複合底床技

ここでご紹介する底床の作り方は邪道と言われれば邪道であるし、賢いと言われれば賢い作り方と言えるでしょう。
「複合底床技」とは色々な底砂の利点を最大限に活用するために、植栽する水草に合わせて部分的に使い分けたり、違う種類の底砂を層状や前後に分けてセッティングしたりする手法です。
 
ただし、大前提としてベースとなる底床ベースがあってのお話だと理解して下さい。
底床ベースの必要性や重要性、その利点などは「底床ベースのすすめ」で解説していますのでご覧頂いていない場合は是非ご一読下さい。
 
前置きとしてお断りしておきますが、数種の底砂を使用して底床を作成する、と言うことだけを考えれば、底床ベースが無くてもいくらでも作成できます。
あくまで”大前提としての底床ベース”と言うのは私の私的な考えであって、これが一般的なことではなく、ましてやプロやベテランがお勧めする手法ではありません。 単に私の私的な考え方での大前提です。
 
現在では様々な底砂が色々なアクアメーカーから発売されています。
ベテランの方の中には園芸用の土や砂を転用されたり、自ら自然の河原や田砂を採取されたりして使用されている方もいらっしゃるようです。
様々な底砂はそれぞれに長所と短所を持っており、水草の種によっては適切でない場合や育成に違いの出る場合もあります。
 
例えば、根張りの良いエキノやクリプトは通水性の良い底砂が好ましいが前景にはグロッソスティグマを密生させたい、等というレイアウトや、後景に有茎草を密生させて前景は真っ白な砂でリシアをアクセントにレイアウトしたい、等というわがままな構図を実現するためにはおのずと2種類の底砂を使用しなくてはいけません。
また、メンテナンスや寿命を考えて大磯砂やセラミックの底砂をメインに使用したいが水景としては南米産の水草でレイアウトしたい、または、若干ソイルの特性を利用して水質を弱酸性の軟水にしたい、等という場合にも元水を作成すること無しに実現するには違う種類の底砂を併用することで可能になります。
さらに、若干の補給やリセットでいくつものレイアウトを楽しみたいような場合には、底床ベースの上にセラミック系の底砂や大磯砂などを敷き、さらにその上、最上部にソイル系の底砂や砂系の底砂を使用しソイルの粒がつぶれてきたり砂が汚くなってしまったり硬化してきたりすればその部分だけをリセットする、敷き変えるというような手法も可能となってきます。
水景に自然観を出したいので底床の表面だけソイルを敷く、前面だけパウダータイプのソイルを使用する、なんて言う事例はよくあることです。
 
このような考え方で様々な仕様の底床を作成することが可能になり、場合によっては一部分だけを違う底砂にすることだって可能になります。
この水草をこの部分に植栽したいけど底砂はソイルの方が育成が楽だから・・・・というような場合にもその水草を植栽するあたりだけソイルを使用することも可能なのです。
メインの底砂と出来る限り混ざって欲しくないようなときには某らのものでしきりをしたり、小さな植木鉢ごと底床に埋め込んだり、石や流木などのレイアウト素材を上手に利用したりと工夫次第でいくらでも可能になります。
ただし、アクリル板などで仕切ってしまうと底床内の通水性が無くなってしまいますので、底床内の通水性が損なわれないように幾分工夫する必要があります。
 
しかし、このような複合底床技を採用するには様々な底砂の特徴(長所・短所)を熟知している必要があり、ましてや植栽しようとする水草との相性や作成しようとするレイアウトとのマッチィングなどを全て把握していなくては出来ないことは明白です。
さらに、いくつかのレイアウトを順を追って作成しようとするような場合には、明確にそのレイアウトや仕様が決まっており、順序が逆にならないようなしっかりとした構想と予定が決定していなくては、節約するつもりが逆にコストを上げてしまうような結果になることもあります。
 
このようにいったん作成した水景から別の水景に作り直すことを「リメイクする」いますが、リメイクを上手に出来るようになれば購入した底砂を最大限活用できることになり、寿命が比較的短いソイル系の底砂でもその部分だけを新しくしてやったり、補給することによって全てをリセットせずに、また新しい水景を作成することが出来るようになるのです。
これも私的にはベースとなる良好な底床ベースがあっての事だと考えますが、このような手法を採用したとしてもそれには限界があり、おのずとリメイクにも限度があることは忘れてはいけません。
同じ底床で何年も何十年もリセットせずに使用し続けたい場合は、大磯砂のような自然採取ものの底砂やセラミック系の底砂での単一底床で作成しなくては不可能です。
それでも定期的な底砂の掃除や1年に一度ぐらいは大規模な掃除が必要です。
 
以上のような複合底床技は初心者の方にはお勧めできませんが、レイアウトを変更するたびに全てをリセットしている方々や底砂を購入するたびにえらく出費がかさむと嘆いている方々には是非一度おためし頂きたい手法です。