返ってこない卒業アルバム


ある日、マムシの兄弟のOさんとZさんが寮にやってきた。
また、よからぬ企みをしているのだろう。
1年に集合がかかった。近畿圏出身の1年ばかりだ。

「今回、XX大学(いわし会)を作ることになった。」
(いわしとは、いわす・いわし(河内弁でやっつけるとか叩きのめすの意味)
 M大学のラグビー部をいわしたった。(M大学のラグビー部に勝った、やっつけた)
「そこで、男女共学の高校出身者で卒業アルバムに
電話番号が載っているアルバムを持って来る」つまり、
卒業アルバムをネタにしてナンパする計画だったのだ。
私は男子校だったので関係ないと思い、その旨を伝えると・・・・・・・・・・・・
「あほ、中学生の同級生に女子高行っとったんいてるやろ、借りてこいっーーーー!!」

練習が休みになり、実家に帰った私は、近所に住む小学校からの同級生で女子高に進学していた
同級生の女の子にアルバムを借りたのだった。
アルバムは10数冊集まった。
マムシの兄弟と2年のYさん、Oさんが中心になって寮の公衆電話は、ナンパ電話に変わった。
ただ、この人たちは、大学名も名前も嘘をつかなかった。
何処の高校にも3〜4人は目の醒めるような美少女がいた。
XX大学「いわし会」は大きな戦果を上げ、何人かの女性と会える事になった。
ケンもホロロに電話を切られる場合もあったが、電話代金だけで済むナンパは効率がよかった。

デートだけで終わった場合もあったが、本来のH目的を達成できた先輩もいた。
一通り、電話をかける相手がいなくなった先輩たちは、今度は同級生にアルバムを借り出した。

ある日、ナンパした女性と合同で会うことになった。
その内、OさんがWブッキングしてしまい、急遽私がOさんの代理で待ち合わせした場所に
行かなければならないハメになった。
待ち合わせ場所は各自バラバラだったが、ミナミのパブで集合することになったのだ。
私は京橋で待ち合わせすることになり、アルバムの顔をしっかり覚え待ち合わせの場所に
ついた。
その女性は、私と同じ年かと見間違うほど大人びた格好でやってきた。
ファッションセンスの無い私の格好を見て、彼女は落胆したに違いない。
出来れば、私も行きたくは無かったが・・・・・・・・
とりあえず約束のパブに着くと、もう3人程が先にきていた。
ここで落ち合うのを女性たちは知らない。
先に来ていた女性と私が連れていった女性の一人が同じ高校で友達だったのだ。
顔を合わせた2人は怪訝な顔をしたが、すぐに「わっーー久しぶり」と同時に声を上げた。
その2人は、私達そっちのけでおしゃべりを始めだした。
Oさんはこのコンパには来なかった。本名を名乗ったために来れないのだ。
私はOさんの名前で通していたので、学年も2年になっていたために、今日だけは
マムシの兄弟達にも、タメ口を聞いてもよかったのだった。
いつも敬語で喋っているのに、変な感じだった。
ただ、嘘をついているのが心苦しく、あまり楽しくはなかった。
Oさんは単独でどこかにデートしている。
私が単独でデートしても良かったのだが、女性をどうあつかって良いか解らないので
合同コンパに来させてもらっていたのだった。

宴たけなわになったとき、ある女性が、「友達がどっかの大学のラグビー部の人からアルバム
見て気に入ったから会ってくれ、て電話あったと言っていたがあなたたちのこと?」
と言ってきた。電話をかけた相手はいっぱいいるので、マムシの兄弟は、答えに詰まった。
「いやー他の部員もアルバム見ていたからそいつらちゃうか?」と苦しい弁明をしていた。
「まあ、ええやん楽しい飲もう!!」とまた誤魔化しにかかった。

その後、何人かの先輩は最終目的まで達成したが、このコンパでひと悶着あった。
Yさんが連れてきた女性が、私と同年のカメの事が気に入り、カメと付き合うことになったのだ。
Yさんは、カメの高校の先輩であったために、カメは飛び込んでくる女性は惜しいし、
先輩が気に入り電話を掛けた女性なので悩んだ。が女が懸かると、先輩、後輩の友情は
あっさり崩れ、正直にYさんに言ったが、Yさんも別にいいよ、とあっさり答えた。
「まだ、電話かけていないのん一杯いるから」それが理由だった。
私は、もうついていけなかった。
この人たちのナンパのエネルギーは何処から来るのか?
私もそうだったが、高校時代は、1日中ラグビーを中心に回っていた。
マムシの兄弟、Yさん。Oさんもそうだった。
強豪高校で揉まれた人たちは、3年間ラグビーの練習に身も心も捧げてきたのだった。
「はじけた」という表現が一番だろうか?とにかく、何か見付けて遊びたかったのだった。
しかし、3年になるとがらっと態度が変わり、また練習に打ち込んだ。

いつしか電話を掛ける相手もいなくなったので、アルバムを返してもらおうと思い、アルバム
の行方を探した。
見つからないのだ。ヤバイどうしょう!!!
やっと見つけたアルバムを見て私は愕然とした。
可愛い女性の顔写真の部分を、他の部員が見て電話を掛けさせないために切り抜いていたり、
髭や眼鏡など落書をしてある写真まであった。
この10数冊のアルバムは、電話を掛けなかった先輩たちにまで、出回り喫茶店のマンガ本のように
なっていたのだった。
私は返すのをあきらめた。言い訳が出来なかったのだ。


3年前中学の同窓会があった。
その時にアルバムを借りた女性も来ており、私に近付いてきた。
「XX君、昔貸したアルバムどうなってんのん?」
私は笑って誤魔化した。