アキヒカ三銃士




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洞窟の中も不思議なぐらい何もありませんでした。

それこそきみが悪いほどに・・・。

あの時ここへ訪れた時には囚人には監視がついていたのに今はそれさえもなく洞窟はガランとしていました。

「まさか・・?!」

突然走り出したアキラは囚人の囚われていた部屋を忌々しげに睨みました。

彼はどこかに連れ去られたあとだったのです。
ヒカルとアキラは空になった部屋で立ち尽くしました。

「くそっ!!あいつらどこに連れてったんだ!!」

アキラはもぬけの殻になった部屋に残されていた本を
拾い上げました。
あの時囚人が読んでいたものです。

パラパラとめくると日付が書きこまれていました。
ある頁でアキラの手が止まりました。

【・・・・ならぬならいっそ殺された方がいい。
だがもう一人の私はオレを生かすことを条件に
したと言う。
その温情があるならヨウキにだけは愛情をもって接して欲しい。
もはやヨウキのことだけがオレの気がかりだ。】

走り書きのような字には所どころ汚れた部分がありました。
アキラはぐっと本を握り締めました。


やはり囚人はあの方だ!!とアキラは確信したのです。

「ヒカル 急がないと!」

「ああ。でもアキラ当てがあるのか?」

「あの方の居場所なら緒方さんが知ってる。」

確信をもってアキラが言った時、部屋の扉が音もなく開き
そこには緒方が立っていました。

「いいタイミングだったようだな。」

アキラは緒方に詰め寄りました。

「あの方はどこにいるんです!あなたは知ってるの
でしょう。」

「まあな。だが簡単に教えられんな。」

アキラが唇を噛むと緒方は冷笑しました。

「そうだな。居場所を教えてやるかわりに条件がある。」

ヒカルもアキラその条件が大体何なのか予想ができました

「ゴ石のこと?」

「察しがいいな。」

緒方はヒカルに近づくと何をおもったか顎を持ち上げました

「なにを・・!?」

アキラが飛び掛ろうとすると緒方が笑いました。

「驚いたな。この間は女だと思っていたのにまさか男
だったとはな。まあオレはどっちでも構わん。」

意味深なことを言いながら緒方はヒカルから手を離しました


「オレの望みはお前らが持ってる本物のゴ石だ。」

くっとアキラが唇を噛みました。
緒方はアキラが本物の石を持ってることを知っているのです。

しかも偽者をダミーにしようとしてる事も・・。

きっとどこかで情報が漏れたんだ。
だから先を越されて・・・。

アキラが口ごもると緒方は笑いました。

「それともう一つ。お前らがオレの舞台に来るというならこの
鍵をやろう。」

「その鍵は?」

「お前たちのいう【あの方】がいる場所の鍵だ。どうだ?」

二人は息をつめました。
たとえその鍵を手に入れて囚人を助けられたとしてもゴ石がなければ仮面は外せない。

だが仮面の男を救いだす事ができれば
仮面が外せなくても・・・王もヨウキも救えるかもしれない。

あの方を人質に取られているよりはましなのだ。

「でも緒方さん その鍵が本物だとは限りませんよね。」

「信じる信じないは君たちの勝手だ。」

見せ付けるように緒方は鍵を揺らす。

「あなたの目的は一体なに?」

ヒカルが尋ねると緒方は考えを巡らすようにタバコに火をつけました。

「緋国の舞台は己が実力のみがすべてだ。
権力も地位も金でもなく自分と言う、体とスピリットのみで勝負する。
嫌いなやつは蹴落とし邪魔なやつは排除する。それがあの国の歴史と発展に繋がってきた。オレはその頂点を
極めるためにお前ら二人が欲しい。
それでは理由にならんか?」

「それじゃあご石は・・?」

「オレは手に入れたいものはすべて手に入れる。それだけのことだ。」

それを聞いてアキラは冷ややかに言い放ちました。

「貴方には渡しませんよ。ヒカルもゴ石もそして
僕自身も・・。」

ほほうと緒方がアキラを見ました。


あなたに言うと笑われるかもしれませんが・・・
アキラはそう前置きして言いました。

「舞台は人を笑わせたり時に
泣かせたり、感動させたり観客を魅了する場所です。
観客と舞台が一体になった時
僕は舞台にたって始めて自分の場所を感じられる。
だから僕は貴方の駒になるような舞台には立ちたくない。」

アキラは一気にそういったあと緒方を見つめました。

「貴方は私に初めて舞台の楽しさを教えてくれた人でした。
・・・貴方がゴ石を、僕たちを欲しいと言うなら僕とヒカルと一緒に舞台に立ちませんか?」

緒方はそれを聞いて大笑いしました。

「確かにそれは魅力的な誘いだな。」

緒方の返事を聞かずアキラはヒカルを伴うとその場を立ち去ろうとしました。

「待て・・・」

緒方は二人に鍵を投げました。

「城の地下牢の扉の鍵だ。」

「城の牢屋?伝説でしかないといわれた・・・・あの・・?」

城の奥深くに秘密の地下牢があるという話は貴族の間でも民衆の間でもうわさになっていました。

でも本当にあるなんて・・。

「ヨウキに聞いてみろ。彼女なら入り口を知ってるはずだ。」

アキラはそれを受けとると言いました。

「緒方さん先ほど僕が言ったこと・・。」

「もういい。オレの気がかわらんうちにさっさといけ!!」

アキラとヒカルは緒方に一礼するとその場を立ち去りました


「アキラ 緒方さんは俺たちのこと試したのかな?」

「どうだろう。それより僕はさっきから気になってる事が
あるんだけど・・・」

「なにが・・?」

アキラはヒカルが見たことがないほど困惑して口ごもると
ヒカルの手を握りしめました。


「君を想うあまりか・・・その・・・へんなものが先ほどから
見えるんだ。」

アキラの視線の先にはサイがいました。

「まさかアキラ・・・お前・・・」

「アキラ 私の姿がみえるのですね?」


サイがにっこり微笑むとアキラは苦笑する事しかできませんでした。




21話は緋色担当。ヒカルを狙う三人の三つ揃えの交戦が勃発か?!(爆
そしてついにアキラまでサイの姿が見えるように。



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