モッコク(木斛)

樹形 樹皮
     
 
 
  1. 樹形: 高さ10〜15mに達する常緑高木。
        成長は比較的緩やかで、自然に樹冠がまとまり、非常に端正で落ち着いた円錐形や卵形の樹容となります。

  2. 樹皮: 灰褐色で滑らかですが、老木になると不規則に剥がれ落ち、独特の斑模様や質感が出てきます。

  3. : 互生。枝先に集まってつく傾向があり、倒卵状の長楕円形です。
      肉厚で光沢があり、縁に鋸歯がない「全縁(ぜんえん)」が特徴です。新芽や葉柄が赤みを帯びるのが識別ポイントです。

  4. : 6〜7月頃、葉の付け根から下向きに芳香のある白い花を咲かせます。次第にクリーム色へと変化します。

  5. 果実: 10〜11月頃、直径1.5cmほどの球形の果実が実り、熟すと厚い皮が不規則に裂け、中から赤い種子が顔を出します。

  6. 種子: 鮮やかな赤色で、鳥たちを引き寄せる役割を持っています。

  7. 冬芽: 頂芽は円錐形で、赤みを帯びた鱗片に包まれています。


樹木にまつわるエピソード
モッコクは「江戸五木」の一つに数えられ、古くから日本の庭園文化において最高格の樹木として扱われてきました。
「江戸五木」とは、江戸時代、将軍や大名屋敷の庭園を飾る「格調高い樹木」として尊ばれた5種の総称です。
モッコク、モチノキ、アカマツ、カヤ、イトヒバを指し、その気品ある姿や「家運が絶えない」常緑の性質が武家に愛されました。

モッコクが「王様」と呼ばれる理由は、その圧倒的な「品」にあります。
一年中絶えることのない深い緑の光沢、春先の赤みを帯びた若葉、そして初夏の清楚な花。
派手さはありませんが、時が経つほどに幹の質感が深まり、庭全体の格調を高める存在感を持っています。
江戸時代の大名屋敷や寺院の庭園には欠かせない主役でした。

「モッコク(木斛)」という名は、その花の香りがラン科の石斛(セキコク)に似ていることに由来すると言われています。
初夏の夕暮れ時、庭に漂うその芳醇で上品な香りは、古くから風流人たちに愛されてきました。
視覚だけでなく、嗅覚でも季節の移ろいを感じさせる樹木です。

モッコクは「持ち込む(モッコク)」という言葉遊びから、幸運や富を家に持ち込む縁起の良い木として、商家の庭などにも好んで植えられました。
また、その緻密で美しい材は、櫛(くし)や印鑑、機織りの部品などの高級な工芸品に利用され、人々の暮らしを細やかに支えてきました。