<肥料とは>

もともと肥料とはどう言った物なのか、漠然としたところがあったので調べてみました。肥料と言うのは肥料取締法で次のように定義されています。(肥料取締法第2条第1項)

 「植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土じように化学的変化をもたらすことを目的として土地にほどこされる物及び植物の栄養に供することを目的として植物にほどこされる物」となっています。

分かり易くするために、この文章を分けて見ると以下のようになります。

肥料とは、
1)植物の栄養に供することを目的として土地に施される物
2)植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらす事を目的として土地に施される物
3)植物の栄養に供することを目的として植物に施される物
となります。

<肥料の分類>

さて、野菜の肥料(1)ではこれらの事についてあまり突っ込んだ所まで触れていませんでしたが、やはり規定されている限りどのような分け方になっているのかも知っておく必要があるかと思い、ここに記述します。この肥料肥料取締法では、肥料は普通肥料と特殊肥料に大別されていますが、これとは別な視点から見た分類の仕方も野菜の肥料(1)で触れたようにありますのでこれらも勉強しながら追記していきたいと考えています。また、これらは法改正により追加・変更が生じる場合がありますので詳しくは取締法をご参照願います。

(肥料の分類について)


参考:
汚泥肥料等の腐植酸質物や動物の排泄物、堆肥類等は肥料取締法の適用を受ける肥料ですが、「土作り」用の土壌改良資材にもなります。

<施肥量の考え方>

施肥量は作物によってそれぞれ吸収量が異なりますので、それに見合うような施肥が必要です。また、土壌によっては肥料の流亡性が高い土壌(砂土土壌など)には余分に施肥量を見積もってやる必要があります。これらの施肥量の決定には、まず土壌診断を用いてご自分の畑の土壌成分を分析してもらい、それを基に肥料の不足分を補ったり又は余剰分を与えないやり方が一番良い方法です。普通、一般的な野菜の施肥量は各地方の施肥基準がありますのでそれらを参照して施肥設計を行います。ところが施肥基準に示されている施肥量については取り扱いやすい速効性の化成肥料を基に決められている場合がありますので、有機質肥料で行う場合は気を付けなければいけません。有機質肥料を取り扱う場合、よく出てくる言葉に「肥効率」や「有効率」と言う言葉があります。これは化成肥料の効き方を100とした場合の有機質肥料の効き方です。当然、有機質肥料は微生物等によってゆっくりと分解されていきますので肥効率は化成肥料に比べて悪くなります。そのため化成肥料と同じような効果を期待するには余分に入れてやらなければなりません。この余分に入った成分は土壌に残ったり、流亡したりしますので最終的にはこれらを考慮して施肥量を決めなければなりません。下記は施用基準量の決め方を数式で表現したものです。

施肥量=作物の吸収量−(改良資材+堆肥成分+地力養分)+肥料残留分+肥料損失分(溶脱や揮散による物)

<施肥量の計算例>

堆肥や自家製の肥料を使う場合は、分析値や文献などを参考にして施肥量の計算を行います。また、施肥量は収穫量にともなった施肥量が各地方の農作物施肥基準に書かれていますので、特に栽培野菜に対して施肥方法や施肥量などについて決めた物がなければそれらを参照して計算していきます。ここでは施肥基準を用いた計算を一例として記述しました。また、実際の施肥については施肥量の考え方でも一部記述させていただいたように色んな条件を考慮しなければいけないように思います。あくまでも施肥計算の仕方としてお役に立てればと思い、記述していますのでお間違えのないようにお願いします。

・肥料には1成分だけ含んだ単肥と2成分以上を含んだ複合肥料や有機質肥料などがあります。それらには保証成分と呼ばれる成分が取締法により明記されています。また販売されている肥料袋には肥料の3要素と呼ばれているチッ素、リン酸、カリの含有率が表記されています。よく見かける14−10−13などがその一例表記です。これらの成分は重量(%)百分率であらわされています。すなわち肥料全体の重さを100としたときに含まれている成分を各成分の重さ(%)で表現しています。従って100kgの肥料重量で、14−10−13の表記であればチッ素、リン酸、カリはそれぞれ14kg、10kg、13kgずつ含まれていることになります。

・同じ作物、同じ収量を目標にしても土壌や環境条件などによって施肥量や施肥時期が異なります。そのため施肥基準は各地方によって違う事がありますので注意が必要です。また、施肥基準は栽培指針などとも呼ばれており、施肥の留意点や施肥方法等が記されていますので確認しておきます。

・また、施肥基準では(kg/10a)などの単位を使っていますが、1平方メートルあたりに換算し直した方が計算し易いと思います。 すなわち、施肥基準の数値(kg/10a)=1000(g)/1000(m)=1(g)/1(m)となり、 施肥基準の数値が1平方メートルあたりのグラム数となって、後は自分ちの栽培面積を掛ければ求まる事になります。

1ha(ヘクタール) 10000m 1町(ちょう) 3000坪
10a(アール) 1000m 1反(たん) 300坪
1a(アール) 100m 1畝(せ) 30坪

いよいよ施肥量の計算例をご紹介します。
ここでは計算例と言うことで架空の野菜、架空の施肥量を記述して計算を進めていますので注意して下さい。
野菜の施肥基準が以下の様な数値で示されていたとします。また、施肥基準の肥料は、化成肥料で記述してあるものとします。

◆対象土壌と施肥基準(kg/10a)◆
土壌の種類 黒ボク土 備考欄
施肥基準
(**野菜)

チッ素 リン酸 カリ ここに書かれていることも注意しておきます。
基肥 15kg 22kg 10kg
追肥 10kg 不要 5kg




合計 25kg 22kg 15kg

施肥量の合計を1平方メートルで換算するとチッ素は25g、リン酸は22g、カリは15gとなります。

計算の仕方としては
1.それぞれの必要成分量があまり大きく変わらないときは、生育に大きく影響するチッ素成分を基準に施肥量を決めるやり方。
2.各々の成分を持っている単肥をそれぞれ配合して施肥量を決めるやり方。
3.一番施用量の少ない成分を全量使って足りない成分を単肥で補うやり方。
などがあります。計算の仕方はそれぞれ同じように考えれば良いので、とりあえず3番で計算してみましょう。

手持ちの肥料は、14−10−13と表記されている複合鱗加安14号と呼ばれている複合肥料を使うとします。
(それぞれの成分はチッ素14%、リン酸10%、カリ13%を意味しています。)
施肥基準の表の中で一番施用量の少ない成分と言うと・・・カリになります。
表から基肥のカリ量が10gであるので複合肥料の必要量(全量)は、
複合肥料の必要量*複合肥料のカリ成分13%=10gの関係式で表されますから、
複合肥料の必要量(全量)は、76.92g/平方メートルとなります。(10/0.13の式で表されます)
これで14−10−13の複合肥料を約77g入れると1平方メートルあたりのカリの基肥成分量は確保出来る事が分かりました。

さて、チッ素、リン酸の肥料成分はどうなっているのでしょうか?これも見ておく必要があります。
チッ素は、
複合肥料の全量(76.92g)*複合肥料のチッ素成分14%=10.76=11g/平方メートル
基肥15gから見ると4g不足です。
リン酸は、
複合肥料の全量(76.92g)*複合肥料のリン酸成分10%=7.69=8g/平方メートル
同じく基肥22gに対して14g不足です。

もともと施用量の少ないカリ成分に合わせて計算しているのでチッ素、リン酸成分がそれぞれ不足しています。
そのため、それらを補ってやらなければいけません。手元には
チッ素成分:21%の硫安と
リン酸成分:17%の過リン酸石灰
と呼ばれる単肥がありますのでこれらを使って不足分を補って見ます。

チッ素成分は4g不足しているので
チッ素成分を幾ら加えたらよいか*21%=4g/平方メートルですので、チッ素成分を幾ら加えたらよいか=4/0.21=19.04gとなる。
リン酸も同様にして求めると
リン酸を幾ら加えたらよいか*17%=14g/平方メートルですので、82.35gとなる。

これより、この野菜を栽培するには基肥として、
・複合肥料(14−10−13):76.9g
・単肥として
硫安:19.0g
過リン酸石灰:82.3g
を加えたら良いことがわかります。追肥の計算はお任せします。

ここでは計算が比較的楽な化成肥料を基に計算例を書かせて頂きました。場合によっては有機質肥料を基準に施肥量を記載している場合もありますので注意が必要です。また、化成肥料の代替えとして有機質肥料を使う場合は土つくり(2)にも書かせて頂いたように肥効率や代替率を考慮して施肥設計をします。

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