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 葡萄酒日記

その15 「なぜ葡萄酒なのか」

フランス最高、いや世界最高の葡萄酒「ロマネ・コンティ」は、 「語る人多し、されど飲み人少なし」と言われています。 あまりにも有名で生産数寡少の葡萄酒です。 フランスのディジョン市から南のブルゴーニュ地方の 「コート・ドール」(黄金の丘陵)といわれるなだらかな斜面の一角、 わずか1.8ha畑から、この世の葡萄酒と思えない素晴らしい葡萄酒が生まれます。

この「ロマネ・コンティ」は「モノポール」といって、 DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社)の単独所有の畑です。 平均年産量は500ケース(6000本)程で、 世界中から引っ張りだこですから、 「アソート」といって「ロマネ・コンティ」1本購入するのに、 他の葡萄酒11本買わねば手に入りません。 いわゆる抱き合わせ売りです。 従って1本だけ買おうとすると、必然的に高価なものになります。

私は1997年の夏、念願のこの「ロマネ・コンティ」の畑を訪れることができました。 思っていたとおり、何か周りの畑と違う雰囲気が漂っていました。 面白いことに、わずか3m程のあぜ道を隔てた北隣の葡萄畑「リシュブール」がありますが、 造り手は同じDRCであっても、この畑から作られた葡萄酒は価格が一桁異なります。 造り方、微小気候(ミクロクリマ)、樽、もちろん葡萄品種が同じでも、 葡萄酒が異なるのはどうしてでしょう?  それは、葡萄の木の下、すなわち「テロワール」(土質)が異なるからです。 DRCの社長ヴィレーヌ氏の言葉「葡萄酒は土地の表現である」が頷けます。 出来ることならモグラになって、「ロマネ・コンティ」の畑が隣の畑とどのように違うか、 地中深く探検してみたいものです。

幸いにも私はこの類い希な葡萄酒(葡萄酒と言うより神から賜った液体)を口に入れたことがあります。 それはそれはこの世の葡萄酒かと思えない程、液体を口に含んで喉を通過したあとも、 「名鐘」のようにいつまでも余韻が漂っていました。 私は素晴らしい葡萄酒は何かと訪ねられたときには、 いつも「よい鐘のように余韻の長い葡萄酒です」と答えています。 「ボルドー」の葡萄酒と違って数種の葡萄をブレンドせず、 単一の「ピノ・ノワール」という葡萄品種から造られます。 私見ですが、100人のひとにブラインド(葡萄酒名を隠して)で 「ロマネ・コンティ」を飲んでもらうと、100人全員が美味しいと答えると思います。 酸味、苦み、渋味などのバランスがよく、香りよく、角がとれた、 喉ごしのよい万人に愛される葡萄酒です。 私はいつもこの「ロマネ・コンティ」のような人間になれたらと考えています。

「ロマネ・コンティ」の畑
「ロマネ・コンティ」の畑


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