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森川正彦(法則化中学太子サークル)
不登校生徒が授業に出てきた。いきなり参加したこの生徒を、他の生徒同様ハンディを感じさせないように授業に参加させる手立てはないか。「魔法のフロッピー」で解決しよう。
「名刺」を作成する実習は3時間かけて行った。
3時間目、作品を完成させ提出する日の授業に、最近授業を受けていないA君が突然やってきた。
A君は中学校入学当初からいろいろと手のかかる生徒であった。特に3年生になってからは、髪を染めたり服装違反や喫煙で注意されることが多くなった。最近では昼頃に学校に来ることも多くなり、ここ数時間、技術の授業は受けていなかった。
他の生徒は、自分のデータを開いて、続きの作業を行っている。
提出の方法を指示(前項参照)した後、その生徒に近づいていく。
パソコンの電源は入れているが、何をしたらいいのか分からず、ボーとしている。(当然だが)
ポケットからフロッピーを取り出しながら、その生徒に声をかける。
A君、これは「魔法のフロッピー」だよ。
といってパソコンのドライブにフロッピーを入れ、保存してあるファイルを開いた。
それには、名刺のレイアウトが保存してある。住所も「兵庫県龍野市…」までは入力してある。
自分の名前と住所の残りを入力し、背景の色を決めれば、ほぼ完成。他の生徒に追いついたことになる。
以前は、欠席して授業に参加してなかった生徒にも、みんながやってきたことを同じようにさせてきた。つまり、最初から(白紙の状態から)作業をさせていた。
たまたま、その日だけ休んでいた、いわゆる「できる生徒」なら、それでも、作業についてこれるかもしれない。
しかし、ずっと学校に来ていなかった生徒や、学習が遅れ気味の生徒、特にA君のような生徒には、この方法では次のような問題点がある。
(1)その生徒にかかわっている間、他の生徒がほったらかしになっている。
(2)説明だけを延々とすることになる。説明すればするほど、生徒は分かるようにならない。
(3)時間が無くなり、最後は教師がほとんど手を出してしまう。
(4)出来なかった生徒が出来るようにはならない。そのため生徒に成就感がない。
不登校指導の研修会で「中抜き指導」というものを教えていただいた。(中抜き指導法…不登校の生徒が再登校したときに、過去の復習はとりあえずおいておいて、現在やっている単元の学習についていけるように、学校がフォローしておくこと。)
向山型算数の指導にも「赤鉛筆指導」「九九表を渡しておく」という指導法がある。
A君には、ローマ字変換の一覧表を一緒に渡しておいた。
ゆっくりだが、黙々とキーボードに向かっている。
名前を打ち込んだ頃にまた近づいていき、今度は背景色の設定方法を教える。
机間巡視しながら、「色がきれいだね」「センスがいいね」などと個別に評価していく。
そのとき、A君が少しでも進んでいたら、チャンスである。(周りの生徒に聞こえるように)ほめるのである。
「おっなかなかセンスいいね」
印刷したものを他の生徒と一緒に並べて貼った。他の生徒もA君の作品を見ている。A君は満足そうな顔でパソコン室を後にした。
エラーレスの学習を心がける
(1)とりあえず授業に参加させる
(2)よいところを見つけ評価してやる
この実践のポイントはこの2点である。