四国八十八ヵ所《お礼参り》歩き遍路の旅
空海の史跡と自然を訪ねて

第3回 高野山へ

 
緑の映える高野山町石道
 
眼下の橋本市街・紀ノ川が光ってうねる
 
慈尊院裏手の180番町石

大師伝説の押上石
 
 24年5月19日     高野山 慈尊院〜奥の院弘法大師御廟 歩行距離22.8km
 四国八十八ヵ所結願成就のお礼参りも最終章、高野山奥の院の大師御廟を訪ねる。
 歩くのは高野山町石道、慈尊院(180町石)から根本道場大伽藍(1町石)まで180本、大伽藍から御廟(36町石)まで36本が、109m間隔で石造り五輪塔形の町石が建っている。この道は、開山の折、空海が木製の卒塔婆を建てて道しるべとした道で、多くの人々が参拝登山した祈りの道、信仰の道とされている。
 先ずは慈尊院で納経し町石道を歩き始めたのが7時50分。快晴、緩やかな登りで彩りを濃くした緑が映え吹く風が心地良い、シャガの花、そして沢蟹が迎えてくれた。
 市民ランナー指導者の金氏が仰っていた、『大地を踏みしめ、空気の匂いをかぎ景色を眺める、五感が研ぎ澄まされ体全体で森羅万象を感じる』とはまさにこの事だろう。
 六本杉峠(4.7km地点)に9時10分着、暫し休息後足に優しい土の山道を進む、草叢から30cm程の蛇が足元を横断、色んな動植物に逢えるのも歩き遍路の楽しみ。66番雲辺寺の下りで赤い実を付けていた「まむし草」が鎌首を揚げ数多く見られる。
 同伴者が出来た。この方、四国歩き遍路を通しで3回達成された、宿泊は半分が野宿、一日50kmを歩いた事も。確かな歩き方だ、自分も少しペースを上げる、四国の思い出話で愉快な道中となった。
 歩を進めるにしたがい町石の番号が少なくなっていくのが励みとなり、登り下りを繰り返しながら矢立茶屋(12.9km地点)に11時10分着き昼食休憩。、車道と交わっており多くのライダーがが駆けて行く。
 弘法伝説の「袈裟掛石」「押上石」等を見、町石の番号を目で追いながら、緑滴る空気を吸って、何時しか無心に歩いている自分に気付く幸せ感。
 12町石辺りから急な登り坂となり、一汗かいて階段を登ったところが車道、そこに威風堂々とそびえ立つ大門が目に入る。楼門の左右に金剛力士像、目玉が光っていた(18.7km地点・13時15分着)。
 寺院が建ち並ぶ広い通りを歩く、以前に撮影した紅葉が今は緑の葉を一杯に広げ元気だ。目指すは壇上伽藍の中心、根本大塔。真っ青な空に濃い朱色の塔が輝いて見える。堂内の16本の柱に堂本印象画伯が描いた十六大菩薩、笑みを含んだふくよかな姿の醸し出す雰囲気は安らぎの世界。
 4町石程で高野山真言宗総本山 金剛峯寺。今が盛りと石楠花が綺麗に咲いている、写経を納め朱印を頂く。
 3km程、商店街の道を奥の院へ歩く。週末の好天とあって観光客が多い、外人や若いカップルも目につく。
一の橋を渡ると参道の両側に、老杉がそびえ苔を纏った墓碑が数多眠っている、まさに浄域。
 御廟橋手前で一息入れて身支度を整え、水向地蔵に水をかけ橋を渡って霊域に入る。直ぐ目の前の弘法大師御廟拝所に写経を納め、時計回りに廻って御廟前へ、線香の煙が充満している中に石楠花の花が咲き誇る、多くの参拝者だが静かだ。
何時しか覚えてしまった 開経偈・懺悔文・三帰・三竟・十善戒・発菩提心真言・三摩耶戒真言・般若心経・光明真言・御宝号・回向文 を唱え、無事に四国八十八ヵ所歩き遍路が終えられたことを報告し、感謝とこの後の心身健全を願って最後の仏前勤行を終えた。
 地下行場を巡った後納経所へ、「歩かれたのですか」「はいお陰さまで無事に結願成就出来ました」と挨拶「おめでとうございます」の一言に、ぐっと込み上げるものあり。弘法大師御影を併せて頂いた納経帳は、此れにて全てが埋まり心なしか重くなった感じがする。
 この高野山の壮大な賑わいを見て、改めて弘法大師の偉大さに打たれるとともに、修行の場として開かれた道を歩き終えられた自分の健康と、歩く事を許された立場の幸を噛締める。そして色々と親切にしていただいた方々、一期一会だが胸襟を開いて語らいあった遍路仲間、遍路歩きを後押ししてくれた友人への感謝を心に込めて、一の橋で合掌し帰途に着く。
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