クスノキ(楠・ナンジャモンジャ)
| 樹形 | 樹皮 | 葉 |
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樹形: 常緑広葉の高木で、樹高は8~25mに達します。
成長が早く、枝を横に大きく広げて堂々としたドーム状の樹冠を形成します。
樹皮: 暗褐色で厚く、縦に細かく不規則な割れ目が入るのが特徴です。
葉: 先の尖った楕円形で互生(ごせい)に付きます。寸法は長さ5〜12cm、幅3〜6cm。
縁はなめらかな「全縁」ですが、時に波打つことがあります。
表面は光沢があり、基部から伸びる顕著な「三行脈」が見られます。
その分岐点には小さな「ダニ部屋」があり、葉を揉むと樟脳の香りが漂います。
花: 5月〜6月頃。本年枝の葉腋から円錐花序を出し、黄緑色の極めて小さな花を多数咲かせます。
果実: 10月〜11月頃。直径1cm弱の球形で、熟すと緑色から光沢のある黒紫色へと変化します。
種: 果実の中に、やや硬い黒褐色の球形をした種子が1つ含まれています。
冬芽: 卵形で先が尖り、赤褐色の芽鱗に包まれます。
クスノキは古来より「神の宿る木」として畏敬の念を集め、その圧倒的な生命力から各地の神社で御神木として大切に守られてきました。
名前の由来は、薬効があることから「薬(くす)の木」、あるいはその特異な芳香から「奇(くす)しき木」とされた説が有力です。
木全体に含まれる樟脳成分は、防虫剤や鎮痛剤として重用されただけでなく、
かつてはセルロイドの原料として近代産業を支える貴重な資源でもありました。
文学の世界では、志賀直哉が短編『范の犯罪』において、樟脳の鋭い香りを物語の背景を彩る象徴的な記号として描いています。
また、その雄大な樹姿は視覚芸術にも強い影響を与えています。
スタジオジブリの映画『となりのトトロ』では、トトロが棲む巨大な「塚森の主」としてクスノキが描かれ、
子供たちを守る自然の抱擁力の象徴となりました。
絵画の分野でも、防風林や街路樹として日本の風景に溶け込む姿が多くの作家に写生されています。
さらに、1945年の原爆投下により焦土と化した広島で、翌年春にいち早く芽吹いた「被爆クスノキ」のエピソードは、
希望と再生のシンボルとして今も人々の心に深く刻まれています。