母親をころすマムシの兄弟


Oさんが、「困った、困った」を連発しながら大学にやってきた。
「先輩、どうしたんですか?」と尋ねると・・・・・
「実は、お前覚えているか?XX高校のWちゃん」
「あっ、可愛い子でしたね。」
卒業アルバムを「ナンパねた」にしていたときの話だ。
その子は、美少女系で、人気の高かった女の子だった。
「そや、その子と今日やっと約束できてん」
Oさんは、何回も電話を掛け、仲良くなり初めて逢える事に成功したのだった。
「何時からです?」
「それがな、夕方6時ミナミやねん」
「6時やったら、練習の最中ですやん」
「そやねん、約束してもてん、やばいやろ」
「それやったら、大学さぼって風邪言うたら良かったのに」
「今日な、絶対出なアカン授業あってん、大学来たらバレるやろ」
単位を取るか、ナンパを取るか、苦しい選択だったのだ。

昼ごろ、Oさんが私を探しだして話し掛けてきた。
「おい、XXええ作戦考えたわ。協力してくれるか?」
「はい、出来ることならやりますよ」
「実はな、練習4時からやろ、練習始まったらお前、腹痛いて言うてな、トイレ行くフリすんねん。
 それでな、俺の兄貴になってな、大学に電話して欲しいんや」
「おかん(母親)が倒れたって言うて」
「えっーーーお母さん、を病気にするんですか?」
「そや、場合によっては危篤やって言うてもええわ」
「そら、無茶な先輩、縁起ええ事無いですよ」
「かまへん、背に腹は変えられん」

練習の時間がやってきた。体操が始まるとOさんは、私に目で合図を送った。
私は、お腹を押さえながら、キャプテンの所へ行き、「昼から、お腹の調子が悪くてトイレへ
行かせてください」と申し出た。
キャプテンに承諾を貰い、私はトイレに行くフリをして正門近くにある公衆電話に走った。
「はい、XX大学です。」
「私、ラグビー部のOの兄ですが、ちょっと母親が倒れまして、病院に行きましたので
 弟に連絡取りたいのですが・・・・」
「あっそうですか、それは大変ですね、すぐグランドへ行ってお伝えいたします。」
「そうですか、ありがとうございます。家の方に連絡するようにお伝えください」
そう言って、何食わぬ顔をして私は、グランドに戻った。
戻る途中にOさんとすれ違い、小さくガッツポーズをして小走りにロッカールームに入って行った。
グランドに戻ると、部員たちが口々に「大丈夫かな」と心配していた。

事情を知る、Zさんや、数人の部員は、笑いをかみ殺すのに必死だった。

職員の方が、走って息を切らしながら大声で「Oは居てるかーーお母さんが倒れたらしい
早く帰ってやれーーーーー」と大声で怒鳴ったので、監督、やキャプテンもつられて
詳しい事情も聞かぬまま、早く帰れになったのだ。
Oさんは、そこで芝居をしたのだった。
「いえ、練習します」とはっきり答えたのだ。
Zさん達は、Oさんの練習嫌いを知っていたので、そんなん言うたら怪しまれるぞと思ったらしい
監督は、「早く帰ってやれ」と命令口調になりOさんは、「解りました」と答えて
グランドから、走り去るときに私と、すれ違ったのだった。

翌日、Oさんに母親の様態を気ずかう言葉が掛けられたが、さすがにOさんも気不味そうだった。
私達事情の知る者たちは、ナンパがどうなったか知りたかった。
「先輩、昨日どうでしたん?」
「やっぱり、あんな嘘ついてナンパしても、うまい事いかんわ」とちょっと反省していた。
結局、次の約束も出来ずに、その女の子とはそれっきりになってしまった。

読者の皆様方、会社、学校をサボル時には、このような古典的な手法は使わないでおきましょう。