ソイル立ち上げ初期の対応

ソイル系の底砂を教科書通りにセットした場合の、起こりうる問題を回避するための対応策をここでは解説します。
 
ソイル系の底砂の代表として真っ先にあげられるのはAD○社発売のアクア○ソイルだと思います。
現在では数社のメーカーから数種のソイル系底砂が発売されているようですが、品質としては一番いいように感じています。
安価なソイル系の底砂の多くはソイル系の底砂の最大の問題点である粒のつぶれ安さと滅菌性において、AD○社製に比べかなり不安定なようです。
また、粒が揃っていなかったり、いつまでたっても透明度が出てこなかったりする場合もあるようです。
ただし、ソイル系の底砂を使用するに当たっての注意点を無視して使用したような場合はどのようなソイルを使用しても同じ事ですが・・・。
 
数あるソイル系の底砂の中にはあらかじめ肥料分をしみこませているタイプの製品もあり、使用に当たってはかなり注意が必要です。
このような製品を使用するに当たっては、底床内に多量の肥料分が必要な水草を多く使用するレイアウトや、葉面からもさかんに栄養分を吸収するような有茎草をふんだんに用いたレイアウトに使用するのが適切な使用方法です。
このような限られたレイアウトに使用するに当たってもセット初期には厳重な注意と対処が必要で、予断を許さないのが現実のようです。
また、ソイルの粒もつぶれ安いために大型の水槽に単一底砂として使用するのにはさけるべきです。
 
ソイルの粒のつぶれ安さとその滅菌性は製造段階で行われる燃焼行程が重要なようですが、これが適切でないと様々な問題を引き起こすようです。
これらのことを総合して考慮した場合、容量から見た販売価格は若干高く感じますが、他社の製品の品質や仕様、その販売価格と比較すればAD○社製のソイルの方が安く感じることもあるようです。
実質AD○社の販売価格が高いのではなく、他社の製品の方がもっと高い場合もありますからね。
 
ソイル系の底砂を使用する場合、原則として私の個人的な持論では底床ベースと合わせて使用するのが大前提です。
また、水草の育成においても頻繁にレイアウトを変更したり水草の抜き差しを行うということは全く考えていません。
製作段階でしっかりとしたレイアウトを描き、それを完成させようとするだけで、大幅なレイアウト変更はリセットと同じかそれに近い行為になるのです。
しかしながらベテランの方でも多少のレイアウト変更や水草の抜き差しを全く行わないわけではないので、コツさえ把握すれば全く出来ないというほどではありません。
 
このようにソイルを使用するに当たっての注意点をしっかりと把握していれば、AD○社製のソイルなら楽に2年は使用し続けることが可能ですし、底床をリセットせずにレイアウトを大幅に変更して使用し続けることもできます。
適切なセットで問題なく機能してきた底床なら若干のソイルの補充で数回のレイアウトは楽しめるものと思います。
実際私はソイルを使用した水槽で最低でも3つのレイアウトは楽しませてもらうようにしています・・・・。
 
前置きはこのぐらいにして本題ですが、AD○社のソイルを教科書通りにセットして稼働し始めた水槽には、その初期の段階において必ず適切な処置を施す必要があります。
まず、底床ベースとしてAD○社のパワーサン○を適応量セットするわけですからおのずと水槽水が富栄養化してしまいます。
(参照ページ 「パワーサン○の上手な使い方」
これを嫌うのであれば自作底床ベースを使用するしかないわけですが、それを知らずにセットしてしまったり自作は面倒だからという理由で教科書通りになってしまう場合もありますので、その様な場合での「しなくてはならないこと」をちゃんと行えば何ら問題は起こるものではありません。
 
では「しなくてはいけないこと」とはどんなことでしょうか。
それはまず、パワーサン○からしみ出る余分な肥料分を除去してやること、そして、いきなり生体を投入しないこと、そして、底床セット後、水をゆっくりと水草を植栽しながら段階的に注入することです。

1.余分な肥料分を除去する

単純な方法としては「水換え」です。
セット直後から最低1週間は毎日1/2以上の水換えを行います。
以後、1週間単位で毎日を2日1回、3日に1回と間隔を開けていきます。
最終的には1週間に1回程度になり以後は通常の水換えの間隔になるでしょう。かなりの労力です。
 
しかしながらこのようなことが実質的に不可能な方々もいらっしゃいます。
その様な場合には可能な限り水換えは行うという前提で、物理濾材を省く全ての生物濾材(濾過において始めから生物濾材をセットしていち早く硝化バクテリアを倍加させ濾過を立ち上げるのが基本ですが)を活性炭やゼオライトといった吸着濾材に変更します。
または、始めからその様な濾材のセットにしておきます。
余分な肥料分を吸着濾材によって除去しようとするものです。
濾材は2週間で全て新しいものと交換します。
可能な限り水換えを行いながら濾材に吸着濾材を使用すれば1ヶ月半ほどで回避できるようになります。
 
また、スターティングプラントとしてリシアを大量に投入して栄養分を吸収させるようなことも可能です。
 
富栄養化状態を回避できたかどうかは硝酸イオン濃度や導電率で把握します。
導電率計は高価ですので硝酸イオン濃度測定試薬で代用すると良いでしょう。
この値が正常値を示せば初期の対応は終了です。
お好みの生体を投入しても大丈夫です。

正常値になれば濾材を半分生物濾材に交換します。
2週間後、残りの半分も生物濾材に交換して終了です。
濾材を交換する際は新しい濾材は必ず一番最後に来るようにセットして下さい。
バクテリアが移り住み易くなります。

2.いきなり生体を投入しない

硝酸イオン濃度が危険値である以上、生体を投入することが出来ないのは当然ですが、反面、生体がいないと硝化バクテリアの基質となるアンモニアが存在しなくなりますので、生物濾過に必要な硝化バクテリアの増殖を期待することは出来ません。
水槽をリセットして出来てしまった環境の場合は、他にそれまで飼育していた生体を収容することが出来なければ、リセットした水槽に戻さざるを得ないことになります。
その様な場合でも初期の対応としての頻繁な水換えは行わざるを得ませんので、生体に与えるストレスも相当なものになります。
いくら濾材を全て吸着濾材に変えたとしても始めの1週間は状況を改善するほどの働きは期待できないものです。
このような場合には濾過器を追加するなどして対処するしかないわけですが、予備の濾過器などが無いような場合にはいらぬ出費を強いられることになってしまいます。
水流が当たる場所に吸着濾材をつるしたりする事はすぐに出来ますが、効果はほとんど期待できないのが現実で、このようなことからもいきなり生体をたくさん投入すべきではない、と言う結論に達してしまうのです。
濾過器を買い足すぐらいならば安価な水槽を1っ購入してスポンジ濾過でしばらくの間しのぐ方が安上がりになるかも知れませんね。

3.底床セット後、水をゆっくりと水草を植栽しながら段階的に注入する

セット直後からある程度透明度のある水にするためには始めて水を注ぎ込む時が最も重要なポイントとなります。
某らの物をクッション代わりにして水を注ぎ込んだとしても、バケツでその上に水を注ぎ込んだりホースで注入したりすれば間違いなくソイルの微塵な粒子が舞い上がり濁ってしまいます。
一度舞い上がってしまった微塵な粒子はなかなか落ち着きません。
粒子そのものが微塵な為何時までも漂っているような感じです。
水を注ぎ込むときに綺麗に敷いたソイルの底床が少し掘れてしまったり乱れたりするのは、多くの水量を注入しているということになります。
目安としては産卵箱などをソイルの底床の上に置き、そこへバケツに汲んできた水をエアチューブを用いてサイフォンの原理を利用して注ぎ込みます。
始めて水を注入すると表面のソイルの粒が浮き上がってくる場合があります。
少しずつゆっくりと水を注入すればするほど、ソイルに含まれる空気が抜けずに浮力となって表面の粒が浮いてしまうのです。
このようなときは浮き上がった粒を上から抑えてやると沈んでいきますので早めに対処しておきます。
 
底床がしっかり水に浸るぐらいになると前景草などの草丈のない水草を植栽します。
それ以前に流木や石を用いてレイアウトの骨格を仕上げておくことはいうまでもありません。
植栽が終了すればまたバケツに水を汲んできて水を注入します。
水槽の1/3程度まで注入できたら後景草等の残りの水草を植栽します。
ここまで来たらホースを用いて直接水を注入してもかまいませんが、少しずつ水が出るようにしてソイルが乱れないように注意しなくてはなりません。
目一杯まで水を注入できたら浮き上がってきたゴミなどを綺麗にすくい取ります。
この時点で少しの濁りが出る場合があります。
ほとんどこれだけていねいに注入してやれば濁りは出ませんが、失敗などして濁る場合もありますので、その様なときは再度1/2〜2/3ほど水を抜いて水換えをしてやります。
最後に濾過器を稼働させるわけですが濾過器が稼働したと同時に底床内から気泡がいっぱい出てくるはずです。
濾過器が稼働することによって水流が生まれこの時点で多少微塵な粒子が舞い上がりうっすら濁るというか曇った感じになりますが、その程度であれば何ら問題はありません。
最大の問題は微塵な粒子による濁りが濾過器に吸い込まれ、濾材を目詰まりさせたりモーター部を痛めたりすることですから、それをクリアできればいいだけのことです。
このように対処すれば始めから綺麗な水でスタートすることが出来ますし、以後の水換えによって水の透明度はすぐに上がります。
水槽稼働後、1ヶ月ほど経過したら濾過器をチェックしてウールなどを交換してやれば完璧と言えると思います。
 
余談ですが、濾過器の最後の部分に(濾過された水が最後に通る部分)ウールなどを詰めておくのは、このような微塵な粒子やゴミを再び水槽内に戻さないためやインペラやモーター部を保護する意味合いもありますので、薄くでも詰めておいた方がいいように思います。
また、この部分の汚れ具合で濾過器の状態もいくらかは把握できますので参考に出来ると思います。
 
以上のような注意事項をしっかりと覚えておけば、せっかく高価な土を購入してセットした水槽で失敗したり手を焼くようなことはほとんどなくなると思います。
やはり誰だって始めから綺麗な水が入った水槽を眺めたいですからね・・・・。
 
ソイルの特性をよく理解していれば、水が入っている水槽に後からソイルを補充したり追加したりすることも可能です。
そのお話はまた別の機会にでも・・・・・・。