かがくののおと 27
電気化学エネルギー
電気エネルギーは,電位差いくらのところを,電子がいくつ移動したか,である.この2つに分けて考える.
電位差 電子1個が移動するのに必要なエネルギー
電流 単位時間に移動した電子の数
エネルギー 電位差 x 電子の数 = 電位差 x 電流 x 時間
電子1個が1Vの区間を移動するのに必要なエネルギーは,1eV
1eV = 1.602 x 10 −19 J
電荷1Cが1Vの区間を移動するのに必要なエネルギーは,1J
1V = 1 J/C = 1 J/ As
ファラデーの法則 電子の数と物質量
電子1個の電荷量( q )は,1.602 x 10 −19 クーロンである.
1 mol 個の電子が流れときの,電荷量( q )は,
1.602 x 10 −19 x 6.02 x 10 23 = 96485 C (ファラデー定数 F)
電流は,単位時間あたりの電荷の移動量である.
積分すると,
q = I x t
電流 Iで,時間tだけ通電すると,流れた電子のモル数は,
電子のモル数 = I x t / 96485
酸化と還元の定義
単に酸化と言うと,酸素との反応,あるいは,燃焼反応をイメージするが,より一般的な定義がされている.酸化と還元は,電子のやりとりである.
酸化 電子が取られること.
還元 電子を与えること.
化学種の酸化程度の状態を示す指標として,酸化数がある.
標準還元電位
電位の絶対値は,残念ながら,わからない.そこで,電位の基準を都合のいいように決めてある.水素と水素イオン(活量1)が平衡にある電極について,0 Vと定義している.図27.1における左側の電極は,電位0V 電極ということにしよう.
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圧力は1気圧 M は,金属 M+ は,金属イオン,1 mol/L (活量 1) 左の電極としては,水素電極が定義されている. | ||
図 27.1 電池 酸化と還元が起きる |
図 27.1において,左側の電極を基準の電極とし,その電位を0にする.右の電極は,種々の金属などを選ぶことにする.金属イオンの濃度が1 mol/L (正しくは,活量 1)のときに,右の電極の電位を,電流が流れないようにして測る.この電位が,その金属Mについての,標準還元電位である.標準還元電位では,次の反応は,右にも左にも進まず,平衡状態になる.
M+ + e− <--> M
種々の金属(金属だけとは限らないが)について, 標準還元電位が調べられている.
反応のギブスの自由エネルギー −DG は,化学反応から引き出せる,最大の非膨張仕事,ここでは,電気化学的エネルギーを示している.
電位差 E のところを,電子n モル個が移動するのに必要なエネルギーは,
Energy = n F E
Δ G = − n F E 式27.5
この式は,ギブスの自由エネルギーと電位差との関係を示す,重要な式である.
ネルンストの式
標準還元電位は,1気圧でのとき,濃度が1 mol/L (正しくは,活量 1)のときにしめす,金属の平衡電位である.式27.5と化学ポテンシャルの式を組み合わせ,式27.5を代入すると,
式27.6 or
一般の電池のように,水素電極以外の電極と組み合わせた場合には,酸化側をOx,還元側をRedとして,
式27.7
この式を,ネルンストの式と呼ぶ.ネルンストの式の右辺の第1項は,標準還元電位の差であり,右辺の第2項は,濃度のエントロピー効果の補正項である.
25℃における,RT/Fは,
RT / n F = 8.315 x 298.15 / 96485 = 0.0257 (V)
ネルンストの式の第2項を,常用対数にすると,
式27.8
R = 8.3145, T = 298.15, F = 96485 をそれぞれ代入すると,
式27.9
この式の,対数の前にあらわれている定数,0.0591 は,覚える価値のある数値である.つまり,1価のイオンの濃度が1桁変わったとき,電位は,59.1 mV 変化することを示している.2価のイオンの場合なら,濃度が1桁変わったとき,電位は,29.55 mV 変化する.
第2項がエントロピーの補正項であるということは,イオンの種類に依存していないことを示している.後に述べるpHメータでも,pHの値が 1 変化すると,電位差は,59.1 mV 変化する.
電池
酸化還元型電池 亜鉛-銅電池
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図 27.1 亜鉛-銅 電池 酸化と還元が起きる |
溶液の濃度が1 mol/Lのときに示す電位は,標準還元電位の差である.
E0 = E0Cu - E0Zn
溶液の濃度を考慮に入れると,エントロピー項を加えた,ネンルンストの式で,
式27.11
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