トップへ
技術資料室
A16 溶接機の幹線および分岐回路の
配線設計
     y-326
抵抗溶接機並びにアーク溶接機に供給する分
岐回路および幹線は、溶接機の断続負荷電
流による等価熱容量と同等以上の電流容量
を有する電線、開閉器過電流遮断機を使用し
て施設しなければならない。(電技186)

この場合、断続負荷電流による電圧降下が他
の負荷に障害を及ぼさないように十分注意し
なければならない。


1)交流アーク溶接機回路用NFBの選定

JIS-C-9301(交流アーク溶接機)に定められ
ている使用の標準は10分間周期で4分通電、
6分無通電である。通電時間が4分間もある
繰り返し使用には通電時間内の電流を基準
としてNFBの定格電流 If を選定する。

NFBは溶接機の1次側に施設され溶接機の1
次側の定格電流は次式により示す

定格1次電流In=
(定格1次入力KVA /定格1次電圧V)×1000

定格1次電圧は200Vが標準であるが電圧変
動を±10%とみて溶接機の最大1次電流
 Inm は次式で示される。

最大1次電流 Inm=
     (定格1次入力KVA/180V)×1000

 NEC(630-22)
「アーク溶接機は定格1次電流の2倍以下の定
格電流をもつ過電流保護装置で保護されるこ
と。」

一方、NFBの定格電流の溶接機1次電流に対
する1.15倍の裕度を考慮してNFBの定格電流
If は次式で表わせられる。

      1.15 Inm ≦ If ≦ 2In

2)交流アーク溶接機の配線 

交流アーク溶接機に供給する電線の許容電流
については、(内規335-1)に定めている
NEC(1965)では次のように詳しく定めている。

①溶接機1台に供給する電線の許容電流は
溶接機の定格1次電流に下記乗数をかけた
値以上とすること。
   
表・1
 溶接機の定格使用率  20以下 30 40 50 60 70 80 90 100
 乗数 0.45 0.55 0.63 0.71 0.78 0.84 0.89 0.95 1.00
    1時間定格の溶接機では乗数を0.75とする

②溶接機2台以上に供給する電線の許容電流
は前記①の乗数をかけた値の和より少なくて
よい。
乗数をかけた値の順で、1番目と2番目の溶接
機については100% 3番目については85% 
4番目は70%残りについては60%として求めた
  
許容電流の電線は、高度の生産状態において
も十分安全なゆとりを持っている。
上記による必要のない負荷状態の場合には
これより小さいものでよい。 

(例)   表・2
溶接機
の台数
定格1次
電流 
使用率 乗数 台数
の乗数
計算式
 1台目
の溶接機
 300A  50%  0.71  - 300×0.71   =213A
 2台目  250A  50% 0.71  -  250×0.71    =178A
 3台目  200A  40%  0.63  0.85  200×0.63×0.85=107A
 4台目  200A  40%  0.63  0.7 200×0.63×0.7=88A
 5台目  200A  40%  0.63  0.6 200×0.63×0.6=76A
 6台目  200A  40%  0.63  0.6 200×0.63×0.6=76A
合計     738A
    
         
溶接機の配線設計例題    
工事現場に下記、溶接機3台を設置することとなった。 
  
交流アーク溶接機(型式) 入力電圧(V) 入力(KVA) 定格使用率
 MA-300D  200V  24.4KVA 40% 
 MA-250D  200V  18.0KVA  30%
 MA-200D  200V  16.4KVA  40%
キュービクル配電盤から工事用分電盤までの
距離150m仮設配線はエフレックスによる
CVTケーブル配線とする。
ケーブルサイズとNFBの容量を算出してください。
         
NFB容量の算出         
各溶接機の定格1次電流    
溶接機  各溶接機の定格1次電流 In  
 24.4KVA (24.4KVA / 200V) × 1000 = 122A
 18.0KVA   (18.0KVA / 200V) × 1000 = 90A
 16.4KVA   (16.4KVA / 200V) × 1000 = 82A
         
(合計)定格1次電流    
溶接機
の台数
1次入力 使用率 乗数 台数の乗数 計算式 
 1台目  24.4KVA  40%  0.63  - 122×0.63    =76.8A
 2台目  18.0KVA  30%  0.55  -  90×0.55    =49.5A
 3台目  16.4KVA  40%  0.63  0.85  82×0.63×0.85 =43.9A
合計定格1次電流      170.2A
    
         
各溶接機の最大1次電流
溶接機 各溶接機の最大1次電流 Inm 
24.4KVA  (24.4KVA / 180V) × 1000 = 135.6V
18.0KVA  (18.0KVA / 180V) × 1000 = 100A
16.4KVA  (16.4KVA / 180V) × 1000 = 91A
         
(合計)最大1次電流    
 溶接機
の台数
1次入力 使用率 乗数 台数の乗数 計算式 
 1台目  24.4KVA  40% 0.63  135.6×0.63  =85.4A
 2台目  18.0KVA  30% 0.55  -  100×0.55     =55A
 3台目  16.4KVA  40%  0.63  0.85  91×0.63×0.85=48.7A
合計最大1次電流      189.1A



NFBの定格電流 If は次式で
     1.15 Inm ≦ If ≦ 2In

 1.15 × 189.1A ≦ If ≦ 2 × 170.2A
       217.5A ≦ If ≦ 340.5A

よって、NFBの容量は 400AF/225AT とする。

配線ケーブルの算出

(合計)定格1次電流が求められたので電線の許
容電流を算出する 

電線の許容電流は170.2A以上であれば十分安全
にゆとりがあることになります。

CVTケーブル電線管布設による許容電流より

CVT 100゜ 215Aがケーブルの候補になります。

電圧降下から幹線ケーブルの検討

3相3線式の電圧降下 e
=30.8×電線亘長m×負荷電流 A /1000×断面積
=30.8×150m×170.2A / 1000×100゜
=7.8V

よって許容電圧降下率は 6% (200V×0.06=12V)
の範囲に入る為可である。

    幹線ケーブルは CVT 100゜ を採用とする。