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BOY&GIRL


12





 
『・・・・知らないこともある。』

そういった塔矢は物憂げにオレを見つめてた。
塔矢はオレの言葉を待ってる。

沈黙を破るようにオレはぽつりとつぶやいた。

「だってオレは・・・お前の知ってるオレじゃねえから・・・」

「それはどういう意味だ?」

またしても沈黙が流れる。
はっきりと今のオレの状況を説明したいって思うのにそれはやはり
言葉にはならなかった。
それにもし説明できたとしても信じてもらえるとは到底思えなかったし。


オレが言葉を捜しあぐねていると先ほどまで穏やかだった塔矢が
感情を抑えられなくなったように激情した。

「もし仮に今の君が僕の知ってる進藤ヒカルでないとしても
君は君だろう!!」

塔矢は激情に任せてテーブルを叩くとオレに掴みかからんばかりに
身を乗り出した。

「僕が今一番知りたいのは君の僕に対する想いだ。君は僕を
どう想ってる!?」

なぜだろう。塔矢の顔がぼやけていた。
昔塔矢が葉瀬中までオレに会いに来たときのことを思い出した。

「もう打たない」そういったオレにこいつは隠す事もせず感情をぶつ
けてきた。
今みてえに。
当時から塔矢がこんな風に自分の感情をあらわすのはオレだけ
だった。
あんときはオレの中にある佐為をお前がみてたんだとしても。


オレはお前の知ってる進藤ヒカルじゃない・・・確かにそうだ。
けど目の前にいる塔矢はオレの知らない塔矢だろうか?

そう自分自身に問いかけてオレは否と答えを出した。
こいつは塔矢だ。間違いなくオレのしってる塔矢だ。

だったらオレは自分の気持ちをちゃんと伝えるべきだ。
オレはようやく何かわかったような気がした。


「塔矢オレは・・・これからもずっとお前と一緒にこの道を進みたいって
思ってるよ。」

「進藤?」

「けど。実際はよくわかんねえんだ。お前への気持ちは。
多分好きなんじゃないかって思うんだけど。」

「たぶんって。」

呆れたような顔をしてる塔矢にオレは一生懸命言い訳を考えた。

「しょうがねえだろ。ホントによくわかんねえんだから。
それにこんなのオレ初めてだし。」

「僕と婚約した事を後悔しているのか?」

オレはそれについてはどう答えていいかマジでわからなかった。
けど今は自分の気持ちを理屈じゃなく伝えるべきなんだってなんと
なくそう思った。

「ええっと・・そういうことじゃなくて。お前が
オレに優しくしてくれることとかすごく嬉しかったんだ。
なんかそのあいつに妬いちまったし。」

そうそう。女のあいつにはいつもこんな風に接してるのかとおもうと
なんだかな。
いつもオレへの扱いはひでえくせにって性別の差があるから仕方がねえか。
オレがそんな事を思っていると塔矢がオレの言葉尻を捕まえた。

「あいつに妬くって?」

オレは慌てて顔を横にぶんぶんと降った。

「それはなし。ってダメだ。オレ何いってんだろう。」

舞い上がってるオレに塔矢が苦笑した。
塔矢の方は逆にようやく落ち着きを取り戻してきたみたいだった。

「なんだか君にはじめて告白したときの事を思い出すな。まるであの時の
君のようだ。」

「ええ?そうか。」

「君は今みたいにあたふたしてた。」

そういったあと塔矢は突然真顔になった。

「ヒカル・・・」

名前で呼ばれることに慣れてないオレは心臓が止まるほどドキっとした。
塔矢の顔が迫ってきてしらずしらずにそれを期待してる自分の鼓動は
大きく高鳴っていた。

「確かめたい事がある。」

塔矢の唇がオレのそれに触れるとオレは目を閉じた。

その瞬間オレは塔矢に身を任せるように落ちていった。


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曖昧な書き方でいろいろ誤魔化してます。
そういろいろです(笑)そして次回こそ最終回。
全力で終わらせます〜

 
                           
2006・8



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