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・すべり中の玉の転がり方向 (下記アプリケーションは表紙よりダウンロード可)
手玉がクッションに当たって跳ね返るとき玉は必ずすべっている。瞬時であるがカーブを描いていることが多い。手玉が的玉に当たったときはもっとわかり易く大きな曲線を描くことがある。
これまでの解析でこのすべっている間の詳細が把握できている。クッションから跳ね返る瞬間の回転軸の大きなステップ状変化、そしてこれとは対照的に玉に衝突したときには並進速度だけが変化するだけで回転状態は何も変わらない。これらを解析結果として知ることはできたがもう少し可視化できればと検討した。
軌跡と共に表示したのは玉が回転によって進もうとしている方向である。実際にすすんでいる方向(併進方向)とはほとんどの場合異なる。それを直線で表わしその長さはスリップの大きさを示している。ただし注意すべきは同じ回転速度の玉でも回転軸が立ってくると接地点におけるスリップ、線分長さが小さくなることである。スリップの方向を知るだけでも玉の状態のイメージはより具体的になる。
Fig.bb-1 Fig.bb-2
このアプリもスリークッション台の右半分を示している。そのためX方向の座標は4以上になる。また上クッションを便宜上ワンポイント下げている。各数値設定、Reset、Set、Startで軌跡を描く。Resetを抜くと一つの要素を変化させたときの軌跡を重ねて表示する。白赤角度は白玉(手玉)と赤玉(的玉)に数値を入れSetしたとき、ここに表示される角度は白玉から赤玉を見た角度である。この角度を進行角度に入れると白玉は赤玉に真正面衝突する。この数値を調整して赤玉に当てる厚みを決める。
Fig.bb-1は標準的なひねり(撞点)での跳ね返り。緑のすべり中から伸びる線分が転がり進み方向を示しその長さがスリップの大きさを示す。衝突前の転がりの方向は表示していないが当然黒の軌跡の延長線上に伸びる。跳ね返り直後に転がり方向は右方向水平近くの方向に転じている。そして段々と玉の進行方向に沿って行く。
上述のように線分の長さは接地点におけるスリップの大きさを示しており、玉の回転の大きさを表していない。回転軸が鉛直方向に立つほど接地点のスリップの大きさは小さくなる。これも表示できれば玉の情報をすべて見てとれることになるが煩雑になるので避けた。おおむね手玉の横(±90°)近くを撞いていると跳ね返り直後も回転軸は水平から大きな角度をなしており、この線分長さは小さくなる。
Fig.bb-2は手玉の左端を撞いている(実際には手玉がクッションに近過ぎるが)。この場合は方向の線分が少し短くなっている。実際はこの場合の方が玉の回転が大きい。軸はかなり立っているはず。
この他、撞点角度、初速度、進行角度を変えて走らせるといろんな場合のイメージが具体化できる。
Fig.bb-3 Fig.bb-4
Fig.bb-3は玉の左下を強く撞いた場合。大きなすべりが進行方向と同じ下方向に向いていて玉を加速していることが判る。このように下を撞いてすべり状態でクッションに当たっているときは跳ね返り後も手前側への回転が強く現れる。撞点を変えてみるとその方向の変化がわかる。
Fig.bb-4は玉の左を強く撞いた場合。かつ軌跡太さを小さくした。方向線分が軌跡と重なる場合はこの方がわかりやすい。
Fig.bb-5 Fig.bb-6
Fig.bb-5は的玉に当てる一般的なケース。的玉に衝突後、方向線分の向きは徐々に玉の進行方向に沿うように変化している。それと共に線分の長さは小さくなっていく。線分の方向に加速され軌跡は曲がっていく。
玉との衝突直後とクッションからの跳ね返り部と比べると衝突直後の線分の密度が高ク見える。衝突直後の併進速度がとくに小さいためである。このすべりが終わる頃の併進速度は跳ね返り時のそれと大きくは変わらない。跳ね返り時の線分密度が低く見えるのはその間の線分の方向の変化が大きいくばらけて見えるだけである。
Fig.bb-6は厚く当てて切り返した場合。跳ね返り後、線分が下を向いている。下方向に向かって回転しているのはちょっと予想が難しい。
Fig.bb-7 Fig.bb-8
Fig.bb-7はFig.bb-6の撞点を30°にしたもの。実戦でも時たま使う切り返しで難しい玉が取れることがある。左側に出すのに右側撞点を撞くので慣れが必要。なぜあのようにカーブするのかがよくわかる。右側を撞いているのに跳ね返り後は左に向かっての大きな回転があることがわかる。
Fig.bb-8は引き球の例である。大きなバックスピンがかかっており徐々に進行方向に沿っていく。このままで撞点を-160°にして描くと軌跡は全く同じものとなる。実態はスピンの方向が逆になっており回転軸の位置が変わっただけである。次のクッションに当ったときその出方に大きな違いが出る。
14-11-19 以上
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