アラカシ(粗樫)

樹形 樹皮
     
アラカシの雄花  下の(注)参照  
 
  1. 樹形: 高さ15〜20mになる常緑高木。シラカシに比べると、より枝が太く、力強く広がる傾向があります。

  2. 樹皮: 暗灰色。シラカシよりもざらつきが強く、成木では皮目が目立ち、独特の力強さがあります。

  3. : 互生。葉身の上半分以上に鋭く大きな鋸歯(粗い歯)があるのが最大の特徴です。
      裏面はロウ質で、やや白っぽい緑色をしています。

  4. : 4〜5月頃に開花。黄褐色の雄花序が垂れ下がり、雌花は新枝の葉腋に数個つきます。

  5. 果実: どんぐり(堅果)。秋に成熟し、殻斗(帽子)に5〜7個の同心円状の環があります。

  6. 種子: 堅果の中に一つ。デンプンが豊富ですが、シラカシ同様に渋みが強いため、食用にはアク抜きが必要です。

  7. 冬芽: 頂芽が発達し、複数の芽が重なるように付きます。

(注)春に木全体が黄色や赤茶色に色づいているのは、春の芽吹きとともに古い葉を落とす、常緑樹特有の「新旧交代」のサインです。
枝先から垂れ下がる黄緑色の紐のようなものは、風に花粉を乗せて飛ばすための雄花です。

樹木にまつわるエピソード
アラカシは、その名の通り「粗い(あらい)」葉や樹皮を持つことから名付けられました。
しかし、その「粗さ」は決して劣っているという意味ではなく、むしろ野性的で強靭な生命力を象徴しています。

縄文の食と「シブ」の知恵
カシ類の中でもアラカシは西日本を中心に広く自生し、縄文時代から貴重な食料源でした。
シラカシ以上にタンニン(渋み)が強い傾向にありますが、その分デンプンの蓄積も豊富です。
縄文人はこの「粗い渋み」を抜くために、灰と一緒に煮出すといった高度な化学的処理を行っていました。
苦労してアクを抜いたからこそ、その滋味深い味わいは当時の人々の命を繋ぐ特別なものだったに違いありません。

「関西の樫」としての暮らし
関東ではシラカシが防風林(屋敷林)の主役ですが、関西以西ではこのアラカシがその役割を担ってきました。
材が非常に硬く、農具の柄や薪炭材として生活に密着していたため、人々に最も親しまれてきた「どんぐりの木」といえます。

文学と精神性
古歌に詠まれる「カシ」も、その地域性から多くはこのアラカシを指していたと考えられます。
冬でも青々とした葉を茂らせる「常緑」の姿は、困難に屈しない強固な精神を映し出す鏡として、
今も神社の鎮守の森などで大切に守られています。