正平10年(南朝)3月『鰐淵寺大衆條々連署起請文』
Takaoka Nenchi Zenjoni's Letter#1 (1355)
一、可造立佛像修復古佛事、於新造藥師・千手及眷属
十六躰者、日光・月光・十二神、并婆蘇山功德天二躰也。
大檀那高岡禅尼念智、泰覺（佐々木泰清）彦孫高岡金吾師
宗母堂也。既被造立供養畢。所殘廿八部衆、但婆蘇
功德者、以前十六躰内也。并四天王像、可建立之、次古像
諸尊、并一切經以下聖教及佛具・曼荼羅供彿具
以下注文在別。道具注文在別。等隨破損可加修復也。
就中、釋迦・多寳塔、二如來者、天福以往古
像、脱度々火災霊佛也。而嘉暦廻禄、御身両雖存、
座光者共焼畢。而于今無沙汰、云冥慮、云見聞、誹謗
尤有憚忩可奉造加哉。
【解説】
正平10年(1355)3月、出雲鰐淵寺の佛像修復と藥師如來・千手
観音など新造立の大檀那・高岡念智禅定尼について、佐々木
泰清の彦孫(曾孫)である高岡金吾師宗の「母堂」すなわち
「母」であると記されてゐる。「金吾」は「左衛門少尉」の
唐名で、念智禅定尼は、高岡宗泰(法名覺念)の次女にあたり、
この時、72歳であつた。(母は意岐國造信貞の女)
文中にある「嘉暦廻禄」とは、父・高岡宗泰が鰐淵寺三重塔
(佐々木泰清の菩提を弔う為に建立されたもの)が、落雷の
失火により炎上したことを悲歎し、再建を発願した時の事を
表してゐる。この時、宗泰は72歳で「沙彌覺念」と称して
ゐたが同年に歿した。正平10年(1355)は、念智禅定尼が72歳
の年にあたり、父と祖父への慰霊の意味を込めて、鰐淵寺の
佛像修復を発願したと考えられてゐる。
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