- 糖質
基本的には,少なくとも1つのカルボニル基と2つ以上の水酸基をもつ化合物.さらに,誘導体も含まれる.
グルコン酸( -onic acid), ウロン酸 ( -uronic acid), 糖アルコール(-itol), アミノ糖( -osamine) など
従来の炭水化物 (Cm(H2O)n)よりも範囲が広くなっている.
最も多く存在する有機化合物
働き
- エネルギー貯蔵,エネルギー源 デンプン
- 生物の構造組織 木,かに
- 情報物質 DNA,細胞壁
- 生理活性物質
糖の分類
- 単糖類
- オリゴ糖 単糖が2から10
- 多糖類
- 同一種の糖 ホモ糖類
- 異種の糖 ヘテロ糖類
- 単糖類
構造
アルドース アルデヒド基をもつ単糖をアルドース (aldose)
ケトース ケトン基をもつ単糖をケトース (ketose)

図 5.1 糖の基本構造
アルドース型はアルデヒドとしての反応性を示す.還元糖
ただし,アルドースとケトースは,条件によっては相互に異性化反応が可能
- アルデヒドとアルコールおよびケトンとアルコールの反応
アルデヒドとアルコールからヘミアセタール
ケトンとアルコールからヘミケタール

図 5.2 アルデヒドとアルコールからヘミアセタールの生成
直鎖の糖は,分子内ヘミアセタール化で環化する.
- 単糖類の示す反応
- アンスロン硫酸法
糖とアンスロンとの反応で発色する.620 nmでの吸光度を測定する.多糖類や糖タンパクとも反応する.

図 アンスロン (9(10)H-anthracenone)
- Fehling 反応
還元糖と酒石酸カリウムナトリウムで安定化したアルカリ性銅試薬(フェーリング液)との反応.赤色沈殿( Cu2O)を生じる
- ベルトラン法 Fehling 反応を利用した還元糖の定量分析法
フェーリング法では,還元反応により Cu(II) が Cu (I) に還元されている. 固体のCu (I)から,いったん硫酸第二鉄 Fe(III)を硫酸第一鉄Fe(II)に還元し,過マンガン酸カリウム溶液による酸化還元反応により定量分析をする
- Tollens 銀鏡反応
還元糖の還元反応による銀イオンの還元.鏡の製造に利用.
- 酵素法 β-グルコースのみを選択的に分析できる
グルコースオキシターゼ (GOD)で過酸化水素を生じ,パーオキシターゼPOD)により,フェノールと4-アミノアンチピリンを酸化縮合させ発色させる.分光光度計により505 nmの吸光度を測定する.
- 加熱してカラメル
- 濃硫酸で炭化
- 構造式
Fischer の投影式による糖の構造式
主鎖を垂直
水平方向の結合は,見る人に近づく
最も酸化された炭素を上にする
垂直方向は,見る人から遠くなる
結合軸を回転させて配置するので,実際の安定な配座ではない
環構造を表現するのに無理がある
Haworth 構造式
5員環6員環において酸素を上
環化したときの炭素の位置番号は,直鎖状の構造のときの位置番号を引き継いでいる.
立体配座(conformation)がわかりにくい
5員環 は,環を構成する原子が同一平面上に並ぶので,Haworth 構造式でも立体構造に近い
6員環 は,環を構成する原子がイス型構造になるので,Haworth 構造式は立体構造を示していない

図 5.3 グルコースのFischer の投影式とHaworth 構造式
直鎖構造から環構造への異性化は,C5を少し回転させてやると,環化したときの位置がわかりやすい.
C5 が環化に関与し,環化によりC1が新たに不斉炭素となり,α型とβ型が生じる.
C1のOH基が下向きに付いているいるのが,α型,横向きに付いているのが,β型
C1は,アノーマー (anomer)炭素と呼ばれる
- D-グルコース (6炭糖 hexose)
ギリシャ語ので甘いという意味からきた名前
6員環のピランと似ているのでグルコピラノースともいう
ピラノース と フラノース
脳細胞.赤血球などのエネルギー源
もっとも重要な糖.腸壁にはグルコースを認識するトランスポーターがある.
グルコース,フルクトース,ガラクトースが利用させる.膜輸送
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コンフォメーション構造式 |
ボールスティックモデル |
スペースフィリングモデル |
図 5.4 β-グルコース (glucose)の立体構造
β-グルコースの環についている水酸基は,環から横向きに付いており(エクアトリアル),水素原子は上下方向(アキシアル)に付いている.この構造が立体障害が少ない安定な構造である.
図 5.5 グルコース水溶液中の平衡1(6員環)
α型とβ型のグルコースは,水溶液中で相互に入れ替わる平衡になっている
図 5.5b グルコース水溶液中の平衡2 (グルコースは5員環構造も可能である)
- フルクトース (6炭糖 hexose)

図 5.6 フルクトース のα型とβ型
基本形は,5員環のケトース
果物に含まれる量が多いので,果糖といわれる
甘みは,スクロースの2倍.食品加工用につかわれる
グルコースより代謝が早い.
インスリンによるコントロールがない
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コンフォメーション構造式 |
ボールスティックモデル |
スペースフィリングモデル |
図 5.7 βフルクトース (fructose) の立体構造
グルコース,フルクトース,マンノースは,アルカリ性下でエンジオール(二重結合と2つのOH基)を介して異性化する.

図 5.8 グルコース,フルクトース,マンノースの異性化
食品工業では,酵素を使った異性化をしている.酵素を使うと,マンノースは含まれない.
グルコースイソメラーゼ
α- D-グルコース -------------> α- D-フルクトース
- ガラクトース
.
グルコースの エピマー(ジアステレオマーにおいて1つの炭素上の配置が異なる.)

図 5.9 ガラクトース (galactose)
ガラクトースのC1とグルコースC4が結合したのが,ラクトース
グルコースから酵素エピメラーゼによって変換
ガラクトース血症 ガラクトースの代謝に必要な酵素が欠損している人には,ガラクトースを含まない食事が必要となる
- マンノース
こんにゃく(マンノース)の成分,ココナッツの多糖体の構成成分,オレンジの皮,糖蜜などに単体でごく少量ある.
糖タンパクの構成糖

図 5.10 マンノース(mannnose)
- グルコースの酸化反応と還元反応

図 5.11 グルコースに対する弱い酸化反応 (銅イオンによる検出法)
グルコースからビタミンCを合成できる

図 5.12 グルコースに対する強い酸化反応

図 5.13 グルコースに対する還元反応 (水素と触媒による化学反応)
- 5単糖 pentose
キシロース タケノコ,木質部の多糖体構成成分
アラビノース 松,わらの多糖体構成成分,

図 5. キシロースとアラビノース
リボース RNA
デオキシリボース DNA

図 5. リボースと2-デオキシリボース
- 単糖の誘導体
ウロン酸
アルデヒド基から一番遠い水酸基がカルボキシル基(-COOH)になった糖
グルクロン酸 動植物の複合多糖体の構成成分
ガラクツロン酸 果実の皮,ペクチンの構成成分
アミノ糖
水酸基がアミノ基(-NH2)になった糖
グルコサミンは,キチンの成分.
デオキシ糖
フコース 配糖体,海草の成分

図 5.** フコース (ガラクトースのデオキシ糖)
D-体とL-体は,アノーマ炭素に関して区別され,それぞれα型とβ型が生じる.D-体とL-体では,α型とβ型の方向が入れ替わっている.
(あーそうですか)
配糖体(グリコシド)
糖と糖でない物質が,糖のアノーマー炭素を介して,結合した物質.
アノーマー炭素がブロックされるので非還元糖