あとがき

今回の「アクアな基礎知識 Ver.2」は、水草水槽をメインに考えていますので、言うなれば、「あげいん流の水草水槽における基礎知識」とした方が適切であったかも知れません。
一口にアクアと言っても何をメインと考えるかでその基礎知識は違ってくることもあるかと思います。
 
「私の趣味はスポーツです。」と言う答えは「なるほど・・・」と理解できますが、「スポーツでも色々あるけど何をしているのかな?テニスなんだろうかゴルフなんだろうか?」と言うことになります。
確かに体を動かすことや鍛えることを趣味として「私の趣味はスポーツです。」と答える方はいらっしゃるでしょう。
しかし、その後には必ず補足する意味で「運動することが好きなんです・・・」などと付け加えられるはずです。
そうでなければほとんどの方が、「私の趣味はテニスです」とか、「ゴルフです」と答えられるのではないでしようか。
 
アクアリウムにおいても同じ事が言えると思います。
一昔前までは「趣味は熱帯魚!」と答えるだけで、ほとんどの方は「そうですか・・・」と納得されていました。
今でも全くアクアリウムに縁のない方にとっては「趣味はアクアリウムです」と言われるよりも「熱帯魚」と言われる方がわかりやすいでしょう。
みなさんは「趣味は?」と尋ねられたらなんと答えられますか?
私は「水草水槽です」と答えます。分かってもらえるかどうかは分かりませんがその様に答えるようにしています。
しかし、これがお互いにアクアリウムを趣味としていて、まったく知らずに「趣味はなんですか?」と尋ね、「アクアリウムです」という答えが返ってきたらなんとリアクションしますか?
アクアリウムを知っている者であれば、「へぇー、私もそうなんです、で、何を?」となるのではないでしょうか?
そうですよね、アクアリウムにも色々あって、ディスカスの飼育なのかアピストなのか、はたまた、繁殖を目指していてブリーダーになろうとしているのか・・・。
水草水槽にも色々あって、クリプト趣味なのかレイアウト水槽なのか、水上栽培なのか・・・様々なことを知っているからです。
 
このようなことを考えるとアクアリウムというものはほとんど一般の人々には良く分からないもののようです。
それだけ認知されていない、限られた人しかやっていない、とてもフィールドの狭い世界のようですね。
そんな世界でも、何をメインとしてやっているのかがあるわけで、そりぁ、複数のカテゴリーをメインにやっておられる方もいらっしゃるとは思いますが、いろいろな意味でずいぶんと幅が広いものです。
当然、何がメインかでそのカテゴリーごとにおきまりの方法論や理論が存在するはずです。
要するに、それにまつわる「基礎知識」は少しずつ変化していくのが当然であると思っています。
ただ、基本的な水質に関することなどは、何に最も気を付けるかは少し違うところがあっても、共有する部分がほとんどだと思います。
また、濾過に関しては何をメインに考えるかでその濾材の組み合わせ方などは大きく違ってくる場合があり、それこそいろいろな方法論があり1つ1つ違ってきて当然となるでしょう。
底床などはそのさいたるもので、何をメインに考えるかでその有無、選択は多いに左右されることとなるはずです。
 
さらに同じカテゴリーの中でも考え方の違いで、今回私がページにしたような方法論や理論と違う考え方の方もいらっしゃるでしょう。
それはそれで、その方がそれを実践して成果を出されていたり成功なさっているのであれば、決してそれが間違いだとは言えません。
このように考えると、アクアリウムを趣味とする一人一人にその人の基礎知識があってもおかしくないかも知れないのです。
今回私は、自分が正しいと思う「アクアな基礎知識」を公に発表することによって、その正否を確かめたいという気持ちがありました。
もし、間違っているとか、私が実践している方法論や理論の方がよりすぐれている、と思われる方がいらっしゃれば、素直にそのご意見に耳を傾けご教授願いたいと思っています。
 
この「アクアな基礎知識」を公開してから、本当にたくさんの方のご訪問を頂きました。
また、多くの方が更新のたびに再訪問をして下さり、中にはプリントアウトをしてファイリングして下さっていると言うのも耳に致しました。
本当にありがたい限りですが、逆に大きなプレッシャーとなっていたのは事実です。
ベテランの方やひょっとしたらプロの方も見ているかも知れないと言うプレッシャーは相当なものでした。
また、よりつっこんだご質問などを頂戴したらどうしようか・・・などとも思いました。
もし、可能であるならば、今回の私のページをたたき台にして、私とは違う考え方や理論とぶつかり合い、さらに進歩していけば幸いかと思います。
 
アクアリウムにおける、基礎知識と言えど、実践と同じように正解が1つではありません。
複数の正解が存在します。
それは本文でも記述いたしましたが、「我が家の水槽」そのひとつひとつが微妙に違ってくるからです。
極端に言えば、一人の方が複数の水槽を管理していても、そのひとつひとつが微妙に違ってくると言うことになります。
同じ水道の蛇口から出てくる水を使用して水槽に使っていても、底床、濾材、濾過方法、植栽する水草、飼育する生体、設置場所、水槽の大きさ、メンテナンス方法など様々な要因が無数のパターンを作り出しその環境が決まってきます。
 
そうなってきますと、確かなものはある程度の知識と水槽の状態を見極める自分の目と勘だけが頼りと言うことになります。
平たく言えば、経験こそが何よりもの基礎知識であり、正解なのではないかと思います。
 
少し横道にそれすぎましたが、何事にも初心、初級、中級、上級とあるようにその経験年数や取り組んできたことがその知識と持論となります。
私が今回水質や濾過のことを「水草水槽というフィールド」で考えたことは、ひょっとしたら初級から中級への1つの門であるか、初心から初級への門であるようです。
このようなことはアクアリストの誰でもが、ある時期に考えることなのでしょう。
しかし、化学反応や化学式を使ってみてもそれだけでは全てが把握できるものでは決してありません。
ひょっとしたら何も分からないのかも知れません。
また、水質のことばかりに気を取られていてもいっこうにうまく行かないこともあります。
水質や濾過については、大切なことには違いありませんが、神経質に成りすぎては逆効果になる場合もあります。
どうしても私達は結果を急いでしまい、成功をすぐに手にしようとします。
私達人間でさえも環境が急速に変化すればなにがしらの問題や変化が現れるのと同じように、アクアリウムにおいても急激な変化はなにがしらの問題を引き起こすものと思います。
結果を焦らずに魚や水草になった気持ちで取り組むのが大切であるように思いました。
 
また、初心者の方やアクアリウムを始めたばかりの方々にとっては、このようなページを読んでしまったが為に、「なんと水草水槽というかアクアリウムとは難しいものなのか!」と感じられたかも知れません。
確かに私が作成したページを読めばその様な印象を与えたかも知れませんが、大切なことはこのようなことを理解し覚えることではなく、とりあえずやってみることだと思っています。
やり始めれば、自然と知識は身に付いていき、また何か問題が起こればそれを改善しようと思います。
そんなときに「そう言えばあんなページがあったな・・・」とか「何か今の問題を解決できる情報はないものか・・・」などと考えることが最も重要であると思います。
 
ここ数年でインターネットの世界も急速に進歩し、誰でもが環境さえあれば入ってくることが可能になってきました。
以前に比べると格段に優しく簡単に・・・・。
その様な方々の中から、また次々と新しい優れたホームページが生まれるでしよう。
アクアリウムを始めたばかりの方でも、すぐに有益な情報にふれられる環境であることは、この先多いに、この世界や業界を動かすこととなるはずです。
分からないことがあったり、困ったことになってしまったときには、誰に恥じることもなく、質問したり、教えを請うことが可能なのです。
その様な状況の中で、先に始めた私達は、それが例え1ヶ月早かっただけでも、同じ問題で同胞が困らないように、アクアリウムに嫌気がささないように、正しいアドバイスと理論、そして、優しい心を持っていなくては成らないと思います。
今の状況では10人に尋ねると10通りの答えが返ってくるかも知れません。
それではアドバイスされた方はどれを取って良いのかが分からなくなってしまいます。
そう言った意味でも、いろいろなカテゴリーがあるアクアリウムひとつひとつに、それぞれの「基礎知識」が確立することを願っています。
 
よく、「安易な気持ちで始めてもうまく行かないよ・・」などと、くぎを刺すようなことを言う経験者の方がいらっしゃいますが、アクアリストと呼ばれているほとんどの方は、子供が金魚すくいで金魚を持って帰ってきたから、などというたわいもないことが始まりであるものです。
要するにみんな安易な気持ちで始めているのです。
いろいろな雑誌で紹介されている芸術とも言われる水景は見るものの目を奪いある種の感動を与えます。
そして、私も、俺も、あんな水槽を持ちたい!と思うのです。
メンテナンスの煩わしさや維持していく上での基本的な理論などを考えているはずなどありません。
水槽セットを買ってきてそこに底床をひき水草や流木を使ってレイアウトし、お魚を入れるだけで出来るものと思うのです。
でも、それが普通であり当たり前だと思っています。
先ずは始めることが大切でレイアウトされた水草水槽や熱帯魚を見て感動することが何よりも一番です。
誰だって、はじめてから水質のことを知ったり濾過のことを知ったりと色々知識が身についていくのではないでしょうか。
 
そう言った意味からは今回の私が作成したページは初心者に対して水を差すようなことになるかも知れません。
しかし、始めたからには続けようとする、何とかしようとする方とそうでない方とはおのずと選別されて行くでしょう。
今回の私のページはそう言った、続けようとする、何とかしようとする方にとって少しでもお役に立てれば・・・と言う思いでの制作であったと言うことになります。
 
私は、水草水槽や熱帯魚に興味を持った方々が安易な気持ちで安価な水槽セットを購入され始められることに大いに賛成です。
始めてみないと分からないことや経験してみなければ分からないことは、あまりにもたくさんありますが、アクアリウムの中でお気に召したカテゴリーを見つけられてさらに発展していって下さることを願い、応援いたします。
私ごときではなんのお役にも立てませんが、この世界には達人と呼ばれるマニアの大先輩がたくさんいらっしゃいます。
どうか、プロ、アマを問わず豊富な経験や研究を元にした各カテゴリーにおける確立した基礎知識のとりまとめをお願いしたいものです。
 
文末になりましたが、水槽を持つ全ての方々のアクアライフがより素晴らしいものとなりますようにお祈り申しあげます。
 
 
執筆者 あげいん
 
☆アクアな基礎知識を制作するに当たって本当にたくさんの方のご協力を頂きました。この場を借りて厚く御礼申しあげます。