木酢液の使い方いろいろ

木酢液とは簡単に言えば殺菌作用のある植物活性剤のようなものだと説明しました。
適切な使用量であればバクテリアの活動も活発にしてくれます。
除草剤や害虫駆除剤として使用されていた「木酢液」をコケに対して使用する場合は適切な濃度に薄めたものを直接塗ったり水槽に添加することによってコケを排除しよう、コケの出にくい環境を作ってやろう、防止しようと言うものです。
木酢液は園芸用品ですが、A○Aから発売されているフィト○ギットもこの木酢液を主に作られているそうです。
園芸用品の場合には原液で売られているものと薄めたもので売られている場合があり、通常は原液のものを水で3倍程度に薄めて使います。
A○Aから出ているフィト○ギットはアクアリウムに使用するための物として販売されており、他の成分等を加味して販売されているようなので、水槽に使うとなれば一番安全であるかもしれません。
 
それでは以下に様々なケースに対する使用方法を解説します。

1.約3倍に薄めたものを水換え時等の定期的な間隔で添加する。(目安として60センチ標準水槽で5〜10tほど)

このような使い方は主に木酢液を活力剤として使用するような意図、そしてコケの発生を予防したり発生しにくい環境にする、と言った意図で行います。
前ページでも解説したように、定期的に適量を添加することで水草に活力を与えコケを寄せ付けないように、水草自身に体力を付けさせたり、発生しようとするコケを抑止する、発生しているコケの増殖を鈍らせるような目的での添加となります。
また、濾過バクテリアや底床内のバクテリアを活性化させ水質の安定化を促進させるような目的にも合致します。
さらに木酢液の持つ殺菌効果を利用し、病気などの発生を抑止する、予防すると言った意味での使用も同じ方法となります。
殺菌効果だけを目的とした場合には竹を原材料として採取された「竹酢液」と言うのもあります。
殺菌力だけを見ると木酢液よりも高い効果があるようです。

2.約3倍に薄めたものを毎日適量を添加する。(目安として60センチ標準水槽で2〜5tほど)

このような使用方法は水槽内にある程度勢力を拡大してしまったコケの増殖抑止及び弱体化を図る意図で行います。
注意しなくてはいけないのは、この行為によって発生してしまっているコケを無くせると言うことではない、と言うことです。
いくら何日も添加してもいっこうにコケがなくならないと言って添加量を増やしていったり濃度を濃くしたものを使用し続けたりすると、最後にはバクテリアにダメージを与えてしまったり生体に影響が出てしまったりと言った取り返しの付かない事態を招く恐れもあります。
あくまで木酢液の持つ殺菌効果によりコケを弱体化させ水草を活性化させることによって、新芽の展開や成長を促し水草を生長させることによりコケが付く状況を脱しようとするものなのです。
そして弱体化したコケを食する生物兵器やついばむような生体、そしてバクテリアの力によって減らしていこう、無くしていこうとするものです。
いわば共同作戦と言うことになるでしょうか。
手っ取り早くコケを除去したいのであれば、コケが付いてしまった水草を撤去するか葉をカットしてしまうか、はたまた底砂に付いたものであれば吸い出してしまうか、いずれにしても水槽内から人為的に除去しなくてはなりません。
よって、このような使用方法は一時的な処置のための使用方法であり長きに渡って行わなければならないような行為ではありません。

3.約2〜3倍に薄めたものをスポイドなどで直接吹きかける。

このような使用方法は、ある一部分に付着したようなコケを弱らせるためや死滅させるために行います。
例えば、レイアウト素材である流木や石の一部分、または特定の水草の一部分に付着してしまったようなひげコケをなくすような場合に多く行います。
この行為によって弱ってしまったひげコケはヤマトヌマエビなどが食してくれるようになりますので、数日後には綺麗になっていたりします。
コケ取り名人であるヤマトヌマエビも元気いっぱいのひげコケはよほどの飢餓状態でない限りは手を付けません。
1度の処理でうまくいかなかった場合などは続けて行うことで対処できます。
注意しなくてはいけないのは一度に多くの場所に対して行わないことです。
色々な箇所に対して同じ様な行為を一度に行うと、ふと気が付けばかなりの量を使用していたと言うこともあります。
その様な場合には日にちを空けながら行うか、水換え前にエリアごとに順番に行っていくか、複数箇所をどうしても一度にしたい場合などは使用後に1/3〜1/2の水換えを行うようにします。
この処置を施す場合には基本的に濾過器は一時ストップさせ水流を無くします。
そうすることによって吹き付けられた木酢液も数秒程度その周囲に停滞しますのでより効果が上がります。
水流の強い箇所でこの処置を施したとしてもすぐに拡散してしまいますので、ほとんど効果が上がらなくなります。
間違っても濾過器が稼働したまま吸水口の近くで行ってはいけません。
直接濾過器に添加したのと同じ行為になり濾過バクテリアにダメージを与えてしまいます。

4.原液のまま使用する。

これは主にレイアウト素材である流木や石の使用に当たっての前処理やコケだらけになってしまったものの再生をしたいような場合に行います。
レイアウト素材をトレイなどに乗せ木酢液の原液をはけなどで丁寧に塗り込むようにして使用します。
前処理として使用する場合には流水で洗い流してから水槽内に使用するようにします。
こうすることによって水槽セット初期の水質が不安定な時期にもコケが付きにくくなります。
尚、このような前処理をした流木にコケの仲間であるウィローモスなどを巻き付けてレイアウトすると、活着するどころかウィローモスも枯れてしまいますので注意が必要です。
活着させて使用するような流木はコケも付きにくくなりますので一般的な灰汁抜きを施したもので問題はありません。
コケだらけになってしまったものの再生は何度か時間を空けて重ね塗りするように処理し、いったん完全に乾燥させてから再利用します。
ひどい場合はなかなか取れてくれないようなこともありますが、その様な箇所は思い切って削るかそぎ落とすようにする方が手っ取り早いときもあります。
使用するときにはいったんバケツの水につけ込むなどしてから使用します。

5.その他

水槽のガラス面と底床の接する部分などに発生したコケは3倍程度に薄めた木酢液を注射器などを用いてその部分に注入して処理します。
また、人から譲り受けた水草やショップで購入してきた水草を100倍以上に薄めた木酢液にさっとくぐらせたり数分間つけ込んだりして、コケの進入や病気を持ち込まないように処理したりもできます。
ただし、この行為はそれぞれの水草がどの程度の濃度にすれば効くのか、問題が無いのかと言った知識も必要です。
柔らかい葉の水草などはちょっとしたそのような処理でも枯れてしまったりする場合もあります。
一般的には硬く丈夫な葉の水草ならば枯れてしまうようなことはないようです。
また、アヌビアス・ナナの様な硬く厚い葉で水槽内から取り出せるような水草ならば、3〜5倍程度に薄めたものを直接ハケで塗ってやり水槽内に戻すと、ヤマトヌマエビなどが食してしまうこともありますが、一般的な柔らかく薄い葉の水草にはその様なことを施すと間違いなく葉が枯れて落ちてしまいます。
 
以上の他に代表的なコケ(ひげコケや藍藻、アオミドロ)などに対する対処はページを別にして解説します。
ただし、どのようなコケでも木酢液で無くしたり、減らしたり、付きにくく出来るわけではありません。
大前提として、コケが出ないような基本的な環境を作り上げ、それを維持管理していくと言うことが大切なのです。

最後に

コケというものは、「水草が元気で、正常に生育しているような状態の時には、自らコケを寄せ付けない」ものなのです。
要するに、水草が活力ある状態であれば、コケが付けないと言うことになります。
木酢液は、いわゆる樹木から抽出されたエキスを蒸留し、不純物を取り除かれた濃縮エキスですから、これを添加することによって、水草に吸収させ活力を与えようとするのです。
何度も書きますが、炭焼きをする過程で出てきた副産物であり、除草剤として使用されていたのです。

あくまでも、木酢液の持つ殺菌効果を利用してコケにダメージを与え、水草に活力を与えて自らコケを寄せ付けないような正常な水草を育成するためのいわば「ビタミン剤」のように考えます。
時には直接添塗したり吹きかけたりしてコケを死滅させたりしますが、このような使用方法は水草本体にも悪影響を与えてしまうこともなきにしもあらずです。
木酢液の利用の基本は3倍程度に薄めたものを適時少量添加することにより水草に活力と抵抗力を与え、コケがつきにくい環境を構築しようとするものです。
 
「水槽内の水草がコケだらけになった、ひげコケがたくさん出てきた、だから木酢液で退治してやる・・・」と言うような目的で使用するのでは決してありません。
最も重要な問題は、「どうしてそうなったのか?」を考え解明することです。
それをなくして何の進歩もありません。
自分の水槽システム、メンテナンスなどに、何らかの欠点があったと考えなくてはいけないと思います。
そうでなければ何年水草水槽をやっていても結果は全て同じになるのです。
基本的なシステム(濾過能力や濾材、設置環境)の見直しや照明時間、餌の量、魚の数、水換えの頻度と量、肥料分を含んだ底床に対する前処理など、様々な部分を総チェックして同じ事態を引き起こさないようにしなくてはいけません。
この機会に、例えば、濾過能力を上げるためにプレフィルターの導入を考えてみるのもよし、外部式濾過器自体をワンランクアップするのも良いことでしょう。
 
多くの場合は液体肥料などの添加のしすぎや餌の与えすぎによる水質の富栄養化です。
水草が吸収しきれないほどの栄養分はすべてコケの発生を促します。
理想としては自分の水槽内にある水草が必要とする栄養分だけで良いのです。
自分の水槽では結果的に液体や固形の肥料を添加する必要が無かったかもしれません。
しかし、これは自分で見極めなくてはならないのです。
ここがもっとも難しいところであり、経験が最大の武器になると言う事であると思います。
水槽セット時点で大量の肥料分を混ぜ込まない、肥料分を添加するなら規定量の半分から始める、餌は決してたくさん与えない、魚をたくさん投入しない、このように考えられるのがもっとも良いのではないでしょうか。
 
また、水草専門店で育成のコツや特色などをよく聞いておくのも1っの予防策であり、知識の習得です。
水草専門店では比較的一般店より価格が高かったりしますが、その分種類も豊富で状態も良いものがほとんどです。
価格の高い分を授業料として考えれば納得できる場合もあるでしょう。
状態の良い水草を手に入れる方が結果的に問題なく育成できることにも繋がります。
水草の状態を見極められないのであればなおさら信用信頼のある専門店を利用されることをお勧めいたします。
現在では優良な専門店も通信販売を行っておられる所が多くなってきていますので地元に適当なショップが無くとも色々なメリットを利用することが出来るようです。
また、根本的な水槽のセット内容のチェックや日頃の管理のチェックをして頂くのも良いのではないでしょうか。

水槽内に肥料分がなければ水質が富栄養化になる確率は極めて低くなります。
しかしながら、肥料分がないと水草が立派に生長しないのも事実ですし、生長障害を起こしたり枯れてしまうのも事実です。
また、いくら底床に肥料分を仕込んでいても、特に水槽セット初期にうまく水草が育たないのは、それを分解して水草が吸収できる形に変えてくれるバクテリアが十分に繁殖していないからです。
水草水槽における底床内肥料はとても重要です。
そして、育成期間における添加肥料の種類や量はもっと重要になります。
これらの物を使いこなすことが出来て一人前となるように思います。
 
失敗を繰り返し、経験を積むことが成功の秘訣であり、知識を吸収しようとする意識が自分の水草水槽を素晴らしいものにしてくれるのです。
この試行錯誤が水草水槽の醍醐味なのかも知れませんね・・・。