使用・制作例

クリスタルレッド専用M水槽

今回は標準規格のオールガラスM水槽でクリスタルレッド専用水槽を作成してみたいと思います。
使用したのはテトラのM水槽と45センチ用のワンタッチフィルターがセットになった物です。

この水槽はクリスタルレッドの繁殖を目的とするため長期維持を前提とします。
使用する底砂はクリスタルレッドの美しさを際だたせるために黒が最適と考えました。
また、小さなエビですので小粒な底砂素材でも大きく見えてしまいますから、ADAのアクアソイル・アフリカーナのパウダータイプを使用することにしました。
濾過はテトラの外掛け式ワンタッチフィルター・45センチ水槽用を改造し、パワーハウス・淡水水草用Mサイズを1リットル詰め込み、水流を弱めるためにアクリルで少し細工してみました。裏話必読!
 

 
 
レイアウトですが、CO2の添加は考えていませんので、水草はCO2の添加無しでも大丈夫なシダ類のボルビディス・ヒュデロッティ、ミクロソリウム・ウェンディーロブ、南米ウィローモス、そして、小さい流木や石なども少し使用して簡単なレイアウトをすることにしました。
シダ類は流木や石に活着させた物を使用します。
 
 
まず、底床ベースを作成します。
今回は長期維持を目的とする小型水槽ですので軽石の小粒を使用します。
粒の大きさはまちまちですので大きめの物は取り省き、軽石−7〜8、タケダ培養土21−2〜3の割合で混ぜ合わせ使用します。
今回は小型水槽には少し大きな樹皮が混ざっている洋らん用のタケダ培養土21の開封した物がありましたのでそれを使用してみます。
本来なら観葉植物用が適当であったかも知れませんがあまり変わりませんのである物を使用しました。
細かい繊維の部分がほとんどですので使用するときに適当でない大きさの物などはピックアップして除去しました。
 
 
使用前に軽石を少し選別し流水にて洗います。
水槽に軽石を投入し、だいたいの分量を決めます。
その上よりタケダ培養土21をほぐしながら先述した割合になるように投入し、よく混ぜ合わせます。
不適切な大きめの樹皮もこの時に排除しました。

今回は根を張る水草を一切使用しませんし植栽もしませんので肥料分は一切混ぜ込みません。
後からクリプトでも植えたくなればその時に固形肥料でも追肥しようと思います。
よって底床ベースの厚みはさほど必要ではありませんので前面が1センチ程度、後部が2〜3センチ程度になるようにセットします。
次にアクアソイルのパウダータイプを全体で前面が3センチ程度、後部が6〜7センチ程度になるように投入します。
ワンタッチフィルターの吸水部が底床にふれない高さになるように注意しながら高さを調節します。
さらに吸水部の真下にはリシアストーンのような平たい石を配置しソイルを巻き上げないように工夫しました。
 

 
用意しておいた水草を用いて簡単にレイアウトしてみました。
底床が浸る程度に何かクッションの役目を果たす物を置いてその上から静かに水をそそぎ込みます。
しばらく放置し浮き上がったゴミなどを取り省いておきます。
レイアウトする前に濾過器をセットしておき、問題がないかチェックします。
底床に接するようならその部分の底砂の厚みを減らせたり、工夫して下さい。
決して底床に密着しないようにして下さい。
アクアソイルのパウダータイプは特に微塵な粒子が舞い上がりやすいので濾過器本体や濾材に支障をきたしやすいです。
 
ヒーターと温度計等をセットして8分目まで注水します。
ひどく濁っているようなら一度注入した水を吸い出して水換えを行います。
今回はエアレーションはセットしません。
理由はCO2を添加しないことと外掛け式のフィルターを使用しますのでフィルターから濾過された水が水槽に戻るときに、どうしても空気を巻き込みやすくなりますから、常に酸素は供給されている状態になります。
M水槽よりも大きな水槽になりますと不十分ですが、投入する生体もごく小さく知れていますので必要ないと判断しました。
何時までも白濁りが続いたり生体の動きが鈍くなったり鼻あげをするような事が確認されればセットするつもりです。
 
次にこれから使用する水を注入するのですが、出来れば状態の良いほかの水槽から「種水」をもらって使用した方が水槽の立ち上がりも早くなりますのでその様にします。 今回は90センチの水槽から直接チューブで種水を注入しました。
また、濾材も、現在稼働している濾過器から少し分けてもらって使用すれば、セット初期に起こる白濁りもましになると思います。
 
ヒーターの電源を入れ、濾過器を稼働させます。 問題がないかよくチェックしておきましょう。

出来上がりです。
今回は種水以外は全くの新規水槽セットアップですのでパイロットフィッシュとしてカラシンを2匹・ヤマトヌマエビを3匹、セッティング直後から温度合わせ、水あわせをして投入しました。
最後にフタをしてライトをセットします。
今回は45センチ用の15ワットツインライトが余っていましたのでこれをセットしました。
使用蛍光官はADAのNAランプです。
この時点での水質は以下の通りです。
 

ペーハー
硬度
KH 
硝酸イオン濃度
6.5
3.5
6.0mg/l
 
24時間後の水質は以下の通りです。
 
ペーハー
硬度
KH 
硝酸イオン濃度
6.3
6.0mg/l
 
アクアソイルの吸着効果によりペーハーや高度、KHが減少していますね。
このようにソイル系の底砂はそれを使用するだけで弱酸性、軟水を実現してくれるという特徴を持っています。
最終的にはペーハーなどもう少し下がった値となるでしょう。
ただし、今回使用した量は少ないので極端には下がらないと思います。

2日後、白濁りが発生しました。ほとんど種水を使用したのですが、濾材と底床がまっさらだったので発生したようです。
おそらく綺麗な水になるまでに1週間以上はかかると思いますが、濾過が出来上がっていない以上アンモニアや亜硝酸が蓄積しますので2日に1回は1/3ほどの水換えをしてやります。
この時点での水質は以下の通りです。
 

ペーハー 
硬度
KH
亜硝酸濃度
6.2
0.5mg/l
 
この時点で亜硝酸イオンが検出されました。
濾過が全く機能していない状態です。
まだ硝化バクテリアが十分に増殖していないのでしょう。
アンモニアを亜硝酸イオンに酸化するバクテリアは比較的早く倍加しますが亜硝酸イオンを硝酸イオンに酸化するバクテリアはそれよりも倍加時間が遅く2〜3日を要します。
従って、白濁りしていてもそのままでは生体に対して有毒な物質が蓄積してしまいますので白濁りに関係なく水換えを行います。
 
1/3の水換えをした後、パイロットフィッシュとヤマトヌマエビを取り出し、水あわせをしてもとの水槽へ帰って頂きました。
実はまだ濾過が完全に機能していない水槽にメインの生体を投入するのは良くないことなのですが、メインの生体が入っていた水槽を別のことに使用しなければいけないような事情に陥ったため決行することにしました。
そしてメインのクリスタルレッドとビーシュリンプを若干、お魚もいないと寂しいのでスカーレットジェムを8匹ほど、元いた水槽とは少しペーハーが違いますので念入りに時間を掛けて水あわせし投入しました。
エビや生体に問題がないかしばらく観察してチェックしました。
クリスタルレッドがたくさん増えてくれることを願って完成です。
 
バクテリアはその基質となる「餌」がなければ増殖できません。
早く濾過を機能させたければいち早く飼育する数の生体を投入することが近道です。
バクテリアの基質とはすなわち生体から排出されるアンモニアです。
アンモニアが常に存在すれば最短時間で硝化バクテリアが倍加するはずです。
始めの段階では処理しきれないアンモニアや亜硝酸イオンにまでしか酸化されなかった物質が蓄積しますので人為的に水換えによって手助けをします。
M水槽で今回のようなセッティングであれば1週間から10日で亜硝酸が検出されなくなるはずです。
検出されなくなれば1週間に1度、1/3ほどの水換えをしてメンテナンスしてやります。
水換えによってそれからは硝酸イオンを除去していきます。
また、CO2の補充にもなります。
順調にバクテリアが増殖してくれれば1ヶ月以内に安定するはずです。
 
以後のメンテナンス

水槽が安定し始めてからのメンテナンスは、定期的な水換えと物理濾過の役目を担わせているワンタッチフィルターの吸水口に取り付けたスポンジフィルターを半分にカットした物ぐらいです。
水換えの目安は硝酸イオン濃度の蓄積度合いです。
使用する試薬で注意しなくてはいけない値になる前に水換えを行います。
定期的に測定すれば何日でどのくらい蓄積するかが把握できますので早めに水換えをするように心がけます。
今回の場合はクリスタルレッドが爆発的に増えるまでは2週間に一度ぐらいでも十分だと思いますが、水草を入れてレイアウトしていますので1週間に一度は1/3程度、水換えする予定です。
スポンジフィルターはかなり汚れてきたり目詰まりを起こして水量が少なくなってきたと判断されれば取り外してもみ洗いします。
1ヶ月から2ヶ月に1回ぐらいになるのではないでしょうか。
 
また、与える餌ですが、ごく少量を1日1度投入します。
使用するのは人工飼料ですが、コリドラス用のタブレットや冷凍赤虫なども時々与えようと思います。
クリスタルレッドだけですとゆでたほうれん草なども好んで食すのですが、水草やスカーレットジェムも投入していますので食べ残しで水質を悪化させるような物は出来る限り与えません。
水草が投入されている以上、発生するコケも餌になりますのでくれぐれも過度の餌を与えないように注意します。
水量が少ない水槽ではすぐに水質を悪化させてしまいます。
 
夏場の温度対策
 
クリスタルレッドに限らずエビの種類は総じて高温に弱く真夏の水温上昇で大切な生体を全滅させてしまった、と言う話はよくあることです。
これを防ぐためには出来る限り水温が上昇しないような工夫が必要です。
こまめな水換えも1つの手段ですし、フタをはずして水位を少し下げ気化熱を利用するのも1つの手段です。
今回のような小型水槽ですと移動も簡単に行えますので出来るだけ温度が上がらない場所やエアコンが常に稼働しているような部屋へ設置するようにします。
また、小型のクリップ式の扇風機などを購入し水面に当ててやると、確実に2〜3度水温を下げることが出来ます。
目安としては30度を超えないように注意する必要があります。
 
−−完成−−
最後にニムファ・ステラータをワンポイントとして植栽してみました。
この画像は約3週間経過した時点ですが、CO2無添加でも水草は生長し、水換えをした日には気泡を付けています。
以後の画像は「GALLERY」の方にでも掲載したいと思います。
 

  
 
    
 
−−裏話−−実はこの水槽をセットアップして2日後から白濁りが発生した事は表記しましたが、10日ぐらい経っても完全に綺麗になりませんでした。
また、亜硝酸イオンが2週間以上経過しても検知される状態となり、予定とはずいぶんと遅い立ち上がりとなりました。
ちょっと疑問に思い濾過器をチェックしてみた所かなり水量が弱いことに気がつきました。
ワンタッチフィルターですので濾材の部分に通水しきれなかった量の水は直接水槽へとオーバーフローする仕組みになっています。
水量調節コックで水量を増やすとかなりオーバーフローしてしまいました。
で、濾材を詰め込みすぎているのだと思い、濾過器の底面から1センチ以上空けてセットし直し、濾材の量を少し減らしてみました。
するとずいぶんと水量が増し、今までオーバーフローしてしまうようなコックの位置でも問題なく通水するようになりました。
この結果、2日後には亜硝酸イオンも検出されなくなり無事に立ち上がりを迎えました。
安定するにはもうしばらくかかると思いますが、濾材は詰め込めるだけ詰め込めばいいものではないことを再確認しました。
あまりにも通水量が少ないためにバクテリアも順調に増殖できなかったようです。
通水量が少なすぎたりゆっくり過ぎるとバクテリアへの酸素供給も不十分になり嫌気的な環境になり安くなります。
また、逆に早すぎたり多すぎたりすると硝化作用が十分に行われなかったりするでしょう。
さらに、調子の良い水槽の濾過器でも濾材のチェックやメンテナンスを長期に渡りしていなかったりすると通水量が徐々に少なくなっていき思わぬ事態を招くこともあります。
不審に思ったらやはり色々とチェックしなくてはいけませんね。