a e (calc-simplify-extended
) [esimplify
] コマンドは、
a s に似ていますがそれに加えて、
いつでも「間違いない」とは言切れない規則群までも適用します。
これを使うのは、「式中の変数値群は規則群が成立つ制限範囲内にある」
ことが判っている時だけに限ってください。
文字式の積分は a e を使いますから、
その積分結果を利用するのは注意しなければなりません。
積分表ならしばしば "for positive a only (a は正に限る)"
といった条件が添えられるような局面で、
Calc は(他の積分ソフトもそんなものですが)無条件の答を出してしまいます。
a e による簡単化はリスクを伴うので、C-u -3 a v とタイプして 拡張簡単化の適用をトップレベルだけに制限し、 下位のサブ数式に影響しないようにすると良い場合があります。 C-u -3 j v は、任意のサブ数式にだけ拡張簡単化を効かせることができます。
変数 ExtSimpRules
は、
a e コマンドで適用する書替え規則群を格納しています。
この規則群は、EvalRules
と AlgSimpRules
に追加して適用されます。
(前述の a r AlgSimpRules ステップに加え、
単に引続いて a r ExtSimpRules ステップが実行されます。)
以下は、 a e によって実施される「リスクを伴う」簡単化規則の完全なリストです。
-*- ちょっとひといき -*-
三角関数を引数とする逆三角関数や、 ハイパボリック関数を引数とする逆ハイパボリック関数は、 a e によって簡単化されます。 例えば、arcsin(sin(x)) は x になります。 また、arcsin(cos(x)) と arccos(sin(x)) は、 両方とも pi/2 - x になります。 これらは x の値が特定の範囲内でなければ成立しないので不安全です。 その範囲外では、値は逆三角関数が通常返す360度の範囲に折りたたまれます。
べき乗のべき乗 (x^a)^b は、あらゆる a, b に対して x^(a b) に簡単化されます。 この結果が正しいのは x がある制限範囲内にあるときだけです。 例えば、 (x^2)^1:2 においてべき乗は相殺され x になりますが、 これが正しいのは x が正の時だけで、 負だったり複素数だったりすると正しくありません。
同様に、sqrt(x^a) や sqrt(x)^a は (リスクを伴いつつ) x^(a/2) に簡単化されます。
sqrt(1 - sin(x)^2) のような形式は、
例えば cos(x) に簡単化されます。
Calc はこの類の公式群を持っていて、
sin
, cos
, tan
, sinh
, cosh
を扱います。
平方根の引数は、くくり出せる項を探すために部分的に因数分解されます。 例えば、 sqrt(a^2 b^3 + a^3 b^2) は a b sqrt(a+b) に簡単化します。
ln(exp(x)), ln(e^x), log10(10^x) 等を x に簡単化するのも、 主値問題(代数 練習問題 1 解答「二乗と平方根」 参照 )のリスクがあります (しかし x が複素数ではなく実数と判っていれば安全です)。
等式の両辺に同じ係数が掛かっていれば、たとえゼロの可能性があっても相殺され、 a x = b x は a = b になります。 不等式の場合、このような因数は決して相殺されません。 a e と言えども、 a x < b x を a < b (x の正負によっては a > b) にするほど大胆ではありません。 a M / コマンドを使うと、 不等式の両辺の因数を割り算によって消すことができます。
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