戸倉・ヤマメ茶屋〜三ノ丸
◆【山行日時】 2004年3月20〜21日

20日 くもりにわか雨、にわか雪のち時々晴れ
21日 晴れ

◆【コース・タイム】


ヤマメ茶屋=120分=坂ノ谷・登山口=120分=三ノ丸・避難小屋

三ノ丸・避難小屋=30分=林道出合=10分=坂ノ谷・登山口(林道)=40分=ヤマメ茶屋

パタゴニア



◆【詳細】

雪解けの早い今年、
「一度はトレースを残しておかないと。」
と考えていた兵庫県側、戸倉・ヤマメ茶屋から坂ノ谷〜三ノ丸〜氷ノ山を、最後のチャンスと見たこの連休に試みた。

R29には、引原ダムまで来てようやく路肩にわずかに名残の雪が見られるだけだったことに、
「この分なら、ひょっとして坂ノ谷林道に車を乗り入れることも出来るのでは・・・?」
こんなことを思っても見たが、もうしばらく車を走らせヤマメ茶屋に着いてみると、さすがに国道は除雪が行き届いているお陰で路面に雪が見られなかっただけで、自然のままのここでは除雪の残骸とも言える大きな壁が林道を塞いでいた。

少し戻り、路肩に適当な駐車スペースを見出し、準備する。茶屋に入山届を提出。大きな雪塊を乗り越し歩き始める。

今日は久し振りの長丁場の林道歩きを含む登高にもかかわらず、既に10時半を回ってしまっていた歩き出しの時刻が少し気にはなっていた。坂ノ谷登山口(林道)
ダラダラとした林道歩きは遅々として進まず、羊ヶ滝入り口に達するにも約1時間を要し、にわか雨や雪も相まって坂ノ谷登山口(林道)に到達したのは歩き始めてからちょうど2時間を経過した12時半だった。

林道からは眺望が得られなくもないが、これと言って目を見張るものは特になく、
「左下方に羊ヶ滝を俯瞰できる個所まで登ると、登山口はそう遠くない。」

あえて励みにするにしても、これくらいしか思い浮かばない歩行はかなり退屈だ。

おまけに、登山口までに何箇所か雪の切れているところもありスキーを脱いだり履いたりのわずらわしさも手伝って、我慢の登高を余儀なくされる。
そんな登高を経てようやく辿り着く坂ノ谷登山口だが、
「まだ、ここか・・・。」
これが実感。

しかし、こんなところで弱音を吐いていたのでは始まらない。夏ルートで言えば、まだこれから登り始める場所なのだ。

もうしばらく林道歩行し尾根から取り付くのがスキー登高の常道とのデータもあったが、林道歩きにうんざりしていたこともあり、夏道通しに登ることとし細くなる林道をルートを左へとる。

林道に続き再度、登山口の標識を確認したら植林帯へと入って行く。

しばらくは植林帯独特の薄暗さと雪の状態の悪さに歩きづらいが、救いは赤テープが「これでもか!」と言うほどの間隔で設置されているので迷う心配がない点だろうか。

やがて自然林帯を歩くようになると上空がこれまでに比べると見違えるほど明るくなり、気持ち良い。前方の見通しも良くなり、なだらかな尾根特有の景観が広がる。

スギの大木を見ると次第にブナの巨木を見ながらなおも緩やかに登る。

この付近、辺りはとても雰囲気が良く、いかにも”陽だまりハイク”を楽しむには打ってつけの場所だが、出発時間が遅かったことと、この先まだ長いことを考えると、のんびりしている時間的な余裕がないのが悲しい。

と同時に、なかなか三ノ丸の雪原が現れそうになく刻々と経過する時間に焦りのようなものを感じずにはいられなかった。三ノ丸の雪原(中央に青く光っている所が避難小屋)

「山頂(氷ノ山)までは無理かも・・・。」
こんな思いも脳裏をよぎる。雪も上がり青空も見え始め日も差しては来たものの、重い雪に足どりは軽くならないのだ。

それでも左に見え出した尾根が近づくのを楽しみに登高を続けるとようやくブナ林が切れ、雪原に出て太陽の光を反射させ白く輝く避難小屋が目に飛び込んだ。

「やっと出た〜。」
待望の三ノ丸だ。

しかし、すぐそこのように見える小屋だが、これがなかなか近づかない。それでも、黙々と登高するとやがて小屋に到達することが出来た。時刻は15時を回っていた。

三ノ丸に着く時間がこの時刻になることは決して予測していなかったことではなかったが、入山時から一種の心配事と言えば心配事だったことが、ここに来て現実問題として気持ちの中で沸いてきた。

ここでしばらく休み、その後、この調子で山頂へ向かうとなると・・・、もう1時間半は見ておいたほうが賢明だ。となると・・・、
「氷ノ山に着くのは17時か!?」

何とも微妙な時間だ。

小屋の周辺には既にテント設営を終えた2パーティーがいたが、小屋を覗いてみると運良く一人の先行者がいたもののもう一人は宿泊できる状況を目の当たりにし、
「今日はここで寝よう。」

こう思った時点で山頂へ向かうことはあっさり諦めた。

時間を要することに関してはある程度の覚悟はしていたが、思いの外、厳しい(うんざりさせられる)登高に自分の力量不足と氷ノ山の懐の深さを痛感せざるを得なかった。

でも、ここでの宿泊が決まれば話は別だ。

元気張って東斜面へ何本か滑る。背中の荷物がないとそれなりに滑れたのが変に嬉しかった。
夕暮れ迫る氷ノ山
昼過ぎから好天に転じた天候に、
「夕日も見れるのでは・・・」
との思いもあったが、さすがにこれは少し欲張りだったようだ。

今日の小屋泊者は神戸からの単独行者、Sさんと自身の二人だった。(二人しか泊れないのだから当然)

夕刻には少しでも暖をと小屋内のかまどで火を起こそうとして下さったが、小屋の根本的な構造上の問題もあり、小屋自体をいぶすだけとなってしまい、煙が目にしみるばかりで暖を摂るまでには至らなかった。

無事、煙も晴れ夕食を摂ったら早々に就寝。
早く床に着き過ぎたのか、二人、深夜12時過ぎに目を覚まししばらく談笑。

外に出ると、夕刻には高曇りだった空には満天の星。星座早見表を持参しなかったことを後悔してみても仕方ない。

写真撮影をして明日の朝日に思いを馳せ、再度、シュラフにもぐり込む。氷ノ山山頂から見る朝日(倉敷山の会・W氏撮影)

夜中の思いが通じたのか、翌朝の日の出は素晴らしかった。

小屋の明かり取り兼、冬期出入り口の窓が白み始めたと思い外へ出ると、東の空がもう赤味がかっていた。
「これは大変だ」

大急ぎでカメラ一式を背負いスキーを履いたら、わさび谷の頭へ一目散。

三脚をセットするや否や綺麗な朝日が地平線に掛かる雲の切れ間から昇った。

この後もしばらくこの付近に居座り、茜色からわずかに赤く染まり行く氷ノ山や三ノ丸の雪原、次第に朝日の当たるようになる扇ノ山をのんびりと眺めた。氷ノ山とマイ・スキー朝日














モルゲン・ロートの氷ノ山三ノ丸













三ノ丸と霧氷の天然スギガスの扇ノ山













素晴らしい景観は時間が経つのを忘れさせ、知らない間に二時間近くもの時間が経過していた。

小屋に戻ってみるとSさんは小屋を空けていた間に朝食を終えていたのはもちろん、すっかり身支度を整え、いつでも出発できる態勢になっていた。

一方、こちらはといえば、まだこれから朝食。
お陰ですっかり腹が減り、昨日残しておいたコンビニ弁当の焼き鮭に箸が進んだ。

腹ごしらえも出来たら、
「さあ、これからどうしようか・・・。」

展望台から氷ノ山方面を望めば山頂南面の”ダイヤモンドコース”を上り下りする人影。

きっと彼らは、昨日から入山している『倉敷山の会』の人達に違いないという確信があったので、その中に是非、会いたい方が居たこともあり、すぐにでも飛んで行きたい気分だったが、朝食を摂る際ゆっくりしてしまったことや、素晴らしい日の出を見れたことですっかりそこに向かう気力をなくしてしまっていた。

彼らの姿を遠目からながら眺め、少しは一緒に滑った気持ちになったりした後ももうしばらく小屋に留まり、のんびりしたら荷をまとめ下山の準備する。
頭を覗かせる、坂ノ谷・殿下コース分岐標識
展望台上から西方彼方の大山や氷ノ山を見たら坂ノ谷方面へ向け滑り出す。

ところが、クラストした雪面と背中の重いザックが気になりテレマーク・ターンもままならない。

昨夕の空荷の時とでは大違い。
「こんなはずじゃ〜・・・。」

尻餅をつくことだけは避けしばらく滑ると、ブナ林に入る前にわずかに雪面から顔を覗かせる物体が目に付いた。昨秋、新たに設置された殿下、坂ノ谷コース分岐標識の頭頂部だった。

これを見る限り、雪融けが早いとはいえ、この付近ではそれでも優に1メートル以上の積雪はありそうだ。
16番ツアー標識
雪原帯と分かれ、すぐ下方の16番ツアー標識よりブナ林帯へ滑り込む。

樹林帯での雪質はザラ目に近く、雪原に比べるとずいぶん滑りやすい。また、登る際、あんなに長く感じたこの辺りも、滑走すればずいぶん早い。

徐々に大きくなるツアー標識の番号を確認しながら緩やかに滑るといつの間にか植林帯の入り口まで下ってきていた。

トレースは自然と植林帯へと導かれるようだったが、このまま植林帯を下ったのではあまりに芸がないので、
「最後に美味しいところをもうひと滑り。」

左に延びる顕著な尾根に滑り込む。

尾根を真東に向かい、その末端まで滑り込んでしまったことにより、やがて出くわした林道をしばらく登山口方面へ上り返さなければならなかったが、
「これも経験のうち。」

しばらくノー・トラックの林道を歩くと、見覚えのある峠に出た。ふと見ると、右の尾根からはいくつかのトレース。ここに下りてくるのが正規のルートだったようだ。ここからは下るのみであることを考えると、トレースがここにあるのもうなずけた。

ヘアピンカーブの坂ノ谷・登山口(林道)を過ぎると、昨日から一日しか経っていないのにずいぶん雪が少なくなったと感じる林道を、何度もスキーを脱いだり履いたりしながら下る。

それでも、これまで同様、上りのことを思うと雲泥の差ほど早い。

羊ヶ滝入り口まで下ればスキーを脱がなければならないほどの雪の切れ間はなく(1ヶ所あったかも?)、やがて林間に入り左手にずいぶん大きくなった沢の流れを見ながら滑走するようになると大きな雪隗が現れ、スキーを脱いだ。

結果的には、三ノ丸付近でスキーで何本も滑ったわけでもなく、また、当初の目的地だった氷ノ山山頂の土(雪)を踏むことなく下山の運びとなり、一見すれば”無念の敗退”とも取れる山行だったが、あながち、そうでもなく、自身にとっては三ノ丸を宿泊地としたことにより色んな意味で収穫のあるスキー山行となった。

あとは、ヤマメ茶屋に下山報告をし、帰路に着いた。

◆【ワン・ポイント・アドバイス】

三ノ丸避難小屋、さながら限定二人の為にある隠れ家。

腰掛けると狭く感じる小屋内のベンチも、睡眠をとるに当たっては充分な広さ。

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