自家製底床ベースの作り方

前ページでは底床の重要性について解説しました。
それではどのようにしたら底床内の通水性を確保しバクテリアに最適な好気的な環境を維持出来るのでしょうか。
 
まず参考に出来るのがA○A社が提唱するネイチャーアクアリウムの構築論に登場するパワーサン○です。
こちらは始めから水に溶けにくい肥料分をしみこませた軽石と完熟ピートを用いた物ですが、必要とする肥料分は作ろうとする水景によっても変わってきますので適当でない場合も多々あります。
使用量を調節すると底床ベースとして不足する場合もありますので、これを使用すれば全てが解決すると言うわけには行かないようです。
パワーサン○を規定量使用しただけなのに水草がコケだらけになってしまった、異様に導電率が高くなった、と言うこともよくあるようですが、含まれている肥料分の影響であることは言うまでもありません。
 
そこでこの商品を参考にして肥料分を含まない底床ベースを自作し必要な肥料分をその都度混ぜ込んで使用するようにすれば、大いに改善されるように考えました。
パワーサン○を解剖してみると、その主成分は軽石で水槽の大きさに合わせて3タイプほど有ります。
また、発生するバクテリアの餌となる物質や休眠状態のバクテリアを含んだスペシャルタイプもあるようですが、その様な物を含んでいなくても十分にバクテリアは発生しますから、急いで完成させなくてはいけないような水景の場合や気温の低い冬季に水槽を立ち上げなくてはならないような場合以外あまり必要ではありません。
軽石の他には完熟ピートが有機肥料として混ぜ込まれており、軽石には水に溶けにくい肥料分がコーティングされているようです。
 
今回は肥料分を含まない底床ベースを作成するのが目的ですから有機物や水に溶けにくい肥料分のことはあまり考えません。
ただ、若干の有機物がなければ、まっさらな水槽の底床ではバクテリアの餌となる物も存在しませんので必要だと言うことになります。
 
ここまで言えばもう必要な物は分かっていますからさっさと園芸用品の売り場へ行けば必要な物が揃っているはずです。
要するに必要な物は水槽の大きさに合わせた軽石と腐葉土やピートと言った有機物です。
少し大きなホームセンターなどの園芸用品の売場へ行けばたくさんの種類が並んでいるはずです。
どれが適当か決めにくいかも知れませんが商品を1つ1つ見ていくことで選別は可能です。

軽石 

まず、軽石はペーハーが調節されているもの、何の表記もない物は必ずテストしてから使用して下さい。
大きさは60センチ水槽以下で5〜8ミリ程度、90〜120センチ水槽でそれよりも2周りぐらい大きいもの、120センチ以上の水槽ではさらに2周りぐらい大きい物がベースとなります。(小粒・中粒・大粒)
90センチ以上の水槽ではこれらの違った粒の大きさの軽石を混ぜて使用すればより良いでしょう。
おそらく販売されている軽石は粒の大きさが均一で揃っている訳ではないですから、例えば中粒を購入したとすれば、それらを大まかに選別して使用すればよろしいかと思います。
 
なぜ軽石が良いのかというと、まずとても安価であると言うこと、そして軽石というのは内部にたくさんの気孔をもったいわば濾材のようなものですから、バクテリアの住みかとしては最適であると言う事が上げられると思います。まさに濾材にだって使用できます。
その構造故、通水性にも優れ均一な粒でないために隙間が多くできます。
このような特徴が底床ベースとしての材料に適していると言うことになります。
 
参考までに左の商品は地元のホームセンターや園芸店で販売されているもので、ペーハーは中性に調整されています。
小粒・中粒・大粒の3タイプがあり、2リットルで180円でした。

有機物 

次に有機物ですが完熟ピートと言っても色々な種類がありその選別はかなり困難です。
ピートの多くは水質を調整するためによく使用されるもので若干の色落ちをする物が大半です。
物によっては雑菌や粗悪な物も多く、また、地域的にしか販売されていないもの等もあります。
よって、ピートを使用するにはちゃんとテストをしてあまり水質に影響を与えないものとか色落ちしないものを選別しなければなりません。
テストの結果色落ちもなくペーハーが調節されていて水質に近いもので有れば問題はありませんが、そこまでたどり着くにはかなりのテストが必要になると思います。
 
一方、腐葉土はどうでしょうか。
こちらも色々あってピートの場合とあまり変わらないようです。
 
と言うことで、今回ご紹介するのが「タケダ培養土21」と言う商品です。
 
タケダ培養土21には観葉植物用・洋らん用・草花用・プランター用と数種類有りますが目の細かさの違いで、プランター用が最も目が粗く、ついで洋らん用、草花用というようです。
成分はほとんど変わらないとのことでしたので(発売元 タケダ園芸株式会社 確認済み)どのタイプでも使用できます。
価格も全て同一です。(地元では5リットルで660円で販売されていました)
目が粗い(繊維が粗い)ものは細かくしても使用できますし、大型水槽にはあまり細かすぎる物も適当ではないでしょうから、目的や水槽サイズに合わせてチョイスすればよろしいかと思います。
現物は樹皮を細かい繊維状にしたものと樹皮の一部を裂いたような物などが混じっています。
目が粗い物は大きめの樹皮の一部が入っているようで、セットするときにその様なものは取り省くなどしても調節できます。
これはおそらく全国規模で販売されているはずですから、2〜3軒大きめの園芸用品店やホームセンターへ行けば見つけることが出来ると思います。
 
この「タケダ培養土21」は通常の培養土(樹木の葉っぱを熟成したもの)とは違い樹皮がベースになっています。
水中で使用しても全く色落ちしませんし水質にもほとんど影響しません。
これだけでも水草を育成できるぐらいですが、もともと樹皮なので水に沈みにくいです。
現物を手にとってご覧になると良く分かりますが、よくほぐしてやるとふわふわとした樹皮の綿のようです。
短期維持であるならばソイルの下にこれを敷くだけでもずいぶんと通水性が良くなります。
また、廃棄するときも燃えるゴミとして捨てられますので後始末に悩まなくても済みます。
有機物ですから肥料分を仕込まなくても若干水草は生長します。
しかし、肥料ではないので作ろうとする水景や植えようとする水草に合わせて肥料分を混ぜ込むほうがよりベストであると思います。
 
使用する肥料分はどんな固形肥料でもかまいませんが即効性の物よりもじわじわ溶け出してくるようなタイプのものが適切です。
スティック状の物なら細かく砕いて混ぜ合わせればいいでしょう。
 
以上のように水槽の大きさに合わせた軽石とタケダ培養土21、固形肥料が有れば自由に底床ベースをスタイルに合わせて作成することが出来ます。
軽石とタケダ21の混ぜ具合や底床ベースとして使用する厚みなど思いのままです。
特にソイル系の底床にする場合には少しでも長く粒がつぶれずに維持できますから寿命が長くなります。
また、底床内が嫌気的になる事でよく発生する「藍藻」も出にくくなります。

用途に合わせて軽石とタケダ培養土21,肥料分の混ぜ具合を考えてチャレンジしてみて下さい。

色々な底砂に使用する目安

ソイル系

もともとこのような底床ベースはソイルをいかにして可能な限り長持ちさせ良好な状態を保てるかを考える上で登場しました。
よって、1年未満の短期維持で有ればさほど必要ないかも知れませんが、水槽の立ち上がりをよくするためには若干でも施しておく方がいいようです。
このような場合には軽石−2〜3/タケダ培養土21−7〜8のような配合で薄く敷く(後部で3〜4センチ程度)程度でよいかと思われます。
当然見映えを考えて前面はごく薄く後部に向かって厚く、となります。
 
これとは違って可能な限り長持ちさせたい、長期維持したいと言うような場合は軽石−4〜5/タケダ培養土21−5〜6と言った配合の方がいいでしょう。
また、大型水槽に用いる場合には大きさの異なる軽石を混ぜて使用します。
大きめの物を主にそれよりも少し小さな物を若干混ぜる、と言う具合です。
同じように前面は薄く、後部はしっかり目に厚くセットします。
上からソイルをかぶせますとソイルに押さえ込まれるために厚みが2/3ほどになってしまいますので注意して下さい。
冬季の寒さが厳しい地域ではラインヒーターなどと併用するとさらに効果があります。
肥料分は植え込む水草の量や種類によっても異なりますので少な目に混ぜ込まれることをお勧めします。
肥料分を追加することは簡単ですが抜き取ることは非常に困難です。
底床ベースとソイルの合計で適正な底床量より少し多いぐらいになるようにセットするのが目安です。
 
余談ですが水草は底床が厚くなればなるほど大きく、背丈が高く生長し、薄ければ密生しますが小さく、低くなってしまいます。
 
大磯砂やセラミック系
 
もともと通水性がよい底砂素材ですのでこの場合には水草の成長を助けるものとして使用するように考えるべきだと思います。
水槽の立ち上がり、バクテリアの発生が早くなりますので水質の早期安定にも一役買いそうです。
大磯に使用する場合は軽石を3〜4程度混ぜた物を使用した方がバクテリアの住みかが増えて良いように思います。
反対にセラミック系の底砂はそれ自体が多気孔な構造ですから軽石は混ぜずにタケダ培養土21だけを使用すれば十分です。
どちらも厚くセットする必要はなく、本体の大磯やセラミック素材の底砂が薄すぎると最大の特徴である底床の掃除がしにくくなる場合がありますので補助的なベースとして考えて下さい。
逆に本体の底砂が多すぎるとせっかくの底床ベースが押しつぶされる場合もありますので注意して下さい。

砂系

砂系の底砂は何よりもその美観が取り柄ですのでタケダ培養土21のようなものが見えるようにはセットできません。
このような底砂は水量が多い大型水槽に使用するとその水圧により時間の経過と共にかなり締まってしまい硬化してしまいます。
とはいえたくさんの底床ベースを使用するわけにもいかず、また使用したとしても砂の粒が細かすぎてあまり効果が期待できません。
このような場合には小粒の軽石をベースにタケダ培養土21はつなぎ程度に若干まぶす程度で、水槽外側から見えないようにセットします。
量も少な目にした方が表面に出にくくなっていいでしょう。

注意!

このような底床ベースを使用する場合には基本的に水草の抜き差しは御法度です。
トリミングしたり植え替えたりするときは少し水草を持ち上げて根本付近でカットして対処して下さい。
エキノドルスやクリプトの場合にはその様な植え替えは出来ませんので始めに植える場所を十分に検討して行って下さい。
どうしても植え替えなければいけなかったり取り出さなくてはならなかったりする場合には、いったん濾過器を止めてゆっくりと底砂を除去しながら取り出し、チューブなどで表面に出てしまったタケダ培養土21やゴミなどを全て吸い出します。
新たにソイルなどを補充して修復し、水換えを行ってから再度濾過器を稼働させて下さい。
このような作業を行うと思わず水質が悪化し問題が生じる場合が多々ありますので2〜3日間続けて水換えをするようにします。
定期的に植え替えをしたりこまめにレイアウトの変更をされる場合には単一素材で底床を構成するようにして下さい。

補足

今回ご紹介した「タケダ培養土21」はこれでなくてはならないものではなく、私が個人的に使用していた銘柄をご紹介したに過ぎません。
よって、この商品よりも優れた物や場合によっては適さない場合も考えられます。
ピートや培養土という商品にはたくさんの種類があり、色々な発売元があるようです。
興味がある方は色々な商品をテストし、試してみられるのもよろしいかと思います。
 
また、このページで紹介しました底床ベースは紹介した組み合わせでなければ作れないものではないはずです。
軽石は底砂の締まりと硬化を緩和しバクテリアの住みかとしての素材として考え、タケダ培養土21はバクテリアの餌と若干の水草に対する肥料分としての有機物として、さらに、軽石同士の隙間を守るための緩和剤として考えただけですので、軽石の代わりに使い古しの濾材やタケダ培養土21の代わりに水質調整使用済みのピートや園芸用のピート、腐葉土を煮沸させたものでも可能のように思います。
しかし、それを採用するには必ずテストが必要です。
生体の飼育をしながら色々とテストすることはあまり誉められたことではありませんので、水質を知る試薬などを利用して問題ないことを確かめてから採用するようにして下さい。
 
勝手ながら作成、使用に当たって某らの問題が生じましても作者は何の責任も持てませんので、ご使用に当たってはご自身の判断で行って下さい。
私は現在全ての水槽にこの底床ベースをセットしておりますが一切の問題は起こっていないことはご報告申しあげます。
 
 
使用・制作例
クリスタルレッド専用
M水槽