全国紙は大阪の敵である
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毎日新聞 061111
発信箱 : 大阪に公園を=松井宏員

 景観デザイナーの○○○○○さんと、御堂筋のオープンテラスで
ワイングラスを傾けながらランチをご一緒した時、こんな話をされた。
「大阪に来た海外の有識者は口をそろえて、大阪が国際都市になるためには、
市民が散歩したり、くつろげる大きな公園をど真ん中に造るべきだと言うの」
 ビルの屋上緑化などを手がける○○さんは、海外に知己が多く、緑化の視点から語る都市づくりは興味深い。
 ちょっと調べてみると、ニューヨークのセントラルパークはなんと340万平方メートル、
ロンドンのハイド・パークは146万平方メートル。大阪の都心にある中之島公園、靱公園はともに約10万平方メートル程度。
市民1人あたりの公園面積は、政令指定都市で大阪市が最も狭い。
 東京は大名屋敷跡が公園になっている場合が多く、手入れが行き届いている。
対して大阪は、埋め立てなどで高くついた土地に公園なんてもったいない、と商業施設ができる−−。
 そう分析する○○さんが期待していたのが、JR大阪駅北地区(梅田北ヤード)だ。
24万平方メートルあり、パリのリュクサンブール公園とほぼ同じ大きさ。
一等地に公園というゆとりある発想の転換があれば、大阪の印象も一変したはずだが……。
結果は、オフィスビルや高層マンションなどの旧来型の再開発計画だ。
 問われているのは都市の格だろう。国際集客都市を標ぼうするからには、
世界から訪れる人に恥ずかしくない街でないと。
○○
さんは「大阪都心に大きな公園を造る機会は失われた」と嘆息するのだった。(社会部)

毎日新聞 20061111日 大阪朝刊

(引用終り)
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まず、最初に気付くことは、文章で「大阪の公園面積が狭い」ということを東京を比較例として語っているが、
それを裏付けるデータは、(政令指定都市に相当する)東京23区を除いた政令指令都市だけのデータしか出していない。

そこで調べてみると、やはり思ったとおり、「市民1人あたりの公園面積」が最も狭いのは、東京23区であった。
http://www.kids-100forest.jp/~anko/contents/morino_shiyakusyo/sakusen/kouen_1.htm




第二に、大阪の公園として出してきたのが、なぜ中之島公園と靱(うつぼ)公園なのか、ということである。

地図を見ていただければ分かるが、(黒線で囲んだエリアが大阪市の文化・ビジネス・商業の都心部)
中之島公園や靱公園の10倍の広さの大阪城公園が、都心部から1キロも離れていないところにあるのに、
なぜ大阪城公園を大阪市の公園として出さないのか。(107万平方メートル、セントラルパークの1/3弱、ハイドパークの2/3の広さ)

地図の赤丸が大阪府庁だから行政機関も考慮すれば、大阪城公園も都心と考えても決しておかしくはないのである。
しかも、、副都心とも言える大阪ビジネスパーク(OBP)は大阪城公園の北に位置しているのだ。





第三に、地図の赤いラインに注目していただきたい。

このエリアは大川という淀川の支流とその河川敷、及び大川の中州(中之島)の開かれたエリアである。
記事に出てきた中之島公園はこのエリアのごく一部に過ぎない。
地図の緑抜きの「中之島」という文字の右側の中洲部分だけが、中之島公園なのである。(拡大図

しかし、拡大図を見ると、赤いラインのエリアの
青い大川の水面部分、緑の河川敷、白い中之島部分を合わせれば、
その面積は、大阪城公園に匹敵するほどの広さだということを分かっていただけると思う。

つまり、大阪城公園と大川エリアを合わせると、大阪の都心部には、
セントラルパークの2/3弱、ハイドパークの1.3倍の開かれた空間が存在しているのだ。

あらためて、大阪城公園と大川エリアの広さを確認してください。
http://art2.photozou.jp/bin/photo/1784926/org.bin?m=1185334038


画像検索
大阪城
http://images.google.co.jp/images?q=%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%9F%8E&ndsp=20&svnum=10&hl=ja&lr=&start=0&sa=N
中之島公園
http://images.google.co.jp/images?svnum=10&hl=ja&lr=&q=%E4%B8%AD%E4%B9%8B%E5%B3%B6%E5%85%AC%E5%9C%92
桜ノ宮公園(地図の赤いラインのエリアの右半分、通り抜けで有名な造幣局の桜並木もこの中に)
http://images.google.co.jp/images?svnum=10&hl=ja&lr=&q=%E6%A1%9C%E3%83%8E%E5%AE%AE%E5%85%AC%E5%9C%92




第四に、記事はこれまでの大阪の再開発の緑化努力ををすべて無視している。
「大阪は、埋め立てなどで高くついた土地に公園なんてもったいない、と商業施設ができる−−。」

これも事実ではない。

舞洲緑地
http://www.maishima.co.jp/sansaku/ryokuchi/index.html
南港野鳥園
http://www.pluto.dti.ne.jp/~bird/sorakara3.html
http://www.sizenken.biodic.go.jp/wetland/266/266.html

特に南港野鳥園は開園25年を経て、日本に飛来したり、
日本を経由する渡り鳥にとってもなくてはならないものになっている。
【 大阪南港野鳥園が渡り鳥(シギ・チドリ類)にとって重要な湿地であることが国際的に認められた 】


民間企業の再開発。

1993
年に「新梅田シティ」は梅田スカイビルの下に「中自然の森」と「花野」という8000平方メートルの緑地帯を設けた。
http://www.skybldg.co.jp/use/floormap.html
その後、「新・里山」と改称。
https://c11plaf5.securesites.net/staff/0610-0612.html
>■ 2006
1019日(木) 積水ハウス(株)「新・里山」

これは当時はもちろん現在でも民間の再開発地の緑地帯としては非常に広い面積である。

10
年後の2003年に、「六本木ヒルズ」に設けられた「毛利庭園」の面積が4300平方メートルである。
http://www.roppongihills.com/jp/feature/018/i8cj8i0000016brm.html

これと比較しても、「新梅田シティ」の緑地帯の広さと先進性が現れている。

同じく2003年には、「なんばパークス」が完成した。
これは、「新梅田シティ」や「六本木ヒルズ」の緑化事業のさらに先を行くものである。

「なんばパークス」の緑化は、人工的な丘を作り、その表面を緑地帯に、その内部を商業施設にしたもので
再開発の経済効率と都市緑化の両立を目指したものである。
http://www.toho-leo.co.jp/nannba/f_nannba-top.html
http://www.bcs-kansaisibu.com/bunko/movie/02parks.wmv
 (約6分)

この「なんばパークス」の人工の丘の原型とも言える、大阪市の体育館がこちら。
http://www.jia.or.jp/member/award/environment/2000/osaka.htm
「体育館なんかは不要だ。公園だけを作れ」と言う人にはこれでも不満だろうが、
大阪の行政が都市緑化について無頓着だというのは、これを見ても言いがかりだと分かる。


こういう、これまでの再開発の緑化事業をすべて無視して、
大阪の再開発では都市緑化は一顧だにされなかったと言うのは、明らかに事実に反している。
再開発での都市緑化に尽力してきた企業に対しても、失礼であろう。




冒頭の毎日新聞の記事が、いかに悪意と曲解に満ちたものであるかを分かっていただけただろうか。

梅田北ヤードの再開発のあり方を批判するのもいいだろう。
大阪に公園が少ないのを嘆くのもいいだろう。

だからと言って、嘘をついたり、印象操作で事実ではない方向に誘導したりして、
大阪のすべてを否定して良いわけはないだろう。

いったい、何が目的で、誰に向かって、大阪の記事を書いているのか。



【関連】
全国紙は東京の新聞である

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