木酢液の使い方いろいろ
数年前までは水草水槽に園芸用品である「木酢液」を使用するなどと言うことは、ごくひと握りのマニアの方々ぐらいしか実践していませんでした。
このような行為はアクアショップやプロの方々、ベテランの方々から「訳の分からない物を使用してはいけない」とか「木酢液は有る意味、毒と同じなのだから、その様な物を利用するのは間違っている」等とよく言われたものでした。
現在でもその様に言われることが時々ありますが、私から言わせればその様に訳の分からないものとか毒であるとかそう言ったものでは決して無く、使用方法さえ間違わなければ水草水槽にとって害にはならないものと思えます。
確かに複雑な水質を掌握する上では様々な成分を持つ「木酢液」を添加することによって、どのような化学反応を起こし、どのような結果を招くのかを全て把握することは出来ません。
極端ですが、場合によっては適量とされる量の添加でさえ大切な濾過バクテリアを絶滅させてしまうようなケースも考えられます。
濾過を立ち上げる初期の段階や某らの問題によって水槽環境がかなり悪化しているようなケースでは、ほんの少し濃度や添加量を間違えただけでも決して起こり得ないとは断言できないでしょう。
しかしながら、適切に使用すればその効果は水草愛好家にとっては何にもまして力強い味方となります。
当然その様な物を使用しなくとも何の問題もない素晴らしい水槽環境を構築する事もできますが、予想に反した予期せぬ事態など、某らの問題が生じたような場合には、「木酢液」を利用するのと全く利用しないのとでは、経験上からも適切な環境への改善スピードが大きく変わってくるように思います。
特に発生するコケ(どのようなコケにも効果があるわけではありませんが)に対する効果には目を見張る物があり、完成度の高い水景を作り上げる上で、無くてはならない物になることもしばしばです。
よって、「木酢液」は様々なケースに合わせた適切な使用方法があり、それなりの知識が必要になってきます。
メリットのある事に対してのみ使用し、デメリットやリスクは決して利用しないようにする事が何よりも肝心であると思います。
<木酢液について>
まず始めに木酢液とはどのような物なのか?から理解していきたいと思いますが、これは簡単に言えば、樹の有効成分が凝縮された自然のエキスだと言えるようです。
園芸における木酢液の効果には、現在分かっているだけで、
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1.バクテリアの働きを活発にする。
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2.植物の生理代謝を活発にする。
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3.底床内の有機成分を早く分解し、根からの吸収を良くする。
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4.殺菌効果がある。
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5.人体への危険性はほとんどない。
などがあげられますが、数年前までは詳しい木酢液に関する書物もあまりなく、専門に研究をされている方もほとんどいらっしゃらなかったようです。
しかし、現在では「木酢液の有効利用」などと言った専門書も数多く出てきていますので、その様な書物を参考にされるとさらに詳しく知ることが出来ると思います。
木酢液に含まれる成分は、何と200種類以上の成分が含まれているようです。
それらが複雑に絡み合って、様々な相乗効果を上げているようです。
主な成分には
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1.有機酸類
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蟻酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸・イソ酪酸・バレリアン酸・イソバレリアン酸・クロトン酸・イソカプロン酸・など。
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2.フェノール類
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フェノール・o,m,p,−クレゾール・2,4−及び3,5−キシレノール・4−エチル−及び4−プロピルフェノール・グアヤコール
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クレオゾール・4−エチル−及び4−プロピル−グアヤコール・ピロガロール・など。
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3.カルボニル化合物
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ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド・プロピオンアルデヒド・イソブチルアルデヒド・ブチルアルデヒド・バレルアルデヒド
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イソバレルアルデヒド・グリオキサール・など。
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4.アルコール類
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メタノール・エタノール・プロパノール・イソプロパノール・など。
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5.中性成分
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レボグルコサン・アセトール・マルトール・有機酸メチルエステル・ベラトロール・4−メチル・など。
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6.塩基性成分
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アンモニア・メチルアミン・ジメチルアミン・ピリジン・など。
です。
専門的な成分表示になると何がなんだか良く分かりませんね・・・。
ただし、現在では様々な製品が園芸用品コーナーなどで販売されており、それらの全てが同じ成分であるとは限りません。
安価良品もあれば粗悪な物もたくさんあるようです。
よって、出来れば購入の際により詳しく成分表示された物や品質表示された物を選ぶようにしなくてはなりません。
木酢液は今になって急に出てきたものではなく、その歴史は古く、17世紀には、ヨーロッパで酢酸やメタノールの製造に使われていたそうです。日本では、明治時代から、木酢液を用いて酢酸石灰を作り、火薬の製造に必要なアセトンという物質をこの酢酸石灰から作っていたそうです。
また、近年では除草剤としてや動物の退避剤としても多く使用されていたようです。
木酢液は、濃い紅茶のような飴色をしていて、原液は独特の強い臭いがします。
この木酢液は、木炭を作る行程で出てくる「煙」から採取します。
樹を炭焼窯に入れて焼くと、樹の内部のエキスが蒸発し、煙と共に出ていきます。
それを急激に冷やすことによって様々な成分を含んだ樹のエキスが採取できると言うことです。
しかし、すべての煙から取れるものでは有りません。
炭焼きの課程で出る煙には、まず、始めに真っ白で湿度の高い煙が出て、次に樹の植物繊維などが分解されて出てくる黄色みを帯びた煙が出てきます。
木酢液は、この白い煙から黄色みを帯びた煙に変わる頃の煙を冷やして液化させ、それを煙突内を逆流させてタンクにためます。
これが「荒木酢液」です。
これを6ヶ月以上放置することによって、その中に含まれるタール分が沈殿し3層に分離します。
その中間にある赤黒い液体を取りだして、さらに、精製されたものが木酢液になります。
原材料となる木は、森林に生えている自然の樹木ですが、カシやナラ、ブナなどの広葉樹がもっとも良いとされています。
しかし、採取される量は原木の5%ほどしかなく、100sの樹木から5sしか取れないと言うことになります。
よって、前にも書きましたが、木酢液は自然の樹木が原材料ですので品質がすべて均一にはなりません。
もっとも良いものは先述した広葉樹から採取されたもの、ついで、マツやスギ、ヒノキなどの針葉樹から採取されたものとなります。
極端に品質が悪いものは、植物に害を与えてしまいます。
また、木酢液を採取するタイミングも重要で、炭焼き窯の煙突の排煙口の温度が84度を超えてから120度までの間に採取されたものがよいとされています。これより遅れるとタール分が増えるらしいです。
品質の良い木酢液の選び方は
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1.透明感があって、色の綺麗なもの。不純物が沈殿していたり濁っているものは良くありません。
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2.刺激臭や異臭の強くないもの。これは買ってみなくては分かりません・・・・。
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3.pHが3前後のもの。品質表示欄に表示されていれば分かりますが・・・。
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4.極端に価格が安いものや、発売元が怪しき会社名のもの。(爆)
であります・・・。
要するに色々な品質の物が市販されていると言うことになります。
木酢液を使ったときの失敗例のほとんどが原液のまま水槽内に入れたり、薄目方が足りないまま使用してしまったという事例です。
基本的に、3倍以上に薄めたものを使用するようにすれば、そんなにリスクのあるものではありません。
左の画像は原液タイプの木酢液を3倍に水で薄め、市販されていたボトルに入れたものです。
ワンプッシュで約2t添加できます。
ただし、誤って大量にこぼしてしまった場合や、必要以上に添加した場合はもともこもないです・・・。
その様な場合には直ちに1/2以上の水換えを行う等で対処は出来ます。
ミスを犯したとしても直ちに悲劇が起こるような劇薬ではないのです。
ちなみに、園芸用では10〜1000倍に薄めて、用途に合わせて使用します。
では、水草水槽に使用するとどういう風になるのか?ですが、
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木酢液は肥料ではありません。しかし、植物の代謝を活性化させる効果があります。したがって、植物に元気がないときなどに使用します。
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これによって、葉の緑が鮮やかになり、葉の光合成が活発になります。これによって、コケの付着に対する抵抗力を高めます。
人間には病気に対して自然治癒力というものがあります。植物にも自然治癒力というものがあり、これを活性化させます。
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植物に必要な栄養素の吸収が良くなります。これによってますます、元気に生育し、ますます、コケを寄せ付けないようになります。
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木酢液の殺菌効果を利用してコケそのものを衰退させることもできます。(もともと除草剤として古くから利用されていた)
と言うことになりますが、この効果を水草に利用するのです。
誤解してはいけない事ですが、木酢液を使うことによって、コケがつかなくなるのではなく、コケがつきにくくなる環境になると理解して下さい。
通常のメンテナンスは必ず必要です。コケも出ますが、木酢液を添加していないときとは格段につき方が違います。
木酢液は、園芸店、ホームセンターで売られています。
500oリットル入りで700円程度〜1500円程度です。
また、製品によってかなりその濃度や品質に違いがありますので使用に当たっては3倍に薄めるのを基本に調整するようにします。
補足
万が一、購入した木酢液があまり品質が良さそうでないものであった場合、わかりやすいのは容器の底に黒いゴミのような物(たいていはタール分)が沈殿していたりした場合の対処方法を書いておきます。
安価で比較的たくさんの量が入ってる製品などによく見られることですが、木酢液に含まれるタールや不純物が沈殿しているのです。
このような製品しか地元で購入できないような場合は致し方ありません。
以下対処方法です。
出来る限りそのままの状態で放置し(1ヶ月ぐらい)不純物やタール分が完全に沈殿するのを待ちます。
そしてその上澄み液だけを利用するようにします。
容器の上から2/3ぐらいが目安となるでしょう。
また、すぐに使用したい場合は目の細かいコーヒーフィルターを2枚ほど重ねたものや濾紙を使用して濾してから使用します。
本格的な精製は不可能ですのでこれぐらいの対処しかできませんが、何もしないでそのまま使用するよりは、格段に安全性が向上しますし、効果も期待できます。
逆に、少ない量で高価なものは比較的良質で濃度の濃いものが多いようです。
備長炭木酢液と言われる物などがその代表です。(偽物もあるようですが・・・・)
これらの良質な木酢液は3倍に薄めてもかなり強烈な殺菌効果と酸度を持っていますので使用に当たってはその量に十分注意して下さい。
直接葉に添塗する場合やスポイドで吹き付ける場合は5倍以上に薄めるようにした方が無難でしょう。
木酢液の上手な使用方法はその製品に合わせた対処と薄目方です。
また、1度に大量に使用しないように心がけて下さい。