キミの帰還 1
あまりに見晴らしの良い、ホドからの空を背景に。
それを最後にルークの姿を見ていない。
常に水音の響き渡る清水の都グランコクマ。その玉座の前では皇帝と一貴族がにらみ合っていた。
通常、いくら貴族でも国王に対してそんな無礼を働いていいわけがないが、この国の国王は堅苦しいことを嫌う風変わりな性分であったし、
貴族のほうは世界を崩落と破壊から救った面々の一員なので、側近の者たちも特にとがめず、またか。と放っている。
「だから、お前には正式にレプリカのホドを領地に与える。慎んで受け取れ」
「ですが陛下、俺にはルークを探す時間がいるんです。領地を治め始めたら時間が取れなくなる…。
今までの通り、他国や遠方の町への派遣をこなしながらの仕事で構いません」
「なあ、ガイラルディア。アクゼリュスが消滅してマルクトの力は落ちている。レプリカとはいえせっかくホドが戻ったんだ。
ちゃんと街として復興させてやりたいじゃないか、お前だって他の人間にホドを任せたくはないだろ?」
「ですが…」
色よい返事をしないガイに皇帝は一枚のビラをつまんで見せた。
「新しく作られたビラを見てみれば…ガルディオス家の伯爵夫人と跡取りの捜索願?
なんだこれは?いつルークが伯爵に嫁いだ……いい加減ちゃんとした令嬢でも娶ってホドで落ち着いてみたらどうだ?」
あながち間違っていることでもない。
不完全で不慣れな制御の超振動の影響で、旅の途中にルークの性別が女性に転じてしまった。
戻ることなく女性に固定されてしまった性別だが、それによって起こった多くの苦難を乗り越えてガイとルークは想いを交わし、後にルークが身篭っていることが発覚した。
どこかで無事でいるならば…。
その思いだけでガイはヴァン討伐後をルーク捜索に費やしてきた。
最初は旅の仲間達も手伝ってくれていたけれど、今ではその頻度は落ちている。
あとは細々と民の協力を募るしかない。
「俺は、ルークを探します。ああ、今度ケセドニア行きの用件があるそうですね。
俺もそれに同行させてもらいますよ。それまでの間はここのガルディオス邸に落ち着きますから」
「おい、ガイラルディア!話は終わってはいないぞ」
ガイは皇帝を無視したまま、謁見の間を退室し、即座に王宮を駆け抜けた。
始終座っているかブウサギの相手しかしない皇帝では追いつけはしない。
大変礼を欠いた行動ではあるがガイと皇帝の間柄ではさした問題になる行為でもなかった。
水上公園を抜けて噴水の前に出る。
美しい街だがガイはここにろくに落ち着いたためしがなかったなと苦笑した。
成人してからルークと旅の途中に来はしていたけれど、やらなければならないことに追われて長居はしなかった。
皇帝の下で働いていたけれど他国への使いが多くてガルディオス邸はろくに使わなかった。
平和な世界ではルークの手がかりを求めて二日と続けて居はしなかった。
ホドを領地に、悪くない話だ。二十四とまだ若いガイにあれだけ広大な土地を与えれば文句や非難も出るだろうに。
ありがたく頂戴します、と返事できればどんなに良かったろう。
でも今あの土地を受け取ることはできない。
受け取ったって意味がないだろう。
ルークが消えたあの地を見て感じて、ルーク見つけ出しにいきたいという衝動を抑えることはできない。
見上げると青い空をカモメが飛んでいく。白い雲によく合った鳥達だった。
彼らと言葉がかわせるなら、ルークの行方を真っ先に聞く。
ジェイドあたりそんな薬を作ることを試しそうだ。もちろん実験台一号は勘弁するが、そんなものはあのブウサギ好きの陛下に押し付ければいい。
ルークを探す算段をつらつら考えながら、ガイはろくに通ったことのない小さな路地を歩いていた。
王宮前の水上公園には遥かに及ばないが水路の通った素朴な公園がある。
まだお茶の時間を過ぎたばかり、勝手に退室した手前、国王の目に付くところには居られないから仕事に戻ることはできない。
かといってガルディオス邸に戻ってもすることはない。
屋敷の維持をする人間は皇帝を通して人任せで、ガイに馴染みのあるものがいない。
とりたてて屋敷の状態に文句を言うわけでもないから話すことはないし、気を使われることがわずらわしい。
ここで暇を潰すか、水路のヘリに腰掛けてガイは木陰の涼やかな風に身をゆだねた。
思考はどこまでもルーク捜索一直線のままに。
続き
---------------------------
書いちまったよ!
よりによって昨日ほぼ徹で書いちゃったよっ!
なのに妄想やまず今日は妄想に侵害されてて半分くらいやらなきゃいけないことできなかったよ!!
いまのとこ1の少し先までしか書いてないけど1UP。
ぼろが出て後々にどっか変えたくなって変えても言いません。
気づかないで下さい…。
2006/1/20
戻る