クロマツ

樹形 樹皮 松葉と棒状の雄花
     
赤紫色の雌花  
 

1.樹形: 高さ30m以上に達する常緑高木です。
     海岸付近の厳しい環境にも耐え、幹や枝が力強く曲がりくねり、雄々しい姿(雄松)となります。

2.樹皮: 黒褐色で、成長とともに亀甲状に深く厚い裂け目が入り、剥がれ落ちます。

3.葉: 針状の葉が2本ずつ束になってつきます(二針葉)。
    アカマツに比べて葉が太く硬く、先端が鋭いため、触るとチクチクと痛いのが特徴です。

4.花: 4〜5月頃に開花します。枝先に赤紫色の雌花が、新梢の付け根に黄色い雄花が多数つきます。

5.果実: いわゆる「松ぼっくり」です。4cm前後の卵状円錐形で、開花した翌年の秋に茶色く熟します。

6.種子: 薄い翼があり、熟して鱗片が開くと風に乗って遠くまで飛びます。

7.冬芽: 銀白色の鱗片に包まれているため白く見え、アカマツ(赤褐色)との大きな見分けポイントになります。

クロマツは、私たちが目にする一般的な花びらを持たない「裸子植物」です。
春、新梢の先端に赤紫色の「雌花(雌性球花)」が、基部には花粉を蓄えた「雄花(雄性球花)」が現れます。
最大の特徴は、受粉から結実までに二年もかける息の長い営みです。
春に風に乗って受粉した雌花は、その年には肥大せず、翌春にようやく受精が行われます。
その後、二度目の秋を迎えて初めて、よく知られる茶褐色の「松ぼっくり」へと成熟するのです。
この「待機」を伴う独特なサイクルは、厳しい環境下で着実に命を繋ぐための、クロマツ独自の進化の形といえるでしょう。

樹木にまつわるエピソード
クロマツは古来より、日本の原風景を彩る「白砂青松(はくしゃせいしょう)」の主役として愛されてきました。
その強靭な生命力から不老長寿の象徴とされ、お正月の門松や祝儀の席には欠かせない縁起の良い樹木です。
万葉集の時代から多くの歌に詠まれてきましたが、特に絵画の世界では日本の美意識を象徴する題材です。
長谷川等伯の国宝『松林図屏風』や、浮世絵師・歌川広重の『東海道五十三次』に見られる海岸沿いの松並木など、
風雪に耐えながらも力強く生きる姿は、日本人の精神性と深く結びついてきました。
特に「三保の松原(静岡県)」などの景勝地では、富士山とクロマツの組み合わせが日本を代表する絶景として世界的に知られています。
また、クロマツは実利的な面でも日本人を支えてきました。
海岸線に植えられた松林は、強風や飛砂から家を守る「防風林・防砂林」として機能し、人々の暮らしを守る盾となってきました。
江戸時代には、松の樹脂(松脂)が照明の燃料として使われたり、飢饉の際の救荒食物として内皮が利用されたりした記録も残っています。