[水質]

1.水について

<水を知る>

「水草水槽」=アクアリウムを楽しむ上で、水は無くては成らない物です。当たり前のことです・・・。
当然、「水」についての基礎知識がないとうまく行かない事が起こったり、運良く何事もなく続けられていたとしても、万が一異変が起きたときに対処できないばかりでなく、市販されている色々な添加剤や薬品を買いに走ってしまうような、アクアリウムにおける「ブラックホール」へと落ちて行くこととなります。
別に専門的により深い知識は必要ないと思いますが、ある程度の知識はあってよけいなものとは思えません。  

<水を知る上での指標>

水質を考える上である程度の化学の知識が必要になります。
みなさんもよくご存じの、ペーハー(pH)や、総(全)硬度、残留塩素濃度、アンモニア濃度、亜硝酸濃度、硝酸濃度、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度などという指標があります。水質測定試薬として販売されていますよね。

<ペーハー (pH)>

ペーハーとは水中に含まれている水素イオンと水酸イオンの割合を数字で表した物です。
水素イオンと水酸イオンの総数は決まっていて「14」と言う数になります。
ペーハー「7」=中性と言われるのは双方の数が「7」と「7」になることからそう呼ばれます。
よって、この均衡が崩れてどちらかが多くなった場合に酸性やアルカリに傾くと言います。
水素イオンが多くなり水酸イオンが少なくなったものを酸性と呼び、その逆がアルカリ性となります。
ようするに水質が酸性かアルカリ性かを示すものです。
<総(全)硬度(GH or TH)>
総硬度も全硬度も同じ意味です。
これは水の中に溶けているカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)の総量を表します。
カルシウムとマグネシウムの含有量が多い水を硬水と呼び、少ないものを軟水と呼びます。
単位にはドイツ硬度(dH)とアメリカ硬度(ppm)の二つがあります。日本の水道水の基準にはCaCO換算濃度が使用されています。1dH=17.8ppm (CaCO換算濃度1mg/l=0.056dHです。)
 
紛らわしい表記にKH(炭酸塩硬度)と言うものがありますが、これは総硬度の内の炭酸塩が溶解して生じた炭酸水素イオン濃度のことを意味しています。一般的な測定方法からも分かるように、その炭酸水素イオンの濃度を測定し、この値から逆算して炭酸塩硬度を推定しているのです。要するに硬度ではなくアルカリ度を測定していることとなります。
よって、KH=炭酸水素イオン濃度というのが正しい認識であり、硬度というのは間違った解釈です。
水槽内では濾過槽内の硝化バクテリアによって水素イオンが放出され、これによって炭酸水素イオンは中和されて炭酸ガスとなり水槽内に戻ります。日々、KHを測定しているとその値が段々下がってきます。と言うことはペーハーは酸性に傾くこととなり、水槽内においてペーハーの変動を知る上では非常に役に立ちますが、硬度の意味する、水の中に溶けているカルシウム(イオン)及び、マグネシウム(イオン)の総量とは全く持って関係のないことです。従いましてKHとは、炭酸塩硬度と呼ばれているが硬度とは全く関係のないものであり、炭酸水素イオン濃度を測定し水のアルカリ度を知る上で役立つものであって、ペーハーの変動を知るためには有意義である。と言うことになります。 それだったら、ペーハーを測定すればいいですよね・・・・。
<残留塩素濃度>
塩素は人間が安全に飲み水として使用できるように水道水を殺菌消毒する目的で管轄地域の浄水場で添加されるものです。
当然、家の水道の蛇口から出てくる水には国で定められた割合以上の残留塩素が無くては成りません。
しかしその残留している割合はその地域の源水によるものが大きく、地域や季節によって違うものです。
人間には問題ない濃度であっても小魚や細菌にとっては死に至らしめる濃度になる場合もあります。
また、水草にも悪影響を及ぼします。
アクアリウムにおいて、塩素を中和して使用するのは大前提となっています。
除去は簡単でバケツに一日汲み置けば、塩素はほぼ無くなるそうです。
また、市販の塩素中和剤によって処理されることが一般的のようですが、ほとんどの方が中和剤を添加しすぎているようです。 

<日本の水を知り我が家の水を知る。>

日本の水道水には国で決められた様々な基準があります。
ペーハーは5.8〜8.6、(あまり酸性に傾くと赤水になったりします。 また、季節によっても変動します。ちなみにアメリカの基準は7〜10.6だそうです。)残留塩素量は0.1mg/l以上、総硬度は300mg/l(16.8dH)以下と定められています。
調査によれば、日本の河川に含まれるカルシウムイオンの平均は8.8mg/lで、(ヨーロッパ31.1 南米7.2 世界平均13.3)マグネシウムイオンの平均は1.9mg/l(ヨーロッパ5.6 南米1.5 世界平均3.1)だそうです。
よって、日本の河川の総硬度の平均は炭酸カルシウム(CaCO)換算濃度で30mg/lとなり、ヨーロッパに比べおおよそ1/3、世界平均に比べてもかなり低く、アマゾン流域の低硬度に近い軟水であると言うことになります。 (新版・水の科学参照)
 
国が示す基準で判断すれば実際の状態よりも10倍もの数値となり大きなまちがいを起こしかねません。
ですから水草水槽を楽しむ上で日本の平均的な水であれば、総硬度についてあまり神経質になる必要はないようです。
(ただし、井戸水を主として使用されている場合などはこれに当てはまりません。)
参考までに、大阪のペーハー平均は7.5、残留塩素は0.7mg/l、総硬度が炭酸カルシウム(CaCO)換算濃度で44mg/lだそうです。
私の家の水道水の検査結果はペーハーが7,残留塩素が1mg/l、総硬度が3dH(CaCO換算濃度54mg/l)でした。
地元の水道局へ問い合わせすると教えて頂けるそうですが、それよりも実際に自分の手で測定することをお勧めいたします。
(炭酸カルシウム換算方はhttp://www.adguard.co.jp/Discus/science0.htmlディスカスサイエンス 水質管理の基礎科学大綱 [4]を参照して下さい。)

以上のようなことはあくまで参考にして、まずは、我が家の蛇口から出てくる水を調べる必要があります。
ペーハー(pH)、総(全)硬度、残留塩素濃度、この3つは調べておいた方がいいでしょう。
また、残留塩素濃度は季節によって変動しますから定期的に測定してデータとして持っておくことは賢明なことであると思います。
ペーハー(pH)、総(全)硬度は水槽内の水質をチェックしたついでの時にでも計るようにして、変化がないかを定期的にチェックする程度で良いかと思います。年間を通してほとんど変化がなければその後は測定することも必要ないでしょう。
これらは一度データーが取れればその後はそんなに測定しなくては成らないものではありません。始めだけ必要だと思って下さい。