ルークの襟首を掴んで口元へ引き寄せる。
奪った唇はしっとりと柔らかかった。
「…ガイ…」
「好きな奴を信じればいい。お前は自由なんだからさ」
ガイはルークの首筋を辿りながら囁いた。
あんなにも背中で硬く結ばれていた手が解けてベッドの上に転がっている。
丁度いいから上着のボタンをはずして袖を抜いた。
今でもルークが寝ぼけている朝は着替えを手伝っている。脱がせるほうも、脱がされるほうも慣れたことだ。
あらわになった素肌を指先で撫でるのをルークは不思議そうな顔で見ていた。
「俺、何がなんだかわかんねぇよ」
いつも梳かしてる髪をそんな風に指に絡ませちゃってさ。
俺に梳かせって怒るのに、ガイが絡ませるのはどういうことだよ。とそっぽを向くルークの頭にガイは手を添える。
「お前が好きなんだよルーク。おおっと、ついに告白しちまった」
「お前は俺の友達なんだから、当たり前だろ」
このお坊ちゃんならこう言うのはわかってた、と深い息を吐いてガイはルークの手の甲に唇を当てた。
「好意を受けとってもらってありがたいよ。涙が出るわ、俺」
「だ、だから…それでどうしてこうなるんだよっ」
「どうか下僕めの戯れに付き合ってくださいませ、ご主人様」
「…ガイの頼みなら聞いてやっても、いいけどさ」
「何たる至福、光栄に預かります」
ふざけて大仰な言い方だが感謝の言葉に照れてルークは頭をかく。
「ちぇっ、変なガイ」
「これからもっと変にならなくちゃなんないんだけど」
小さな声で息をついてガイは肩をすくめた。
もう一度ルーク目掛けて覆いかぶさると深い口付けを与える。
その隙にこれまで以上に激しくルークの体を撫ぜる。
「……っは、ガ、ガイ!!なに…」
使用人をしていてもガイに触れられた記憶のないところに感触を感じて、ルークは体を上へずらした。
「そりゃお前。これが、ヴァンがお前に見せたかった夢さ」
「師匠は…、関係ないだろ…」
「大アリさ」
ガイは自分の腕が振りほどけるか、ルークに試させた。
四歳の差があるから通常でもガイの腕を振りほどくことはできなかっただろうけれど、今はその三分の一の力もない。
体にはさっぱり力が宿ってなかった。
「ヴァン謡将に眠らされてからこうなっちゃったんだろ」
「…………」
ガイのする数々に身を捩りながらもルークは沈黙を守る。思わずもれる声は別として。
「…痛てぇ…」
会話をやめて、嬌声を押し殺すようになって以来、ルークから出た言葉でまともに判別できたのはガイが繋がったときのこの言葉だった。
ガイはルークを労わるように抱きしめた。
どう言われても、ヴァンが役目を完璧に果たして指南に付いくよりずっとマシだ。
「ルーク…、ごめんな」
頬を上気させて、せわしく呼吸をして。
話しかけられることを想像していなかったのか、忘れていたのか。
閉じられたルークの瞳がうっすら開いた。
「何が」
「…今は、話せないけど…ヴァン謡将が、こんなことにお前を付き合わせたのは……俺のせいだからな」
「はっ…師匠は…関係、ねぇーって」
「……しかし…」
「ガイは…師匠が言ったから………なのか…?俺が…こうしてんのは…っ」
息を切らせて、言葉をつむぐことが困難な中、ルークはガイだけを見て告げる。
「ガイがっ………言ったから…だかんな…」
「……ルークっ…」
そうだな、俺はお前が誰より大切だったから。こうしたんだっけ。
掠れた声で囁いた言葉は届いたか。
憎いはずだった。けれど、今は誰よりも愛情を傾けた相手へ、ガイは一層深く沈んだ。
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暗転部分、初書き。
ぬるくしか書けないのに通常の倍以上に言葉選び苦労…。
書いてて恥ずかしかったよ!
なら書くな、ましてや晒すなって感じですが。
『誰も見ないし意味もないけど一人延々と妄想書き綴るの図』のほうが嫌なんで。私的には。
思うのは簡単だけど形にするのは大変だねーってことですか。
2006/1/6