バレンタイン・デート
|
「先生どこでも連れて行ってくれるって本当?」
「ああ お前の好きな所ならどこでも連れて行ってやる。」
「じゃあ・・・」
恋人の緒方にヒカルがねだったのは夜空に一番近い場所だった。
「ここならいいだろう。」
山の山頂からは東京の街の光が輝く。
一つ一つの明かりにはまるで幸せが灯っているようだ。
「うん きれいだね。」
だが、振り仰いだ夜空は突き刺すように冷たくて星は見えない。
緒方がそっと自分の羽織っていた皮ジャンをヒカルの肩にかけた。
緒方の暖かさを纏ってヒカルは抱きしめられているような気がして恥ずかしさで
うつむいた。
「寒いだろう。」
「俺 平気なのに。」
そっと緒方がヒカルの肩に手を回す。
「えっとその・・。」
この状況にあたふたしたヒカルは思い出したようにリュックから小さな包みを取り
出した。
「これ 先生に・・・」
「俺に?」
「今日ほらバレンタインだろ。だからさ。」
うれしそうに緒方は目を細めるとその包みを開けようとしてそれにヒカルが慌てた。
「先生今は駄目!!」
「駄目なのか。」
ヒカルは真っ赤になってうなづいてる。
「そういわれると余計に気になるな。」
「だめだ、 だめ だめ、絶対にダメ・・」
あまりに言われて緒方は苦笑すると諦めてそれを鞄にしまった。
「わかった。じゃあお前のリュックに入っていたもう1つのプレゼントは誰に渡
すものなんだ。」
ヒカルがしまったという顔をしたが もう遅かった。
リュックを開けたときにどうも見られてしまったらしい。
「えっと これは俺の。なんだか人のを買ってると自分のも欲しくなって。」
それは半分本当で半分はウソだ。
緒方はそんなヒカルを見透かすように言った。
「進藤 その包み俺にかしてみろ。」
「へっ?」
やむなくヒカルは先生にそれを渡した。
大きいわりに軽いそれには紫の包装紙でラッピングが施されてるが、
見た目もかなりいびつでカッコ悪い。
そのラッピングを緒方がびりびりと破いた。
「先生何すんだよ。やめてよ。」
ヒカルの抗議を無視してその包装紙を開けた緒方は
中身を見て目を丸くした。
中身がカップラーメンだったからだ。
泣きたくなったヒカルは緒方の手からそれを横取りした。
「やめてって言ったのに。」
ヒカルがそれを抱え込むと空から白い雪が舞い降りてきた。
「雪?」
カップめんに落ちた雪が解けて雫になる。
それはまるで空の涙のようだとヒカルは思った。
「それをお前からもらう奴は幸せな奴なんだろうな。」
ぽつりと呟いた緒方をヒカルは振り仰いだ。
「緒方先生?」
これは佐為へのプレゼントだったんだ。だってあいつはいつもラーメンを
食べる俺を不思議そうに見ていたから。そんなにおいしい
モノなのですかって俺に聞くから・・・
「進藤 」
ヒカルの手から再び緒方によってカップメンが取り上げられた。
「 これは俺がもらっといてやる。」
「それ俺の今晩の夜食だったのに。」
「これから俺がお前に夜食をご馳走してやる。」
「本当?」
「だからこれは俺にくれ。そいつの変わりにはなれんが、お前のその気持ちごと
受け止めてやるから。」
タバコの匂いのする腕は大きくてヒカルの全てを包む。
「うん。」
先生がヒカルのために腰を落としヒカルは背伸びをしてそれに
応えた。・・・触れた唇から白い息が漏れる。
頬を赤らめたヒカルが緒方を見上げた。
「ついでにこれからお前をお持ちかえると行くか。」
「なんでそうなるんだよ。」
「お前がさっきくれたあれどういう意味か知ってるか?」
「し 知らないよっ・・・て何で先生中身知ってるの。」
「さあ どうしてだろうな。」
そこでヒカルは思い当たる所があった。
そうだ。あれを買うのに塔矢に相談したんだった。
あいつ、先生に・・・!!
「俺今日はダメだからな。」
あの日なのだという言い訳をとりあえず言ってみる。
「そうか。じゃあ試してみようか。」
「バっ!先生のばか!」
まだまだヒカルはこの人には敵わないと思う。
それは、かの人も同じなんだという事をヒカルはまだ気づいてはいない。
あとがき
日付が2004年2月7日になってました。こんなの書いてたんだな;
このお話のヒカルは女の子のようです。
残っていた設定にそう書いてありました←自分で書いたものなのに曖昧ですみません;
それから東京って山ってあるのかな?(汗)つい自分の住む街を想定してしまいます;
|
|
|
|