モミジバフウ(紅葉葉楓)

樹形 樹皮 下に多くの実がおちている 楓に似ている葉
   
実は鋭い棘を持つ 葉の拡大  
 
  1. 樹形: 北米原産の落葉広葉高木で、樹高は20~40mに達します。
    若木のうちは端正なピラミッド形(円錐形)を保ち、成長とともに枝を大きく広げた雄大な卵円形の樹冠へと移行します。

  2. 樹皮: 灰褐色で、成木になると縦に深い筋状の割れ目が入ります。
    枝にはしばしば「コルク層」と呼ばれる翼状の突起が発達するのが、近縁種との大きな違いです。

  3. : 互生(ごせい)に付き、掌状に5~7裂します。
    一見カエデに似ていますが、カエデが対生(たいせい)なのに対し、本種は互生である点が識別ポイントです。
    寸法は長さ・幅ともに10~18cm程度。縁には鋭い鋸歯があり、秋には赤、紫、オレンジと極めて鮮やかに紅葉します。

  4. : 4月~5月頃、新葉の展開と同時に開花。
    雌雄同株で、雄花は総状に集まり、雌花は球状の頭状花序となって垂れ下がります。

  5. 果実: 10月~11月頃、多数の液果が集まった直径約3cmの球形な「集合果」が熟します。
    表面には刺状の突起が多数あり、冬の間も落葉した枝に長く吊り下がっている光景が見られます。

  6. : 果実の隙間から、小さな翼を持つ種子が放出されます。

  7. 冬芽: 卵形で赤褐色から暗褐色。光沢のある芽鱗に包まれ、枝先や葉腋に付きます。

(注)モミジバフウとモミジバスズカケノキは、葉の形が似ているため混同されやすいですが、樹皮に決定的な違いがあります。
モミジバフウは、樹皮に縦の深い亀裂が入り、実は鋭い棘を持つウニのような形状です。
一方、モミジバスズカケノキ(プラタナス)は、樹皮が大きく剥がれ落ちる「斑紋状(迷彩模様)」の幹が特徴で、
実は細かい毛に覆われた柔らかい質感です。
また、カエデ類が対生なのに対し、この二種は共に「互生」ですが、スズカケノキは葉柄の基部が冬芽を包む独特の構造を持ちます。

樹木にまつわるエピソード

モミジバフウは、別名「アメリカフウ」とも呼ばれ、その名の通り北米中南部から中米が原産です。
日本へは、大正時代に渡来した比較的新しい樹木ですが、その美しい樹形と、
1本の木で多様な色彩を見せる圧倒的な紅葉の美しさから、街路樹や公園樹の主役として急速に普及しました。
学名の Liquidambar(リキダンバール)は、ラテン語の「液体」とアラビア語の「琥珀」を組み合わせた言葉で、
樹皮を傷つけると芳香のある琥珀色の樹脂(液体)が流れ出すことに由来します。
この樹脂は「スィートガム」と呼ばれ、かつては香料や薬用、あるいは天然のチューインガムとしても利用されました。
文学や芸術の面では、特に秋の公園風景を象徴する樹木として現代の写生画や写真の題材に頻繁に選ばれています。
地面に落ちた棘だらけの実は、その幾何学的な面白さから、クリスマスのリースやオーナメントを作る自然素材として、
子供から大人まで広く親しまれています。
自然の造形美と、近代日本の都市景観形成を支えた歴史が融合した、文化的な厚みを持つ樹木です。