[水換えの真意]

31.足し算引き算

水槽環境というものは足し算はたやすくできますが、引き算やわり算は思うように出来ません。
なぜ貧栄養状態の水質が良いのかは、水草水槽を楽しむ上では誰でもが経験するコケの発生を最小限度に抑えられるからです。
1日に水草が消費する栄養素さえあれば、そしてその量を毎日照明点灯時間に添加していたら、おそらく水草は良く生育しコケはほとんどでない水槽になるでしょう。
ただし、水槽セット初期に出てくるような茶色いコケや長期にわたり安定している水槽に出没してくる原因のはっきりしない、らん藻やひげコケなどは例外です。
しかし、その様な管理はプロでもなかなか出来るものではなく、ましてや趣味として楽しもうとしている我々に出来るはずもないのです。
(おっと、一日中、と言うよりも毎日水槽のそばにいて水槽のことだけを考えていられる方には可能ですね・・・)
ですから我々は、水草の生育は目指しますがそれを販売したり品評会に出すわけでもありませんから、そこそこの状態で育成、生長してくれれば良し、とすべきではないでしょうか?結果的には自分が楽しめれば、納得できればいいのですから・・・。
立派な草体を作ることよりも(結果的にそうなればそれにこしたことはないでしょうが)コケの大発生に悩まされないような水景を見て、楽しむ方がよっぽど気が楽で、楽しく、容易に出来るもののように思います。
 
私は液体栄養素たるものはほとんど添加しません。それでもちゃんと生長しています。
プロの方でもCOの添加無し、肥料の使用無し、と言う条件で水草を販売しているところもあります。 (それが良いとは言えませんが・・)
水草の多くはアマゾンや東南アジアで採取される、いわば雑草の種類であると聞きます。
もともと、十二分な栄養素を与えられなくとも生育する種類がいっぱいあると言うことになるのでしょうか。
そりぁー、そんな水草に十分な栄養素を与え最高の環境で育成したならば、自然には存在しないような巨大な草体になったり、とても綺麗な色になったりします。
その様なことを目指しているならばそれで良いのですが、そうでないのであれば液体栄養素の添加を日課とする必要は全くないと思います。
 
しかしながら、水草の生育に支障が出るような、例えば頂芽が白化してくるような状況、赤い色が出てこなくなっている状況であれば、それは確実に栄養素不足ですから対処が必要になってきます。このような状態においては液体栄養素の使用は重要なものです。
ですから、液体栄養素は不必要である、と言うわけではなく、「必要なときに使用するものである」、と言うのが私の見解です。
しかし、このような判断は初心者の方には出来るはずもなく、経験を積んで行くほか無いわけですが、すくなくとも、どのような成分で構成されているか分からない液体栄養素を、毎日、説明書きにあるように、なんリットルに対してどのくらい、という添加方法では必ずコケに悩まされることとなります。
定期的な水換えをしているのであれば何か問題があると思われた時点で、水換え時に少量添加して様子を見てみるぐらいの使い方が望ましいと思います。結果や効果を焦ってはいけません。
大量に添加してしまったものを取り出すことは不可能です。
また、それに気づいたときにはコケがたくさん出ているものです・・・・・・。
 
横道にそれますが、水槽セット時に底床の最下部などに肥料分をセットしてから本来の底床をセットすることを手本としている方法論がありますが、その方法論には何センチの水槽には何リットルの肥料分、と言うような表記や説明が成されていました。
これにははっきり言って驚きです。
これから水槽をセットしようとしている方が、どのような水草をどの程度植栽するのかが全て分かっているというのでしょうか?
そんなことは不可能です。
底床に埋め込む肥料分というのは根からの栄養素の吸収が盛んな水草にしか有効ではありません。
流木とリシアやウィローモスだけの水景にはほぼ、無用の長物です。(幾分水中にしみ出す肥料分は多いに役立つでしょうが・・・)
しかも水草はその肥料分の形のままでは吸収することは出来ず、底床内に発生し繁殖するバクテリアによって、分解された形のものしか吸収できません。
大量にセットされた肥料分が、有効に利用されるような水草の植栽と、それを分解してくれるバクテリアの発生とのバランスが取れていない限り、底床よりしみ出た肥料分は間違いなく水槽水を富栄養化します。
言い方を変えれば、その方法論が指し示すやり方では作れる水景が限られてくる、と言うことになります。
また、そのためにバクテリアの発生を促す「バクテリアの元」のようなものも添加するそうですが、マイナス面がなくなるものでは決してありません。ただし、底床内部に使用したバクテリア関係の製品は適切なものであるならば、間違いなく底床を長期にわたり良好な状態としてくれるようです。また、セット初期の不安定な状況も比較的短くてすみ、水槽の立ち上がりを早める効果はあるようです。
また、その方法論には、ただ単に肥料分としての役割だけではなく、底床部分の通水性やしまりを緩和する役目やその他の効果もあるようですが、それならば、肥料分の少ないものとして使用する方が、そのリスクはより軽いものとなるように思います。
 
ベテランの方になれば作成しようとする水景をイメージして、必要と思われる肥料分だけをセットしたり、その後のメンテナンスにおいてリスクを回避することは出来ますが、初心者やその方法論を初めて試してみるような方には分かるはずもありません。
事実、ベテランの方の中には、それがあるから順調に水草が生育するのだ、と仰られる方もいらっしゃいますが、それはその通りで反論は致しません。
しかし、製品の説明書きや使用方法として、1つの目安だけを提示するのでは失敗も多く起こるはずです。
ぜひにとも、その方法論に、いろいろな使用例として、作成する水景に合わせた適量を、出来る限りリスクの少ないものとして、指し示して頂きたいものです。
特に最下部にセットしたものやそこから出てきたもの(水草の差し戻しやメンテナンス時には特に弊害が考えられます)は減らしようがないのですから。
 
このように水草水槽において、付け加えることはいつでも出来てたやすいが、差し引くことや減らすことは容易ではない、と言うことが分かって頂けたと思います。
底床に関する場合でも、セットした後から必要だと思われる肥料分を付け加えることはたやすいですが、引き抜くことは実質無理があります。
より、リスクが少なく安全な方法を選択するのであれば、付け加えることだけを考える方法論の方が良いように思うのですが・・・・・。