[水質]

水草水槽なんですから、ベアタンクでは植えられません。必ず床が必要になってきます。
どんな床にするかによって水槽内の水質は、特にセッティング当初に大きく変化するようです。
また、どのような底床を選ぶかによって、それからの基本的な水質も決まってくるように思います。
私とて市販されているすべての床を使用した経験はありません。
実際に使用したことがない物もありますが、ある程度の情報として記述させて頂きます。
何かの参考になれば幸いです。

5.底床における水質の変化(天然採取砂系)

大磯砂(海産砂・南国砂・フィリッピン砂・アクアグラベル)

水草水槽のみならず、アクアリウムにおける床としては、代表的な物です。
ADAから近年発売されたアクアグラベルも同じ種類の底砂です。
昔はこれしかなかったなんて仰る方もいるぐらい、ポピュラーな床といえるでしょう。
昔は国産の物しかなかったようですが、現在ではいろいろな産地の物があり、その品質にも大きな開きがあるようです。
価格が安い物の多くはゴミや不純物が多く含まれ、よほど念入りに洗浄するなどの前処理をしなくてはいけません。
一番やっかいなのは採取地が海辺であるが故に貝殻のかけらや粉などが多く含まれ、そのままアクアリウムに使用すると貝殻のカルシウム分が溶けだして水質をアルカリに傾けたり硬度を上げてしまったりするという結果を招くことです。
良質の物は粒もそろっていて、厄介な物もほとんど含まれていません。(6分や8分と言った粒の大きさの違いがあります)
中には、塩酸等で酸処理をしてカルシウム分を前もって溶かし出してある物もあります。
そう言ったものは比較的高い価格で販売されていますが、後々のことを考えると、それでも安価な部類に入るのではないでしょうか。
この大磯砂という底砂は何度でも再利用が出来ます。一生使えると言っていいでしょう。
使い込めば使い込むほど水質に影響を与えることはなく安定した水質の維持を可能にする事が出来ます。
そのような大磯砂はアクアリストの宝である、と仰る方もいるぐらいで、物理濾過の濾材としても使用されているようです。
 
床としては通水性もよく維持管理面においても水換え時に床内にたまったゴミなどを市販のプロホース等を使用して容易に吸い取りながら掃除する事ができます。
反面、このようなことを知らずに安価なものを使用した場合や、初めて使うような時には幾分カルシウム分のとけ出しがあって弱酸性の超軟水という水質に落ち着くことが出来ずに、その様な水質を好む水草が上手に生育させられない、と言うことがしばしばあるようです。
初めて水草主体の水槽にチャレンジする場合や、難易度の高い水草の育成にトライする場合や、あまり色々なことを気にせずに楽しみたい方や、その色が暗く感じていやだと思う方には合わないかもしれませんが、一番のお勧めは?と聞かれたら、先ず返ってくる答えの1つではないでしょうか。
ただし、水草の生育に関してはどうしてもうまく行かない水草の種類や生育がかなり遅くなってしまう場合もあります。
育成のしやすさだけを考えればベストな底床とは言えないかも知れません。
 
また、この底床を水草水槽に使用するためには、水草が必要とする肥料分を別途底床内に施肥しなくてはいけません。
植栽する水草によって必要量などが違ってきますので、先ず持って水草のことを知らなくては成らなくなります。
肥料分はその量を間違えますとすぐにコケの大発生に結びつくことが多々あります。
また、この肥料分もバクテリアに分解されて初めて水草の栄養素となるわけで、そのタイムロスとレスポンスの悪さは理解する必要があり、自由な使い方が出来る反面、いろいろな知識と経験が必要になってくる底床と言えると思います。

<天然アクアシステム川砂・山砂>

Jaqno社から発売されている天然の砂です。流通量が少ないせいか、かなり割高感があります。
最近ではADA社からもブライトサンドと言う名称で同じ様な製品が発売されました。
水質にはほとんど影響を与えませんので(初めて使用する場合などで若干のカルシウム分を含んでいる物もあるようです。天然採取物ですので採取された場所や地層によって品質は異なってきます。粗悪な大磯砂のように大量のカルシウム分を含んでいる可能性は低く時間の経過と共に水質には全く影響しない底砂となりますがセッティング当初に若干ペーハーを上昇させてしまう場合があります)、密かなファンも多いようですが、砂であるため比重が軽く植え込み時や差し戻しのトリミング時にはどうしても舞い上がってしまうようです。
厄介なのは細かい砂が濾過槽にまで入り込んでしまうと、結果として濾材の目詰まりやポンプのインペラ(部品)などを痛めてしまうおそれがあります。
砂が舞い上がりそうなときにはあらかじめ濾過器を止めておくなどの防止策を講じなくてはいけません。
また、底床の掃除もほとんど出来ません。ゴミを吸い出そうとすると、砂も一緒に吸い込んでしまいます。
水草の生育には問題はなく、植え込み時や引き抜くときにも水草を痛めてしまうことはありません。
ショップによっては一番のお勧め、なんて仰るところもあるようです。
しかしながら、熱帯雨林を彷彿させるような雰囲気を出すことが出来無いのは致し方ありません。(用途が違うと言われればそれまでですが・・・)

また、この系統の底砂は色が白っぽい物や石英が多く含まれている物もあるので照明を反射し水槽内をかなり明るくします。
このため、明るい環境を好まない生体には不向きですし、大量の排出物を出してしまう生体にも適しません。(見た目が悪くなる)
逆に有茎草などは光が当たらなくなって枯れてしまう底床付近の葉にも底床から反射する照明の光が届くこととなり、その草体を維持するには適しています。
高光量を必要とする種類の水草を用いてレイアウトするのであればその利点を最大限に利用でき明るくきらびやかな水景を醸し出してくれることとなるでしょう。
ただし、この底砂がコケまみれなどになってしまうと見るにも忍びない悲惨な状態となってしまいます。
このようになってしまった場合などは、思い切って汚れてしまった部分を細目のチューブを利用して全て吸い出してしまい、新しい物を再度敷き直すしかありません。
コップなどに新しい砂を入れて静かに底床付近に持っていき静かに敷き直します。