髭(ひげ)コケへの対処
髭(ひげ)コケとは、シャワーパイプの穴の周りやアヌビアス・ナナやミクロソリウム等の堅い葉の縁、流木や石などのエッジ等に良く付く小さなぼんぼりのような房状に付くコケのことを言います。
色はほとんどは黒っぽい色ですが赤みがかっていたりグレーっぽかったりするものもあります。
非常に強い活着力を持っていて取り省くには大変苦労する事がしばしばです。
基本的な環境が整った水槽でもシャワーパイプなどには発生します。
水草以外の物に付いているとしてもそれは別段なんの問題にもなりません。
定期的なメンテナンス時に取り外して使い古しの歯ブラシなどで綺麗にこすってやればすぐに落ちます。
問題なのは水槽から取り出せない箇所や水草自体に付着してしまった場合です。
特に水草の至る所に発生しだしたものはどんどんと勢力を増していき、次々とその他の水草にも付着していきます。
このひげコケの特徴をまとめると
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非常に生命力が強く増殖力も強い。
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活着力が非常に強く簡単には除去できない。
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水質の富栄養度に合わせて生長し大きくなる。
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活力が衰えだした古い葉や茎の部分から発生しやすい。
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比較的強い水流があたる箇所に多く発生する。
等が上げられます。
どうして発生するのか?と言う原因ですが、これはこのコケに限らず第一に水質が富栄養化しているからです。
水草達が生長するのに必要以上に存在する栄養分は必ずコケの発生を促します。
富栄養化していない水質、適度な栄養分を含んだ水質や貧栄養な水質では、ひげコケによって水草がダメになるようなことにはまずなりません。
要するに環境によって発生し、場合によっては全ての水草をダメにしてしまうような非常に厄介なコケなのです。
水槽セット初期やガラス面に付くような比較的簡単に処理できるコケでは無いだけに、水草を乗っ取られることの無いように注意しなくてはいけないコケと認識した方が賢明でしょう。
また、このコケの発生原因は水質が富栄養化した事だけが原因になるのではなく、不安定な水質や濾過が完全に出来上がる時期等と言った水質が安定化していく過程においても発生することがあるようです。
もとよりこのような環境的要因が原因で発生した場合には、水質さえ安定すればそれ以上発生することもなく、水槽を乗っ取られてしまうような事態にはならないようです。
水質が安定するまでのしばらくの期間少し我慢をし、ひどく付いてしまった部分や見苦しくなった部分に対して処置してやり、水槽内より取り出すようにすれば問題ありません。
次に、対処の仕方ですが、その前にまず原因を出来るだけ突き詰めてやることが大切です。
水槽セットから間もない時期であれば、「水質が不安定でまだ落ち着いていないから少し発生した」とも言えますが、水槽セット時からあちこちに発生しどんどんと勢力を拡大していく場合や水槽セットからかなり時間が経過しているにもかかわらず突如として発生し出したり、急に勢力を拡大してきたような場合、特に次々と水草に付着していき、ひげコケだらけになるようなケースは間違いなく環境、水質に重大な問題があると言えます。
根本的な解決はそうなってしまった環境や水質を改善してやることが先決となります。
照明時間、照度、餌の与え方、肥料の与え方、水換えなどのメンテナンスの仕方、設備そのものなど、あらゆる要因をチェックし直して問題解決の糸口を見いださなくてはまた同じ事の繰り返しとなります。
水槽セットからかなり時間が経過しているような場合には濾過が正常に機能しなくなっている場合がありますので濾過器のチェックは必修です。
1.水草以外の物に付着している場合
シャーワーパイプなどの器具類や簡単に水槽内より取り出せるようなレイアウト素材に付着した場合には、それを取りだし使い古しの歯ブラシやタワシでこすり落としてやれば簡単に除去できます。
レイアウト素材にはその様な処置を施した後に木酢液を原液のままハケなどで添付してやり数分後に流水で洗い元に戻してやります。
流木などに付着したものは歯ブラシなどでこすっただけでは完全に除去されませんので必ず木酢液を添付して下さい。
少しでも胞子が残っているとまたすぐによみがえってしまいます。
木酢液の代わりにハイターなどの塩素系漂白剤や洗剤も使用できますが、この手の物を用いる場合には一晩真水につけ込むなど、念入りに成分除去を行って下さい。
特にひどく付着し、ひげコケまみれになってしまったような流木は塩素系漂白剤を直接添付したり、つけ込むなどした方が手っ取り早いこともあります。
どちらにしても成分が残らないように注意して水槽に戻して下さい。
また、底床に埋め込んだり、複雑に絡み合っている流木や石、水草が大いに生長し水槽外に取り出すには水草を何とかしなくてはならないような場合は、簡単に処理することは出来ませんので、時間をかけて徐々に無くしていくようにしなくてはなりません。
このような場合、流木などがひげコケまみれになってからでは厄介ですので発見次第こまめに対処するように心がけます。
対処の仕方ですが、発生して間もない時期であればスクレイパーや爪などの硬いものでそぎ落としてやります。
この時水換えの要領で必ず水槽外に吸い出してやらなければなりません。
そぎ落としたものを放置しますと、たどり着いた所でまた活着したり、そこから増殖したりしてしまいます。
発生初期であれば使い古しの歯ブラシでこすってやるだけで取れる場合が多いです。
その様な処置をした後、必ず3倍程度に薄めた木酢液を付着していたポイントに吹きかけておきます。
このコケは黙認できないようなかけらでも残っていると、すぐにそこからまた増殖しますので完全に根絶やしにしておかなくてはいけないのです。
次に簡単には除去できないぐらいに付着していたり、よく観察すると複数箇所で発生していたりした場合は上記のような作業で全てを取り省くにはかなり無理がありますので、一度に処理しようと考えずに水換えごとにでも少しずつ無くしていくように考えた方が賢明です。
方法ですが、付着した部分に3倍程度に薄めた木酢液を直接スポイドで吹きかけてやります。
2日ほどで白く変色してくると思いますので、その様になれば今まで食べてくれなかったエビもよく食べて綺麗にしてくれます。
あまり変色もせず効果が見られなかった場合は再度吹きかけてやります。
よく効いた場合にはエビなどがいなくても死滅して綺麗になることもありますが、水草水槽では定番的にコケを食べるヤマトヌマエビを始めとするエビを同居させますので、投入されたことがない方は一度試してみられることをお勧めいたします。
ただし、入れすぎには注意して下さい。
余談ですが水草の種類によってはヤマトヌマエビなどの中型のエビに対して食害を受けるものもありますので注意が必要です。
このような場合にはビーシュリンプや小型のエビを投入することで大きな被害は免れます。
ただしかなりの匹数を投入しないとコケ取り能力も期待できませんが・・・。
出来ればこのようなケースに陥らないようにするためにもレイアウトに使用しようとする流木などには前もって原液の木酢液を塗り込んでおくと格段にコケが付着しにくくなりますので是非実践して頂きたく思います。
2.水草に付着した場合
単刀直入に言えばほとんどの水草の場合、ひげコケが付着してしまうとひげコケだけを取り省くことはほとんど不可能です。
平たく言えば付着してしまった葉や茎はカットするしか方法がないと言うことになります。
アヌビアス・ナナやアマゾンソードのような堅い葉の水草なら3倍以上に薄めた木酢液をハケで添付するなりコットンなどで拭いてやることで綺麗になる場合もありますが、濃度の加減によっては添付した部分が枯れてきたり、しばらくするとまた発生してきたりします。
要するにひげコケがたくさん水草に付いているような場合は助けようがないと言うことになります。
まれに腹ぺこのヤマトヌマエビやある種の魚が食べてくれるような場合もあるようですが、それだけであちこちに発生したひげコケをなくすことはかなり難しいと言わざるを得ません。
生物兵器もあまり期待できないと言うことになります。
部分的な場合には3倍程度に薄めた木酢液を直接スポイドで吹きかけてやることにより、ひげコケがダメージを受けて白く変色してきます。
このように弱体化すればエビの格好の餌となりますので比較的楽に除去することが出来ますが、往々にして水草の葉にもダメージを与えてしまったり、水中で行う作業のため、せっかく吹き付けてもすぐに拡散してしまい効果があまりなかった、と言うような結果となることがしばしばです。
限られた水草にだけ付着したような場合には、ある程度ひげコケに余分な栄養分を吸収させてから迷わず全て撤去することが最も確実で手っ取り早い方法ですが、そこら中あちこちの水草に付着しているような場合には、やむにやまれませんが全ての水草を撤去し1からやり直した方が賢明であると思います。
本来であればその様な状態になるまでに何らかの手を打っておくべきなのです。
水換えの頻度を上げたり、いろいろな要因を全てチェックしたり、または、水草に付いたひげコケをこまめに葉っぱごとカットしてやったりというメンテナンスをしていなくてはいけなかったのです。
要するに観察不足であった、と言うことになるでしょうか。
ひげコケは「ガン」と一緒で早期発見であれば、まず100%、全ての水草をダメにしてしまうような結果は招きません。
そのためには水草をよく観察してやること、必ず定期的な水換えや水槽セット初期における対処をさぼることなく行うこと、その様な対処しなくても良いような底床のセット、及び管理をしてやらなくてはならないのです。
最後に予防についてですが、水槽セット初期から3倍程度に薄めた木酢液を水換え毎に100リットルに対して10〜15シーシー程度添加しておくと不安定な時期でもひげコケの発生を抑えることが出来ます。
木酢液には殺菌効果がありますので過剰な添加は禁物ですが、少しの添加でコケの発生を抑制でき、病気の予防にもなるようですのでお勧めできます。
尚、木酢液にも色々な品質の物がありますので詳しくは木酢液の使い方いろいろを参照して下さい。
ひげコケに対する対応のポイントは「可能な限りその胞子を水槽内に残さない」と言うことです。
安定した理想的な環境(そのケースにマッチした)の水槽では、一部分にこのようなコケが現れてもなかなか勢力を広げあちこちに伝染していくことはありませんが、往々にして富栄養化が原因で発生していた場合は、気づいたときにはあちこちで発生している可能性が高いと言えます。
このような場合には1度徹底的に水槽内から除去する作業が必要です。
水槽内から、その元凶を出来る限り、人の手で撤去してやると言うことです。
疑わしき部分も含めほとんどの葉をカットしなくてはならなくても思い切って行わなければいけません。
もったいなくとも水草は生長し新芽を展開します。
その様になればいつでも思い描くレイアウトを完成させることが出来るのです。
今育成している水草が大切なものであり容易に買い直したり出来ないものであれば、一度その様な対処を施して復活することを期待する他ありません。
長期戦を覚悟し環境を改善し水質の安定がかなえば水草を守り抜くことが出来るかも知れませんね。
ここでひとつ忠告です。「コケが全く付かなくなることはない」と思って下さい。水中である限り何らかのコケは必ず付きます。
ひげコケにしてもそうです。ぽつぽつ付く程度でしたら水換えの時に一緒にカットするなどして、それをメンテナンスであると考えて下さい。
一切付かないようにしようとすると水槽が崩壊してしまうこともありますし、現実的には不可能に思えます。
勘違いしてはいけないのは木酢液を添加したから、それを使用すれば、だけでひげコケをなくすことが出来るのでは決してありません。
定期的な水換えを施しているのであれば重要なのはその水景に関わる全ての要因のバランスです。
バランスがうまく取れている水槽ではほとんどコケの発生は見られません。
しかしながらこのバランスを見極めるのが本当に難しく、経験がなによりものデータとなります。
失敗は成功の元です。色々なことを経験する事がさらなるステップアップを約束するものであります。