようにするもので、本来の目的は水草の根に良好な環境を作ってやる、と言うことになります。
そのために今一度底床の重要性について再確認していきたいと思います。

底床の役割

水草水槽における底床の役割には大きく分けて2つ有ります。
1つは「水草が根を張り生長していくための土台となる部分である」こと、もう1つは「数多くのバクテリアの住みかである」と言うことです。
水草が伸張させた根から栄養分を吸収するには底床内にある有機物をそのままの形で取り込むことは出来ません。
底床内に繁殖したバクテリアがそれらの有機物を分解して始めて水草は栄養分として取り込むことが出来るのです。
また、底床内に増殖したバクテリアには当然の事ながら生物濾過で活躍する硝化バクテリアも存在します。
よって良好な底床は濾過の部分も兼ね備えていると言うことになるのです。
水槽の底面に敷き詰められた底床の量から考えてもその濾過能力は外部濾過器の及ぶところではありません。
底面濾過が最も優れた濾過システムであると言われるゆえんはここにあるのです。
 
水草を育成するための土台となる底床を常に良好な状態とするためにはこれらのバクテリアを濾材同様に飼育する、と言う考え方が必要になります。 そこで必要となってくるのが底床内の通水性です。
 
底床はその水槽の水量に見合う水圧によって、時間の経過と共に段々と締まっていき硬化していきます。
これは大型の水槽になればなるほど進行が早くその弊害も多く現れます。
また、餌に含まれるカルシウムやマグネシウムが底床に蓄積するとさらに底床を硬化させていきます。
そして定期的に行う水換えによってもどんどんと堅く締まっていくのです。

バクテリアのために

底床内に繁殖するバクテリアはほとんどが好気的な環境、いわゆる酸素のある環境でしか生きてゆけません。
当然水草の根も呼吸しますから酸素が無くては根草れを起こし腐ってしまいます。
バクテリアを常に良好な状態で飼育するためには、底床内に適度な通水性を持たせ水槽水に溶け込んだ酸素を供給してやる必要があるのです。
これを実現し継続するためには底床は可能な限り硬化しないような仕組みにしてやる必要があります。
大型水槽での底床替えはリセットと同じでおいそれと出来るものでは有りません。
大型の水槽になればなるほど最も大切なのは底床でありバクテリアの飼育と言うことになるのです。
 
一般的には単一素材で底床を作成するのが今までのやり方ですが、通水性だけを考えた場合、ソイルの普及により底面濾過による通水性の確保も困難になっています。 (水草水槽に底面濾過が最も適しているという意味ではありません)
少し横道にそれますが底面濾過は大磯やセラミック系の底砂を用いた単一素材でのセッティングでは最も水槽の立ち上がりが早く、安定した水質が得られます。
根張りの良いエキノドルスやクリプト、ブリクサショートリーフ等はすこぶる良好に生育します。
反面、長期維持にはこのシステムは適さず、底床中に張り巡らされた根によって水の通りが偏ってしまいます。
結果的に部分的に通水性の悪い部分が出来てしまい底床内に腐ってしまう部分が出来たりします。
よって、短期的なレイアウトや定期的にレイアウトを変更していく等のスタイルには適しますが長期維持を目的とする場合には不向きな方法となってしまいます。 (水草販売水槽などには最も適しているそうですが・・・)
バクテリアのためには簡単にプロホースなどで掃除できて通水性がよいこのシステムは最も良いのですが、ソイルによって水質を調整し南米産の水草レイアウトなどを楽しみたい場合やより自然観を出したいと思ってソイルを使用する場合には、別の方法を考えなくてはならなくなるようです。
 
話を元に戻して、底床が単一素材であると比較的早く底床が硬化してきます。
それは同じ形状をした物同士が詰め込まれているからです。
底砂として使用するような同じ大きさや形状の物同士では隙間が出来にくく、水圧によってさらに角などが削られ、どんどんと隙間が無くなっていきます。
大磯砂のような天然素材の石ならばまだましですが、ソイルともなれば粒もつぶれやすくすぐに通水性が無くなってしまうのです。
これを打破するためには大きさのことなる物を段階的に層状にしてセッティングする等の処置が必要で、基本的には大きい物を一番下に、最も小さい物を一番上にします。
また、クッション的な役割を果たす緩衝剤を用いるのもひとつの方法ですが、発泡スチロールのような通水性のない物は使用できませんし、水質に影響するもの色落ちする物なども適さないと言うことになります。
このような目的でセッティングするのが「底床ベース」と言うことになります。

器具による解決策

これらの問題を解決するためにはその他の方法もあります。
古くから存在するラインヒーターや水槽の底に設置するプレートタイプの物です。
どちらとも底床の最下部を暖めることによって対流を生じさせ底床の硬化を防ぎ通水性を確保しようとする物です。
また、関東以北の厳しい冬を経験する地域などでは冬季に底床内の温度が極端に低下しバクテリアの活動が休止したり、水草の成長が止まってしまったりする弊害を防ぐために設置されます。
水槽内にもたらされる濾過器からの水流はなかなか底床内にまで浸透することはなく、ましてや最下部の方まで行き渡ることはよほどの大きな粒の底砂を使用していない限りあり得ません。
普通は底床に当たって跳ね返り底床より上で対流しています。
また、水は温度によって比重が変化しますから温度が高く比重の軽い水は上に、温度が低く比重が重い水は下にと層状になるのが普通です。お風呂のお湯がそうですよね。
また、温度の異なる水同士では循環が起こりにくく、水槽内という限られた水量であっても何処の場所でも同じ温度では無いのです。
 
確かにラインヒーターはそう言った意味で有効な手段ですが、熱線に直接水草の根がふれるぐらいに伸張してくると、それが原因で葉に穴が空いたり、最悪水草が溶けてしまったりすることもあります。
その様な弊害を防ぐにはプレートタイプのものを設置して空間を作りその中にもう1つヒーターを設置し保温してやるのがベストですが、市販されている製品も少なく、かなり高価であるのが現実のようです。
自作に自身がある方で厳しい寒さの地域にお住まいの方なら、ステンレスプレートを加工してセッティングされても良いでしょうが、一般的にはそこまでしなくても少しの工夫で底床の硬化はかなり防げるようです。

自家製底床ベースの作り方に続く