今回改造を行う予定のNF-1Aの電装部。上のヒートシンクが取り付けられている基盤がパワーアンプ及び電源基盤となる。下は出力特性を調整する為のEQ基盤。何れの基盤にも安価な部品が使用されており、オーディオマニアならずともその構成が気になるところ。また、ベークライト製のプリント基板は高周波特性が良好ではなく、そのためにパワー部ではフェライト磁性体による、リワークの必要が生じているようだ。現代の量産品が求められる一番の課題はコストの削減であり、その対応に苦慮した経過が見て取られるが、リファレンス用のスピーカーにはもう少し上等な部品を奢っても良かったのではないかと思う。一台あたり高々3〜5000円程度のコストアップで済むのだから、そこをケチる感性が今ひとつ理解できないのだが、宮仕えとはそういうものなのか???特に基盤の材質は大きな問題だ。確かに、ガラスエポキシ基盤を使用した場合には、基盤の単価の上昇だけでなく、穴開けのためのドリルの寿命は劇的に短くなってしまう。その代償として、ガラスエポキシの両面基盤を使えば、回路をコンパクトでノイズに強い性質に設計することが出来るのだ。下の写真のように、フェライトを発振防止のために使う必要も無くなったのではないだろうか?

こちらはパワー部基盤のハンダ面。パワーアンプの配線に難があるのか、パワーアンプIC周りの殆ど全てのパターンが切断され、フェライトと錫メッキ線によってリワークされている。これは格好悪いことこのうえなし。ロット違いの基盤は超小型のフェライトで表面実装されていたが、新しめのロットではこのように大きなフェライトが使われている。部品の共通化、及び作業の簡易化によるコストダウンの影響だと思われる。通常のパワーアンプ基盤でこのような無様といって良い配線を見たことは殆どないので、この基盤設計は失敗といえるだろう。これを見てしまうと、パワー部の入れ替えが最終目的となってしまう。(汗) パワー部はツイーターとウーファーを別個にドライブするバイアンプ構成になっていて、パワー部直前にあるOpAmpで帯域を分割している。また、基盤は電源部も兼ねていて、ツエナーダイオードとパワートランジスターによるプラスマイナス15VのEQ基盤のための安定化電源が実装されている。パワー部にはACを両派整流したプラスマイナス38Vが供給される。システム全体のパワーオン時の突入電流は1A前後なので、5台運用事に一気にパワーを入れると、その瞬間、室内照明が暗くなるほどAC商用電圧が降下する。周辺機器にデジタル機器がある場合には注意が必要だろう。フューズは35アンペアのものが使用されている。

これがEQ基盤。ニッケミのコンデンサは、一時期言われていたほど品質が悪くないらしいが、何れにしても信号系に使用するのは気が引ける。また、フィルター用に使用されているコンデンサーはマイラーだが、これも廉価な物が使用されているように見受けられる。抵抗は1/8Wサイズの炭素皮膜抵抗。これも、ノイズ特性や抵抗値の誤差が問題となる。発振防止用のコンデンサーにはセラミックが使われているが、こちらはこのままでも問題ないでだろう。OpAmpは通常見かける、デュアルインライン・パッケージ(DIP)ではなく、シングルインライン・パッケージ(SIL)が使用されている。このタイプのICパッケージは圧倒的に日本製の物が多く、交換時に選択肢が狭まってしまうという問題がある。今回は表面実装パッケージのICを変換基盤を使用することでフィットさせている。製品は4560という汎用オーディオ・オペアンプが使用されている。低価格が売りのB社のミキシングコンソールなど、安価な機材に多用されているICで、可もなく不可もないという音質だ。本製品にはRHOM製のセカンドソース品が使用されていた。音のキャラクターは若干ノイズが多く、明瞭度に欠けるものだということだが、海外のOpAmpインプレッションや、製品インプレッションでの評価は余り芳しくない。